第550話 全員で力を合わせて亡霊をぶっ倒せ!
冒険者パーティはほぼ全滅。
辛うじて二人だけ生き残っており、逃げ回っている。少しでも時間を稼いでいるのか、もはや打つ手なしなのか。
……さて、どうしたものか。
俺はとうとうボス部屋に足をつけてしまった。オーゼラの婆さんが蹴とばしてきたせいで。
「なにしやがる!」
「お主がいつまでも迷っておるから、背中を押してやったのじゃ! 感謝せい!」
「するかっ!」
それどころか死の危険が迫っている。
亡霊騎士ランスロットは猛烈な勢いで移動して、残りの生存者を追っていた。……あれはもう神速すぎて直ぐに追い付かれるな。
仕方ない、このまま死なれても目覚めが悪い。
――ので、俺は瞬間で移動。
すぐにランスロットに追いついた。
「…………!」
そして瞬時に俺の気配を察知するランスロットは、即座にターゲットをこちらに変更。魔剣アロンダイトを向けてきた。
って、なんて反応速度!
だが、その殺気に反応して俺の【超覚醒オートスキル】が発動。聖属性魔法スキルの『オーディール』が複数飛び出し、ランスロットに激突しそうになったが――ヤツは魔剣で俺のスキルをぶった切っていた。
「マジかよ!」
剣で魔法を斬るとは……!
正直驚いたというか、無茶苦茶なヤツだ。
更に特攻してくるランスロットは、俺の目の前に。……やっべ!
無機質な瞳が俺を見つめる。なんていうか……不気味で震えた。まさに亡霊。
反撃をしようとするが――
『ズドオオオオオオオオオォォォォ……!!』
巨大な炎の渦がランスロットに激突し、飲み込んでいた。こ、この太陽のような激しいフレアは……まさか!
「プロミネンス!」
リースの火属性大魔法だ!
そうか、来てくれたか!
というか、みんなボス部屋に入ってきていた。直後、扉は閉まった。これでもう戻ることはできない。生きるか死ぬか……それだけだ。
「兄様っ! わたくしも戦います!」
拳を構えるフォルは、妙に張り切っていたが――接近戦は厳しい。ので、支援に徹してもらうことにした。
「フォル、お前は後方支援だ」
「え~! ……でもそうですね、あの強敵では拳で倒せそうにありません」
素直に応じるフォルは後方へ。
「メサイアも補助を頼む」
「もちろんよ――って、言いたいところだけどね」
「え?」
「ここは私に任せなさいな!」
「なにをする気だ?」
「こんな時の建築スキルでしょうがっ」
ニカッと不敵に笑うメサイアは、木材や石材の材料を使い建築スキルで壁や障害物を生成してボス部屋の至る場所に設置。
おかげで隠れる場所が増えまくった。……ナイス!
これなら生存している冒険者も身を隠せる。
「はて、どうかな」
「なんだよ、オーゼラの婆さん」
「ほれ。あれを見てみ」
「あ?」
婆さんの指さす方向。そこにはランスロット。ヤツは魔剣アロンダイトでメサイアの設置したオブジェクトを一振りで破壊。ほとんどが紙屑みたいに吹き飛ばされた。……おい、ウソだろう!
「……そんな」
ショックを隠せないメサイア。だが、すぐに建築スキルを発動して再設置していた。
材料もいつまで持つか分からん。
俺がランスロットを撃破せねば!
「妨害は頼んだぜ、メサイア!」
「ええ、任せて。今、壁自体の強化もしまくってるから……そのうち破壊が難しくなるはず! 金属強化が間に合えばいいのだけど」
そういえば、壁にも種類がある。一番弱いのは木製の壁。石の壁はなかなか頑丈だ。だが、相手がボスモンスターともなると一瞬で砕かれることがほとんど。
金属の壁は特に耐久値が高い。それはサクリファイスオンラインも同様だった。だから、金属壁が完成すれば、さすがのランスロットでも破壊は難しい。
「なら、姉様を支援します!」
「ありがとう、フォル。お願いするわ!」
フォルとメサイアは息を合わせていた。よし、後ろは任せた。
俺は再び突撃してランスロットに接近しようとしたが、オーゼラの婆さんも物凄いスピードで俺についてきていた。……走るの速っ!
「サトルよ。ワシがランスロットの動きを止める。その間に倒せ」
「そんなことできるのかよ!?」
「これでもエルフの賢者だからの! 拘束魔法がある!」
おぉ、ランスロットを足止めできればかなり有利になるぞ。
となるとプランはこうだ――
オーゼラの婆さんが拘束魔法でランスロットを捕縛。
その後に俺がオートスキルでヤツの体力を削りまくる。
メサイアは建築スキルで障害物を強化。フォルは支援。リースは後方で大魔法攻撃。……なんかいける気がしてきた!
全身全霊をかけてやるっきゃない。
婆さんは無詠唱でそのスキルを使った。すると!




