第529話 魔獣化したモンスターの奇襲!?
メサイアにエクサニウム100個を託した。
特殊転移用ゲート『レンブラント』を量産してくれるはずだ。
詳しい設計方法をミクトランに聞くといって、どこかへ行ってしまった。
またしばらくは別行動だな。
――そんなワケで俺は、別荘でダラダラ過ごしている元死神三人衆を探すことにした。久しぶりだし、もう少し話してみたい。
家の中を探したが、見つからなかった。
……いったい、どこへ行ったんだ?
庭に出てみると、やっぱりいなかった。
が、独特な気配を感じた。……これは“屋根”か。
上を向くと、屋根に寝そべるオルクスの姿があった。サングラスなんてつけて、しかも南国風なラフな格好をしているし、くつろいでいるな。
俺はひょいっと屋根に飛び乗り挨拶をした。
「よ、オルクス」
「サトルか。小さいから一瞬分からなかった」
「悪いな、子供の姿で」
「いや、可愛くていいと思う」
「それより、プルートとモルスは?」
「二人は遊びに行くと言ってカジノへ行ったよ。メサイアに煽らわれてね」
メサイアのやつ、なに射幸心煽ってんだよ!!
二人が破産したらどう責任を取る気だっ!
仕方ないな、あとで様子を見にっておくか。
もし、プルートもモルスもギャンブル中毒になっていたら、ヤバイぞ。
「大丈夫だよな?」
「所持金はたいしてないさ」
「ならいいけどさ」
「ざっと100万セルだが」
「大金じゃねえか!!」
やっぱり、直ぐに止めにいくか。100万セルも使わせるなんて心苦しすぎだろ。しかも、今は『女神』なんだぞ。女神様から金を取るってどうなんだ……?
いや、細かく言えば女神が女神から徴収しているようなものだから……いいのか。
「それより、魔人だけど」
「あ、ああ……サリエリな。詳しいことを知っているか?」
「もちろん。彼女は全人類を魔人にする気だ」
「なんだって……!」
「つまり――“人類魔人計画”ってところかな」
なんだその、補完計画的な!
そんな目的もあったとはな……【死の呪い】だって厄介だったっていうのに、それ以上のことをしでかそうとしているとはな。魔人め、恐ろしいな。
ゾッとしていると、街中の方が騒がしくなっていた。
なんだ?
向こうの方で叫び声がするような。
「……なあ、オルクス。変じゃないか」
「そうだな。モンスターの気配だ」
「なっ……またか!」
「たぶん、魔人の影響だろう」
オルクスがそう断言した瞬間だった――
【緊急速報:ブラッドベアが出現しました!! 直ちに討伐してください!!】
「なにぃ!?」
ブラッドベアだって……!
その昔、悪夢の森にいたヤツじゃないか。すげぇ凶悪なクマなんだが、今回は様子がおかしそうだ。
つか、こんなメッセージが表示されるようになっていたんだな。
恐らくは世界ギルドの計らいだろうけど、いつの間に。
オルクスと共に街中へ向かうと、確かに一匹のクマが暴れまわっていた。凶悪な爪で人々を襲い、血祭りにあげていた。なんて恐ろしいクマだ。
「ブラッドベア……かなり高レベルだな」
「分かるのか、オルクス!」
「まあね。これでも今は“女神”だから」
なるほど、死神時代とは能力が違うわけか。
このままでは住人や観光客が危ない。それに、建物も破壊されかねん。俺が倒す!
噴水の方へ向かうと、ブラッドベアが子供を襲っていた。……おい! あの野郎!
「きゃあああああ!」
「いけええええ、オートスキル! 覚醒煉獄!」
ゴォォォォォォっと凄まじい火炎がブラッドベアに向かっていく。俺は今のうちに倒れている子供を――ん!?
子供じゃない!!
この小柄な女の子はリースだ!
「あぅ、助かりました~…って、サトルさん!」
「なんだ、リースだったのか」
「うあああん、怖かったです。助けてくれてありがとうございますぅぅぅ」
わんわん泣くリースは俺に抱きつく。って、今の俺は小柄だから、抱きつかれると視界が奪われて――ぬあッ!
リースの谷間が目の前にぃぃぃっ!
「遊んでいる場合か、サトル!」
背後にオルクスが降り立ったらしいが、視界を奪われて見えん!
つか、遊んでなどいない! 断じて!!
どうやら、オルクスは大鎌を取り出したらしく、その武器でブラッドベアにトドメを刺したようだ。
撃破したような音が聞こえたので、もう大丈夫そうだ。
「リース、終わったぞ」
「よかったぁ……サトルさんのおかげです!」
「いや、オルクスにもお礼を言ってやってくれ」
「オルクスさん? あ、女神の! ありがとうございましゅ!」
滝のように涙を流すリースは、礼を言ったが噛んでいた。よっぽど怖かったらしい。
「いやいや、礼はいいさ……お嬢さん」
「ひゃうっ」
そうだった。オルクスは妙にリースを気に入っているのだった。絶対にあげないぞ!
さて、これで討伐は完了だな。
それにしても、ブラッドベアの様子がおかしかった。以前とは違い、真っ黒だったし……明らかに強かった。多分、魔人の要素が入っていた。
まだ残骸がある。
ちょっと詳しく調べてみるか。




