第482話 死神にならないか!
無事に蘇生を果たした俺は、目の前のアイアンゴーレムを直ぐに任意攻撃した。
【覚醒煉獄!!】
地属性モンスター相手ならば、火属性魔法である『煉獄』が効果抜群である。弱点攻撃となり、二倍のダメージを与えた。
正直、任意発動は面倒臭いのだが状況が状況なので仕方ないッ!
「サトル!」
「大丈夫だ。無事に蘇生したぜ!」
「よ、よかった。今度こそ死んじゃったのかと……」
涙目になって心配してくれるメサイア。そんな弱弱しい表情を向けてくれるとはな……心の底から嬉しいぜ。
でもな、蘇生回数はゼロになった。次に死亡したら、もう終わりだ。
「そこでだ。メサイア、死神にならないか!」
「…………は?」
「死神になれ! 俺の蘇生回数を増やすために、死神になるんだッ!」
勧誘すると、メサイアは明らかに白い目を向けてリースの後ろに隠れた。……引きすぎだろ。
てか、リースも困惑していて可愛いな。
じゃなくて。
そんなに嫌とはな。だけど、そんな風にされると余計に死神にしたくなった!
「早くしないと(俺が)死んでしまうぞ!!」
「そ、そうなの?」
「ああ。アルクトゥルスとソフィアが言っていた」
「え、あの二人が!?」
そういえば、メサイアの親なんだよな。前向きすぎる性格なせいか――それとも単に話したくないだけなのか、普段アルクトゥルスとソフィアのことを話さない。話したがらない。
後者だろうけど。
両親を嫌っているってことはないだろうけど、今後改めて聞いてみるか。
「お前を死神に戻し、死神専用スキルで蘇生回数を増やせるんだと」
「うーん、そもそも【死の呪い】がないとねー」
「あるぞ」
「あるの!?」
「黒い魔導書だ。ほぅれ、これ」
懐から『黒い魔導書』を取り出す俺。
蘇生の間際にソフィアから貰ったのだ。
見せるとメサイアは、妖怪モンスターでも見るかのような怪訝な表情で、今度はフォルの後ろに隠れていた。隠れるの好きだな、おい。
「…………わ、私は私の、女神としての責務を全うするわ!!」
珍しく、めちゃくちゃマトモなことを言うな。まるで俺のスキル名みたいな人なことを言う。
それはそれで嬉しいのだが、しかしだなぁ……。
「まあまあ、兄様。姉様はトラウマになっているんですよ。解かってあげてくださいまし」
「そ、それもそうだな。すまん、メサイア」
謝罪を申し上げると、メサイアはちょっと涙目になってホッとしていた。やっぱり、死神になるというのは気が滅入るというレベルではないらしいな。
とはいえ、死神時代もあった。
あの時は……いや、苦しんでいたな。
俺は傍で見ていたのを思い出した。
「でも、サトルの為ならいいわ」
「え……いいのか」
「その代わり……デ、デートしてよね! 二人きりで!」
「んなッ!」
フォルとリースがいる前でデートの誘い。勇気あるな、メサイア! というか、俺は心底ビビっていた。
まさか向こうから誘ってくるとはな。
「どうなの?」
もちろん、断る理由なんてない。
「了解した。その条件をのむ」
「そ、それならいいわ」
見つめ合っていると、フォルとリースは憤慨した。
「ちょっと兄様! どういうことですか! 浮気ですか!!」
「サトルさん……! あたしとは遊びだったんですか!?」
で、ですよねぇ!!
とんでもない誤解だけどな!
俺はみんな大好きなんだー!!
「順番だ。次はフォル、最後にはリースともデートする!」
「わぁい♡ 兄様とイチャラブデート楽しみです♡」
「あたしは最後……でもいいですね、最後も悪くありません!」
フォルは、超弩級にチョロいのでヨシとして……リースも案外柔軟である。おかげで命拾いした。
さて、蘇生回数のことは一旦置いておき『鉄』を入手しまくらねば。
再びアイアンゴーレムを狩っていく!
今度は油断せず、確実に倒していかねばな。
オートスキルに『覚醒煉獄』をセットして、俺は先へ進む。




