第464話 エルフたちを救った
リースのディスペル(強化済み)により、ついにメサイアとフォル、ベルは元の性別である『女』に戻ることができた。
男となった姿は確認できなかったが、リースは見ているんだよな。俺も一度くらいは拝んでおくべきだったか……?
――いや、先に心の方が砕け散っていたに違いない。
ショックで二週間は寝込んでいただろう。
うん。これで良かったんだ。
「あ~…やっと女に戻れた……」
安堵し、脱力するメサイア。かなり憔悴しとるな。それはフォルやベルも一緒で顔に疲れが見えた。
「……うぅ。兄様、わたくし……もうお嫁にいけません」
「大丈夫だ。俺がもらってやる」
「本当ですか!! さすが兄様です! 兄様、兄様ぁん♪」
目をハートにして俺にくっついてくるフォル。なんだ、いつも通り元気じゃないか。
「いや~、トイレがきつかったよ。理くん」
「おう、ベル。さすがのお前も性別男は参ったようだな」
「そうだね、男の子は厳しいね。しかも、ビキニアーマーだったから余計に」
「そりゃ……ヤバいな」
ベルだけは見なくて正解だったな――って、まて。てことは、リースのヤツ……ビキニアーマー姿の男の子版ベルを見たのか!?
おいおい、ヘンタイすぎないか!
リースもなに普通にしてんだよぉ!
エルフだから感性がズレているのだろうか。わからん。
とりあえず、全員無事に性別が戻った。
それからリースは、性別変換スキル『ペルソナ・ノン・グラータ』の犠牲者を元に戻していった。
今回ばかりはリースのMVPである。
「ありがとうございます、リース様」「あなたこそ真のエルフだ」「こんな小っちゃくて可愛いのに、凄いです!」「まさかこの世に上級ディスペルを扱えるエルフがいるとは……」「賢者を超えたんじゃないか?」「リースちゃん、あんがとー!」「やっと男に戻れたああああ!」「女の子も良かったけど、やっぱり男だな!」
女だったことを惜しむエルフもいたが、大半は元に戻った。もちろん、中には自らそのままを望むエルフもいたらしいが。
「お疲れ様、リース」
率先して褒めたたえるメサイアは、リースの頭を撫でてやっていた。まるで猫を扱うがごとくゴッドハンドで。女神だから間違いではないケド。
一方のリースは気持ちよさそうに目を細めていた。
俺もリースを撫でてえ。
「兄様、わたくしの頭でよければっ!」
「……えぇ」
「なんで嫌そうなんですかぁ! もう、そんな兄様は許しません。久しぶりに腹筋をペロペロしちゃいますっ」
「うぉい!!」
この聖女は本当にやるから困ったぜ。嬉しいけど!
しかしここはルクルのポーション屋の前。さすがに問題になるので、俺はフォルを止めた。
それにしても、カムランにはかなりの数のエルフがいたんだな。
今や最初に来た頃のようなゴーストタウンではなく、本来の活気があった。
広場はエルフだらけで驚く。
老若男女、こんな多くのエルフが家に閉じこもっていたんだな。すべてはポウラのせいだが、もうヤツもいなくなった。
平和そのものだ。
――いや、まて。
俺らの本来の目的は『聖地』へ行くこと。
そうだ。
厳冬期で山ダンジョン『ケントゥリア』の登山は厳しい。ので、他の手段を考えた結果、このカムランならエルフの秘術で行けるかもしれないと、リースが言っていた。
ああ、待て待て。
その前に重要なことを忘れていないか、俺よ。
そうそう、温泉だよ。温泉。
せっかく平和になったんだぜ、温泉に入らないとなぁ……! もちろん、混浴だよな?




