第47話 楽園 - 聖戦士と炎の使い手と魔法使い -
今日は、穏やかで静かな夜だと思った。
そうは……ならなかった。
なぜなら――
「メサイア、リース、フォル、ベル、アグニ、スイカ……」
よ~~~~く考えれば、全員、女の子。
――いや、よ~~~く考えなくとも、俺以外は女の子。
俺の『山小屋』は今、とんでもない状況になっていた。しかも、アグニ、スイカは山小屋を大変気に入ってくれたようで『住んでもいいかも』と検討を示唆していた。ベルも改めて、そうつぶやいていたが、まあ……ベルに至ってはもう半分住人。いや強制だ。従妹だし。
そんなワケで……。
ついにこの山小屋は、天国を超越した。
ここは、たった今【楽園】になった。
つまり、ここが本当の――『真のビフロスト』に違いない。そうだ、そうに違いない。神王とやらは、この為に俺に試練なんてものを……なんて素晴らしい神様なんだ。今度会ったら、お礼を100万回言わなくっちゃな。
――とか、万感の思いで茶を啜っていると。
「……では、お先に戴きます」
「じゃ、アタシとスイカはお風呂へ~」
アグニとスイカがお風呂へ。
どうやら次にベルらしい。
その次にメサイア、リース、フォルの三人で入るつもりだとか。そういえば、いつの間にか『風呂レベル』も上がっていた。今は『風呂 Lv.5』となり、もう3~4人なら苦痛にならないほど広々となった。
まさか、風呂のスペースも拡張されるとはね。尚、メサイアによれば、もうすぐ『ジェットバス』も付くかもねと言っていた。マジか。それは楽しみだ。
◆
――で、最後に俺がひとりで風呂となった。
俺が入ろうとすると、ベル、アグニ、スイカ以外がビクッと反応を示す。最近、毎日誰かしら闖入してきているので、俺はもう眉間を押さえるしかなかった。おまえらな……。
誰も入ってこないことを祈り、俺は風呂へ。
シャワーを浴びたり、頭をワシャワシャ洗っていると、
案の定、誰かが入って来た。
もうすっかり習慣になっちまったらしい。驚きも新鮮味もないけれど、おかげで俺の女体耐性も少しは上がった。慣れとは恐ろしいものよな。まあいいんだけどな。ひとりくらいなら。
「さ~て、誰かな」
クルッと首を捻ると、そこには――
「えーっと……うわ、みんなっ!!」
そこには、メサイア、リース、フォルがバスタオル姿で……いらっしゃった。みんなでかよ!? さすがにそれは想像できなかった……! やってくれるぜ、みんな。褒めてつかわす。
「お前らな……いくらなんでもサプライズすぎるわ……」
正直かなり焦った。
ていうか、これは……!
うっ……まずい。体がアツイ……。鼻から血がっ。
「サ、サトル。今日は、特別な日よ。だって……『聖者の試練』を実質クリアしたんだもの」
「そ、そうです。メサイアさんの言う通りですよ。だから、みんなで決めたんです」
「これはご褒美ですよ、兄様♡」
「――――」
ムリ。
ムリムリムリ………死んじゃう!!!!!
既に、体中の血が顔に――鼻に集中していた。
「も……もう」
俺は……心拍数共々限界を迎え、
「ブ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!」
鼻血を大噴火させてしまった。
我が生涯にいっぺんの…………グボッ。
「ちょっと、サトル。いきなり~~~もーーー!!」
「サトルさん! 血! 凄い量の血があぁぁ~~(大混乱)」
「兄様死んじゃいますよ!? ヒ、ヒール!! グロリアスヒール! ヒール! グロリアスヒール! ヒール! ヒ~~~~~~~~~~ルッ!!」
◆
「――――――」
目を覚ますと、俺はソファの上だった。
しかも、可愛らしいパジャマ姿のメサイア、リース、フォルがくっついていた。ほう、どうしてこうなったっけ? 覚えていない。記憶がぶっとんでいる。
室内を見渡すと、
ベル、アグニ、スイカはベッドの上で寝ていた。
「――ふむ」
記憶は曖昧だが、さっきは一瞬だけ『天国と地獄』を見た気がする。
アレはいったい何だったんだろう。
しっかし、リースが珍しく寝相悪くないのは奇跡か。
密着しているからか?
それとも、フォルの『フォーチュン』のおかげか?
まあ何にしても…………
こう顔が近いと、悪戯してみたくなるな。どれどれ。
まずは、リースの頬に触れてみる。
「お……。すごい柔いな。モチモチのすべすべのツヤツヤだし……」
エルフってのは、こんなにスゴイのか……!
それとも、リースが特別なのか。多分、リースがスゴイのだろうな。
次にフォル。
頬に触れると、丁度、パチクリ目を覚ましやがった。
「あ……」
「兄様なにを!?」
親指と人差し指でフォルの頬に触れていたもので――勢いというか誤って、そのままフォルの口の中に突っ込んでしまった。
「うあ! すまん。わざとじゃない。不可抗力だ」
「ひゃぁ、ふぁにんええ……んむへまま」
何言ってるか分からない。
「つーか……指」
フォルは俺の親指を咥えてしまい、離そうとしなかった。ていうか、唾液でベトベトだ……! でも、相手が可愛いフォルだからこそ、これは興奮してしまう。
「……ふひぇでふか? んん、ふぁむっ……」
親指を切なそうに甘噛みしてくる。
やば……これはキュンときた。ズッキュンときた。
次第に、フォルの青と桃の瞳が潤みはじめ、ちょっと苦しそうだ。息遣いも荒い。そろそろ。
「も、もういいっ……」
「……はい。ご馳走様でした♡ 次は筋肉も♡」
「あ、あぁ……。って、筋肉は遠慮しておく。このヘンタイ聖女めっ」
「ふふ、それは残念ですね。また今度にしますね。それでは、わたくしはすっごく眠いので……おやすみなさいまし、サトル様」
――と、フォルは瞼を閉じ、呆気なく寝てしまった。
寝るの早いな。
それじゃ、俺も寝るか~…って。
「メサイア……起きていたのか」
「サトル、ふたりきりで話があるの。一緒に来て」
「え……? ああ……?」
よく分からないが、ソファから立ち上がる。
リースとフォルはよく寝ているし、起きないだろう。一応、風邪を引かないよう、毛布はかけてっと……。あと頭も撫でて。
なんてやっていると、腕を引っ張られ……外へ連れ出される。
こんな深夜帯にどこへ行くやらね?
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