第443話 聖女の作る激甘デザート
美味すぎるカツカレーを完食。
食後はフォルの作ってくれたデザートをいただく。
バニラアイスとハチミツたっぷりのパンケーキ。おいおい、こんな高カロリーで美味そうなモン食っていいのか!? いや、食うね!
「わぁ~、とても美味しそうですぅ~!」
リースは目がハートになっていた。
続いてメサイアも視線が釘付け。ベルですら表情を崩しそうになっていた。
やはり、甘いものは最強だな。
という俺も久しぶりにこんな美味そうなモンを前にヨダレが止まらなくなっていた。
「いただこう」
ナイフで一口サイズに切り刻み、フォークで口元に運ぶ。瞬間で濃厚なハチミツの甘い味とバニラアイスの冷たくて脳を幸せにする甘味が広がる。
ん~~~最高すぎるってッ!
生きていて良かったと思える瞬間だッ。
「うますぎィ! フォル、あなた天才よっ!」
手が止まらなくなっているメサイアはフォルを称賛しながらも、もしゃもしゃと食っていた。そんな小動物みたいに。可愛いけどっ。
メサイアの幸せそうに食ってるところは見ていて飽きないな。
「まさかこんな美味いパンケーキを食べられるとはね……」
気まぐれの猫のように機嫌をよくするベルは、感心しつつも味わっていた。コイツがこんな風に表情を崩すのは非常に珍しい。つまり、フォルの作るデザートはベルの仏頂面をも崩すほどの最強ってことだな。
「みなさん、褒めていただきありがとうございます!」
「良かったな、フォル」
「はいっ、兄様!」
満面の笑みとはまさにこのことか。
まあ、これでフォルのテレポート事件(二回)は許されたであろう。というか、俺が許した!
食後のデザートを食べ終え、フォルとリースは片付け。メサイアはコタツで寝っ転がっていた。ベルは外の様子を見に行きやがった。こんな猛吹雪の中で。
止めたのだが聞かなかった。
あのビキニアーマー女子は、頑固だから困る。
しかし、周辺に危険なモンスターが棲息していないとも限らない。おそらく、ベルは危険排除の為に散歩しに行ったのだろう。ビキニアーマーで。
俺も一緒に行くべきだったが、防寒対策が不十分だ。さすがの神様でも凍死は確実だろう。
「ねえ、サトル」
「なんだ、メサイア」
「この真冬状態では山ダンジョン『ケントゥリア』の攻略なんて無理じゃないかしら」
「その通りだ。冬が過ぎ去るのを待つしかなくなった」
天候を操れればいいのだが、さすがにそこまでのチートスキルはない。前アルクトゥルスなら出来たかもしれないがな。
少なくとも今の俺には“神様属性”しかない。
お菓子のオマケみたいなモンだからな~。
「でも、しばらくダラダラ出来るならいいわ~」
「お前な。てか、女神なら天候をなんとか出来ないのか?」
「無理ね」
「なぜだ?」
「世界に干渉すれば宇宙崩壊に繋がるし」
……なるほどね。結局“理”に直結するわけだ。
まあいい、しばらくはスローライフと決め込もうじゃないか。たまにはゆっくりするのもいいだろ?
深夜になる前にベルが平気な顔して返ってきた。
震える様子もなければ、いつものクールな表情だ。ただまあ、さすがに雪が積もってはいる。
「おかえり、ベル」
「ただいま。外はブリザードだったよ」
「そらそうだろうな。よく帰ってこれたな」
「聖者だからね。てか、理くんもそうじゃん」
言われてみればそうだったな。しかし、それは過去の話。俺は『聖者』から『神様』に鞍替えしたんでな。もう聖者の属性はないのだよ。
「残念だがアルクトゥルスなので」
「そっか。神王だもんね」
なぜか納得するベルは、そのまま風呂へ向かった。一応、入るんだな。
「あの~、兄様」
恐る恐る声をかけてくるフォル。
「ん?」
「ベルさん……なんで平然としているんですか!?」
「んー、聖者だから?」
「それで片付けちゃっていいんです!? 本気で心配になってきいましたよ、わたくし」
確かに、単に聖者だからでは片付けられないような気がしてきた。隠しステータスに厳冬耐性だとか防寒値だとかあるんだろうか。
でなければ説明がつかんだろ、コレ。
明日に備えて寝ることに。
ベルは風呂から出てベッドへ直行していた。疲れていたんだろうな。
俺はメサイアにフォル、リースを抱えたまま眠ることに。うん、最高。
「兄様、兄様ぁん♪」
「おい、フォル! どさくさに紛れてあっちこっち触るなっ」
「久しぶりのベッドですもん!」
ったく、このヘンタイ聖女がっ。
更にリースも俺の手を握る。
「サトルさん、人肌で温めないとですよねっ」
「そ、そうだな。今すっごくポカポカしているよ。リースは温かいな」
「あ、ありがとうございます」
嬉しそうに微笑むリース。
肝心のメサイアは――もう寝ていた。ベッドに入って三秒で夢の世界かよ!




