第440話 女神の眼光
女神の力を発揮するネメシアは、同時に瞳を赤く輝かせていた。
「お、おい。大丈夫なのか、ネメシア!」
「ついに“この力”を使う時が来たようね……!」
「え?」
この力? なんの力だよ、それ。
確か、ネメシアは『ホワイト』系のスキルが主だったはずだが……それ以外があったのか? 知らなかったぞ。
――だとすれば、いったいどんなスキルなんだろうか。
身構えていると、ネメシアは指でピースを作り――って、そのポーズは色々と危険だ! ミ●ルビームになってしまうではないか!
てか、まさか!!
「ホワイトビームッ!!!」
なにいいいいいいいい!?
って、やっぱりビームじゃねえかッ!!
しかもそれはエコの十八番だろうがっ。
「……私の立場がっ!」
エコは嘆くものの、そんな場合ではない。
ホワイトビームは、強烈な白い熱線を発射してアイアンドラゴンの鋼鉄のボディをあっさりと貫いてしまった。
は!? マジかよ!!
あんなバカ硬かった体をいとも簡単に!
『グアアアアアアアアアアァ…………!』
アイアンドラゴンは明らかなダメージを受け、飛行能力を失い墜落していく。まずい! フォルが巻き込まれる!
俺は全力疾走してアイアンドラゴン落下地点からハイジャンプ!
未だに鱗に引っ掛かっているフォルをお姫様抱っこして救出に成功。ただ、着地が上手くいくかどうか――!
「任せて」
地上で動きがみられる。トーチカが少女化したエコを持ち上げている。おいおい、怪力だな。いや、そうじゃないな。
トーチカは、メイン武器『アパッチ・ナックルダスター・リボルバー』を装着していた。銃にもなるという万能ナックルダスターだな。
素振りしてエコを飛ばしていた。
なるほど、バネにしてこちらへ飛翔してくる気か! ――って、なぜ!?
『ピュ~~~~~~ン!』
少女版エコが俺の方へ大砲となって飛んできて、胸に飛び込んできた。
「ぐぉ!? お前なッ!?」
「到着です! ていっ!」
「な?」
ぽわぁっと黄緑色の空間に包まれると、俺とフォルそしてエコは滞空を始めた。
なるほど!
「私、こんなことも出来るんです! 古代エルフ人ですからッ!」
ドヤ顔を見せるエコ。今だけは神様に見えるねッ! おかげで緩やかに降下できそうだ。一方でアイアンドラゴンは急速な落下を見せ、ついに地面に激突。
『ドオオオオオオォォォォ……ン』
物凄い地響きを立て、軽くクレーターが出来上がっていた。ありゃ、さすがに大ダメージだろう。
地上に降り立つと、アイアンドラゴンは塵になりかけていた。
「倒したんだな」
「はい。ネメシアさんのホワイトビームの威力が絶大だったんです」
と、エコは状況を説明してくれる。
ほぅ~、あの女神の力はホンモノだったか。
確かに凄い光だったけど、まさかアイアンドラゴンを一撃で葬るとはな。
『…………!』
その時、塵になっていたアイアンドラゴンの目が見開き……ネメシアの方を向いた。口から鉄のブレスを吐いた。
俺は直ぐに怒りのボルテージを最大限にし、最強のスキルをぶつけた。
「てめえええええええ!! 俺の娘に手を出すんじゃねええ!! くらえええええ、エンデュランス!!!」
右手を秒で翳し、怒りの光を穿つ。
俺のエンデュランスは、全速全開のフルパワーで到達。アイアンドラゴンにトドメの一撃を与えた。これにはさすがのドラゴンも耐えきれず――消滅。
【Good Job!!】
なんだか懐かしい演出も現れた。
そや、この周辺だとよく見る気がする。
多分、レメディオスの辺境地限定なのかもしれないな。
「パ、パパ! ありがとおおおおお!!」
わんわん泣きながら俺の背中に抱きついてくるネメシア。めちゃくちゃ怖かったんだろうな。てか、俺も怖かった。世界一大切な娘になにかあったら俺は……世界を恨むねッ! 神様だけど!
「ネメシア、泣くのは後だ。フォルを助けたぞ!」
「フォルトゥナ母様!」
そう、ついに救出成功なのである!!
これでメサイアたちと合流できるぜ。




