第22話 聖なる道標 - 家を守るために戦う -
なんだよ、死の魔王とか、ドラゴンとかよ……。
情報量が多すぎるだろ!!
「つーか、メサイアも魔王討伐に出てたのかよ、なに勝手に抜け出してんだよ!?」
「うっ……。やっぱり、それツッコムわよね……。でも、抜け出してなかったら、サトルと出会えなかったわよ?」
「マジか! ……仕方ない、後で事情を詳しく話してもらうぞ」
「あ、後でね。今はこれからの事を選ばなきゃでしょ! ほら、1~3好きなの選びなさいよ。どれ倒しにいくの?」
え? 倒しに行くの? マジで?
「まてまて。メサイア、正気か? 俺たちは小屋でまったりできれば、それでいいだろ。世界の平和なんてさ、騎士とかに任せておけばいいだろ。かったりーよ。
なあ、王様、すまんが俺は『勇者』ではないんだ。ただの、いち『冒険者』に過ぎないんだ。だからさ、そういうのは『選ばれし者』とかに譲ってやってくれ。俺は、のんびり旅ができればそれでいいんだから」
しかし、王様は一言、
「ダメです」
「ダメなのかよ……。俺たちの他にいないのか、選ばれし勇者とか」
「いません。なぜなら女神がたった二人しか存在しないからです。女神がいなければ、そのような存在を招くことは出来ない。なので、昔はそういう勇者たちがあちらこちらに現れては、暴虐の限りを尽くす極悪非道なモンスターなどを駆逐して戴いたものですが」
そうか。昔はそういうヤツ等がいたんだ。
でも【死の呪い】だとか、そんなので世界が一変したという。
でも、
それでも俺は、
「お断りします。俺には、この家とこの三人がいれば幸せなんです」
「……素晴らしい」
「え?」
「あなたのような聡明な方はそうはいない。
私は、今まで多くの勇士を見てきました。ですが、どの方も危険を顧みない猛者たちばかりでした。彼らは世界を救うために、その身が滅ぶまで何度も立ち上がり、そして、散っていった。
――ですから、サトル殿のような場所とヒトを第一に考える方は、はじめて……その淀みなき信念、お忘れなきよう」
ミクトランは湯呑に手を伸ばし、茶を啜った。
そして、
「サトル殿。そなたにこそ、この条件は相応しい。
では、第四の選択肢を与えましょう――
4.神王・アルクトゥルス
この世界の絶対王にして、神。全ての神の頂点に立つ御方。
明日は丁度……『聖者祭』、この機会に『ビフロスト』へ向かい、神にお会いになられるのです。そして……『聖者』にしてもらうのです」
「神王……だって!? てか……『聖者』にしてもらう? そんな事が可能なのか!?」
「ええ。『聖者』になろうものならば、全てのレイドボスを滅することが可能でしょう」
「だったら、その神王ってヤツが倒せばいいだろ?」
「ごもっともな意見ですが、アルクトゥルス様は【神王】ですからね。神座を離れるワケには参りません」
そりゃそうだろうが……なんだか納得いかない。
「でもま……『聖者』になれば、全てのレイドボスを倒せるんだよな?」
「はい。間違いなくワンパンできます。ですので、まずは明日の『聖者祭』に参加して戴ければと思います」
ワンパンとか言ってくれるな……。
って、ワンパン!?
一撃で倒せるってことか……そいつはスゲェや!
「よ、よし! その第四の選択肢に決めたぞ!」
まって、と、メサイアが横から入る。
「サトル、あんたそんな安易に決めていいの? それってつまり、人間辞めちゃうってことなのよ。それでいいの? ねえ、リースとフォルはどう思う?」
「あ、あたしは……」
リースは言葉に詰まる。
一方、フォルは、
「わたくしは賛成ですよ。だって、わたくしは『聖女』ですから。別に、そんな深く考える必要はありませんですよ。人間の頃となんら変わりありませんし」
「そ、そいや、フォルは聖女だったな。ていうことは、フォルも神王とやらに会ったのか……?」
「い……いえ、それが記憶になくて」
「記憶にない……?」
「それが……物心がつかない頃でしたので……。でも、聖女なのは本当ですよ。聖書に書かれている『聖痕』と合致していましたから」
そうか、子供の頃すぎて覚えてないのか。
それにあの『聖痕』は確かに本物だろう。なぜなら――
「フォルトゥナ様は、間違いなく聖女です。王である私が断言しますよ」
とまぁ、王様公認だし。
ともあれ……
「みんな、世界を救うにしても『聖者』になっちまえば、こっちのモンだろ? なんたって、ワンパンできるんだ。人間辞めるくらい安いもんだろ」
勇者なんかになって身を削るくらいなら、いっそ『聖者』になってチート化したほうが絶対に楽だ。ああ、そうだ、元々俺は面倒くさがりなんだ。そっちの方が楽でいい。
「つーか……なあ、メサイア。お前は『女神』だろ?
リースは『エルフ』だ。フォルは『聖女』だぞ。俺だけただの人間だ。俺だって、なんかこうカッコいいジョブだとかクラスが欲しいもんだぜ」
「そ……そうね。言われて見れば、サトル以外は人外みたいなものね。それに、変化はこちらも必要だし、うん、分かった。賛成」
賛成2となった。あとは、リースだが。
「どうだ、リース?」
「賛成です。だって、この山小屋だって守っていかなきゃなんですよ。そんなレイドボスとか強いモンスターに襲われたら、住むところなくなっちゃうじゃないですかぁ! だから、みんな強くなっていくべきだと思います」
そう、きっぱりとリースは答えてくれた。
その通りだ。
俺たちには、この山小屋がある。いつかは、もっと大きな『一軒家』だとか『城』になるだろう。だったら、この家を守っていかねば。
そうさ、俺は、家と財産――そして、仲間を守るために決起するのだ!!
決して、世界の為なんかじゃない!!
世界なんてどうだっていい!!
ただ、俺の身の回りに危険が及ぶというのなら喜んで聖者となり『レイドボス』を全部ぶっ潰してやる。
「よし、賛成多数により――可決!」
今日から『聖者』になるべく、新たな旅がはじまった。
俺、レイドボスを全員ぶっ倒して……
のんびり暮らすんだ……!
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