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【コミカライズ】全自動攻撃【オート】スキルで俺だけ超速レベルアップ~女神が導く怠惰な転生者のサクッと異世界攻略~  作者: 桜井正宗
第三章 星屑

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第176話 暗躍する令嬢

 ヘールボップ家の令嬢・サイネリアは脱落した。


「……く、不覚でしたわ。よりによって、あんな場面で脱落してしまうなんて。(くや)しい……」


 けれど、命があっただけ良かった。

 殺人はルールで禁止されているものの、サイネリアは『裏ルール』の噂を耳にしたことがあったから、内心ではホッとしていた。


「ところで、ここは……。なるほど、脱落者は場外ってことですの」


 闘技場の外は脱落者であふれていた。

 ほとんどが力のないもので、あっさり退場していた不甲斐(ふがい)無い連中ばかり。そんな者たちにサイネリアは用はなかった。


「さて……こうなってしまえば、こちらも行動に移さねばなりませわね。サトルに頼まれた……ベル様の件」


 そう、サトルは事前にサイネリアにあるお願いをしていた。

 それは、ベルの奪還だった。


 どうにかして、バトルロイヤルへの参加をさせて欲しいと、そんな難易度の高すぎる依頼だった。そんな大それたこと、そう簡単にはいかないのだが――不可能を可能にするのが、ヘールボップ家――いや、サイネリアだった。



「それでは参りましょうか、華々しく、優雅に――!」



 鼻歌を歌いながら、サイネリアは堂々と待機室へ向かった。

 その方がかえって周りに不審感(ふしんかん)を抱かせないと踏んで。


 受付までたどり着くと、そこは厳重な警備になっていた。


「き、貴様……ここは立ち入り禁止だ…………って! これは大変失礼いたしました。ヘールボップ家のサイネリア様。しかし、ここは現在、星の決闘大会が開催中ですから、お引き取り願います」



「邪魔ですわ――アメイジンググレイス・シャイング・ウィザード!!」



 問答無用で、さくっと警備十人を蹴り飛ばし、サイネリアはドレスを整えると、再び鼻歌をはじめた。



「~~~~♪ ~~~~~~♪ ~~~♪ ~~~~~♪ さあ、わたしを(はば)もうとする怪人さん。出ていらっしゃい」



 待機室に到着する。

 すると、そこには今回の優勝賞品である『エルフ』と『ベル』がいた。


 だが、もうひとりいた。


 まるで彼女たちを守るかのように。



「おやおや、あなた……。あなたは、マックノート家の『マナフ』ではありませんか。ご機嫌麗しゅうございまして」

「お久しぶりですね、サイネリア。

 ですが、ここは立ち入り禁止ですよ。なぜ、この場所に来られたのでしょうか」


「なぜ~? あなた方、マックノート家の不正を暴きにきたのですことよ」

「不正……」

「ええ、もう知っていますのよ。全てはリースさんを通じて聞かせてもらっておりますのでね」


 サイネリアは、リースの『テレパシー』を通じて、サトルから情報をほぼリアルタイムに得ていたのだ。だから、ある程度のことは分かっていた。


「…………ふふふ、あはははははは! サイネリア、やっと気づいたの。マックノート家の偉大な計画が! でもね、あなたも同罪よ。だって、私たちと同じようにエルフを見下してきたじゃない!」


「それは違いますわね。ヘールボップ家は、一度たりともエルフを奴隷になんてしていませんもの。むしろ、対等な関係ですわ。いえ、それ以上よ。

 ……あら、もしかして、言っていませんでしたっけ。我が父・クシャスラ辺境伯はかつて――アヴァロンを別の場所に移しました。一部のエルフたちを逃がしていたのですよ」


「な……! なんですって!!

 サイネリア、お前たちヘールボップ家は『星の掟』に従わなかったというのか! これは、我々、マックノート家に対する反逆! 重罪! いえ、それにも勝る大罪!!」


「反逆……バカバカしいですわね。なぜ、あなたたちが上なのですか。あの傲慢(ごうまん)な貴族たちを野放しにし、あまつさえ『マグネター』と手を組んでいただなんて……これはもう笑い話にもなりませんわ」


 マナフは、ヘールボップ家の裏切りに歯ぎしりした。


(これでは、ゼロアスター様の計画が……いえ、少しだけ。ほんのわずか影響があるだけ。全エルフを星の都に留める必要があったけど、ならば、居場所を割らせるだけです)


「サイネリア、このままでなら私の権限でヘールボップ家を追放しますよ。

 それが嫌なら、外界のエルフたちの居場所を言いうのです。その引き換えに、ヘールボップ家の地位を二番目にして差し上げましょう。如何(いかが)です。悪い話ではありませんでしょう?」


 そんな甘い話を持ち掛けてくるだろうと、サイネリアは予測していた。

 あまりに予想通りで呆れてしまった。


「追放ですか、勝手にどうぞ。

 それに、なにか勘違いしておりませんこと? 我がヘールボップ家は、もとから花の都の王に仕えていたのです。その忠誠は今でも変わりません。それにですね、二番より一番の方が良いに決まっているでしょう。わたしを、ヘールボップ家を安く見ないことですわね!!」


「愚かな……。あんな王は、王ではない! 我々、マックノート家を認めようとしなかった! ゼロアスター様を『聖者』にしなかった! だから、我々は独自に『聖者』を超える存在になったのです。そう、我々は星の民。人間でもエルフでも怪人でもない……! 星の民ですからね……ふふふふ、あはははは」


 あまりの馬鹿らしい話に、サイネリアはアクビが出た。

 お嬢様としては、はしたいない行為だが、あえてアクビをした。


「き、貴様! サイネリア、私を馬鹿にしているな!!」

「当然ですわ。あまりに矮小(わいしょう)な存在すぎて、あなたの存在すらも忘れていましたわ。それより、もうケリをつけましょうか。その方が手っ取り早いですわ」


「――ふ、私は『聖者』を超えた存在です。そう簡単に――」



『アメイジンググレイス!!』



「な――もうこんな距離に!!!」



 突然のことに驚くマナフ。そう、サイネリアはすでにマナフの目の前まで距離をつめていた。あんなペラペラと喋って隙だらけだったおかげで、先制攻撃が可能だったのだ。


「そうそう、言い忘れていましたわ。わたし王よりあるもの(・・・・)を拝領していますの」

「……あるもの!?」



『アメジンググレイス・スレイプニル!!』



 サイネリアの脚に蒼白い雷光が超集中した。

 そこから容赦なく、ハイキックを入れた。それがマナフの顔面に命中。彼女は吹き飛び、待機室の壁を突き抜けていってしまった。



「……あら、告げる前に消えてしまいましたわ。残念ですこと」



 倒したところで、サイネリアはベルのもとへ。


「お待た致しました、ベル様。それとエルフさん」

「おつかれ~。やっぱり、キミはすごいよサイネリア」

「いえ、わたしなんてまだまだ……ベル様の足元にも及びませんわ」

謙遜(けんそん)しない。君は王が認めし『聖者』なんだからさ。誇っていいんだよ」


「……はい」


「うん、じゃあ~バトルロイヤルに参加しようか」

「え? ベル様。しかしわたしは失格を……」

「その為にわたしは潜入(・・)したわけだからね。大丈夫、きっとうまくいく。だって、この作戦は全て理くんの作戦なんだからさ~」


 それを聞いて驚くサイネリア。そんな話は聞いていなかったからだ。


「あの、ベル様……」

「これは王の、いや――神王・アルクトゥルスの命でもある。さあ、行こう。みんなを助けに」

「……アルクトゥルス様……。あの偉大な神王様が」


 サイネリアは、まるで理解の追い付かなかった。

 自分の考えている以上のことが起きていたようだったからだ。



 星の儀式の日は近い。

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