第174話 高速建築スキル
家を作るため、再び魔法の森【ブロセリアンド】へ舞い戻った。
人の気配はなく、生存人数はまあまあ変化して、残り『166名』となっていた。ここにきてあまり減少していないのは、きっと、夜になってライバルの活動も鈍くなったということ。
また、夜になると危険になるとも司会は言っていた。
頭の切れるヤツは安全な場所で身を潜めているのだろう。
特に『マグネター』は面倒だ。
雑魚から強力なヤツまで幅広い。その種類は多種多様。獣人タイプもいれば、ドラゴンタイプもいた。いったい、いくつのタイプがいるんだろうな。
「――っと、木材はこんなもんかね。あんまり派手に伐採すると、他のヤツらに見つかる恐れがあるからな」
「こちらは石の採集を完了させました、サトルさん」
「おう、リース。お疲れ。ん、ずいぶんと泥まみれになったな~、風呂も作って、すっきりしないとな」
「はい♪ 広いお風呂を作りましょう」
これだけ取れれば十分だろう。
材料は【運搬スキル】を使用し、ミニチュアサイズにした。俺含め、みんなの掌には大量の材料が乗っていた。
「よーし、戻るか!」
「「「「おおおお~~~~!!!!」」」」
◆
またまた女神スキル『ホワイト』空間に到着っと。
本当に何もない真っ白だが、ここで俺たちの家を作っていけばいい。今は白紙だけれど、これから色が加えられると思うと、なんだか子供心が蘇る気がしていた。まるでお絵描きだな。
なんにせよ、
女神だけの空間に家を建てるとかワクワクするよな。
そんなことをする連中、世界――いや、宇宙中を探してもいないはずだ。
「メサイア、材料のサイズは元に戻した。建築スキルの準備はいいか?」
「ええ、これだけ大量にあれば『普通の家』くらいは……いえ、邸宅レベルは可能よ。みんな、離れて!!」
メサイアから離れ、俺たちはその行く末を見守った。
『高速建築・開始――!!』
そう彼女が叫ぶと、材料が一気に消失し、家の建築過程が超高速早送りで行われた。てか、早すぎて何が起きているかサッパリ分からない。
「うあぁ……なんじゃこれえ」
前の【建築スキル】のスピードとは比較にならない速度。
あっという間に外観が完成、おそらく内装も出来ている。
「あ、姉様……すごいです」
「メサイアさんの建築スキルって、初めてまともに見たかもしれません……」
フォルもリースもポカンとなっていた。
俺もビックリだよ。さすが建築の女神様だよ。
「できたー!! ホワイト邸宅の完成! 内装もバッチリよ。部屋とかキッチン、お風呂のデザインは花の都にある実家を踏襲しているわ。だから、ほぼ一緒だけど、広さは倍ね」
「まじか!! さっそく上がっていいのか!?」
「うん。言っておくけどね、ハリボテじゃないからね。本物よ」
「あは。そうだったら、笑うしかないな、メサイア」
俺は玄関前まで向かって、深呼吸した。
……さて、緊張の瞬間だ。
扉を開けて――――
『ドシャガラガラガラドドド~~~~~~~~~ン!!』
家が崩壊した。
「………………へ」
「え………」
「あの…………メサイアさん」
「…………はい」
「家、壊れましたけど」
「……そ、そうね……。あは……あはははははは…………」
「ぽんこつ女神! なにやってんだー!!!」
「ごめんなさーい!! 焦って高速にしすぎたみたい!! 失敗しちゃったー!!」
「あほー!!!」
この女神のぽんこつ具合、どんどん上昇しているな。
「もう一度できないのか?」
「建築失敗の場合、材料はある程度は返還されるけど……うーん、これじゃあ厳しいわね」
万事休すか……そう思われたとき。
「そう思っただがやぁ~、オイラが予備の材料集めとったいでえ」
「ミザール! 本当!?」
藁をも掴む思いで、メサイアはミザールにすがった。
「ああ、本当だじぇ~。ほいよっと」
ドンっと大量の材料が出てきた。
こ、こいつどこから取り出した!?
「好きに使ってくれい」
「ありがとう~!!! ミザール!! これでもう一度!」
「メサイア、もう失敗するなよ~」
「分かってるって、サトル。私を信じて!」
いや~…さっき失敗したしなぁ。
ま、信じてやらなくてどうするって話だがな。
「分かったよ。フォルもリースも祈ってくれ。ミザールもな」
「いくわよ~! 今度こそ、高速建築開始!!」
材料は光に包まれ、また建築を開始した。
先ほどの再現だが、今度は着実に施工しているように見えた。うん、今回は大丈夫そうだな。崩壊とかないはずだ。
「はいっ!!」
「はいって……早かったな。本当に大丈夫かあ?」
「うっ……そう言われると、ちょっと自信ないけど、でも、信じて」
「うん。メサイア、お前のことは宇宙一信じているよ」
今度こそ。
今度こそ成功してくれ!!
内心ではヒヤヒヤな俺だった。
このままじゃ、真っ白の空間で野宿だぞ!?
それはそれで寂しいじゃないか。なんか落ち着かないじゃないか。あと、イチャイチャできないじゃないか!!
さあ――――こい!!
再び扉を開けてみる。
「……こい」
カチャ……っと、扉を慎重に開けてみた。
すると、
「お…………おぉ……」
崩壊しなかった。
今度は成功した。
「「「「やったああああ~~~~!!!!」」」」
みんな同時に喜んだ。
「サトル! やった、やったわ! これで『家』が完成よ!!」
「よくぞやったメサイア! お前は最高の女神だ!!!」
思わず俺はメサイアを抱きしめた。
メサイアも受け入れてくれて、ぎゅっとハグを返してくれた。
「これで安心して一泊できますね、リース」
「うん、フォルちゃん。久しぶりの家事、ちょっと燃えてきました!」
「ふぉ~、これはすげぇだ。家ができちまった……。こんなけったいなスキルは初めて見たべぇ。こりゃ……大賢者・フォーマルハウト氏もビックリ仰天だがやあ」
◆
家の中は、あのかつての内装ほぼそのものだった。
広い空間だが、落ち着きがあり甘い匂いがした。
「ふー…」
みんなはもう各作業へ向かってしまった。
メサイアは改めて家の点検へ。
リースはお風呂の調整とか。ついでにお湯も張ってくれるらしい。
フォルはさっそく夜食を作りに料理へ。
ミザールは俺の向かいで、紅茶を楽しんでいた。
「ようやく落ち着けましたね」
「なんだ、ミザール。お前、訛ってねーじゃん」
「これから重大な説明があるんです。いちいち訛っていたら、面倒でしょうから、キャラを変えてみました」
「それはそれで不気味だぞ」
「…………そうでげすかぁ、そう言われるとショックだべぇ」
「それでいいよ。ほら、個性的っていうか……まあ、それより教えてくれよ。星の都の実態を……」
「分かりやした。んでは、そうですなぁ~…ど~こから話したものかぁ。それでは――まずは、星屑の在り処についてなんてどうでしょうかねぇ」
星屑の在り処……?
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