第167話 聖女の栄光 - グロリアスソサエティ-
大会はついに始まろうとしていた。
『――それではルール説明です!!
まず、今回の戦闘方式は――バトルロイヤルだァァァ!!!』
「「「「「おおおおおおおおお~~~~!!!」」」」」
歓声が上がりまくる。
――って、まて。バトルロイヤル!?
「うそーん……。決闘要素どこいったよ!?」
「兄様、バトルロイヤルってなんです?」
「まあ、詳しい説明があるだろう」
『一応簡単に説明しますと、バトルロイヤルとは……今回の場合、『300人』が無差別に戦い、生き残った最後の一人が優勝となるわけです!』
「……なるほど。そんなルールなんですね」
フォルはうんうんと頷いた。
『なお、殺人は一発アウトとなり、超ペナルティを食らいますので注意が必要です! なので、敵を戦闘不能にすればいいだけ! いいですか、重要なことなのでもう一度言いますよ、倒すだけ!
ちなみに、倒れた者の頭上には【戦闘不能】が表示されますので、分かりやすいかと! なんという親切設計!』
司会は話を続ける。
てかテンションたけぇ~。
『さ~て、今回のデュエルフィールドは――魔法の森【ブロセリアンド】で決定だー!!』
ん……【ブロセリアンド】?
どこかで聞いたような覚えが……まさかな。
『制限時間は【無制限】。朝、昼、夜が存在し、とくに夜は危険です! 寝込みを襲われやすいので要注意ですよ~! なお、ヤバすぎる怪人モンスター『マグネター』も出現するので、特に注意! ここまでで質問ある人はいるかなー!?』
「はい!」
『では、そこの可愛いシスター服の娘さん、どうぞ』
って、気づけばフォルが挙手していた。
注目が一気にこっちに集まる。こっち見んな!
「アイテムは使用可能ですか!?」
『いい質問です。アイテムの持ち込みは厳禁!! ドロップアイテムのみを使用してくださいね。それがルール。星の掟です! 破ったら即退場ですぞ~!』
なるほどね。
『おーっと忘れていた。今回の優勝賞品ですが~…!! なーんと、毎度お馴染みのエルフだー! ですが、こいつは超重要な秘密を持つとも噂されています! それとな~~~なんと、あの花の都の聖戦士・ハーデンベルギア様も賞品となってくれましたー! なんてこった、今回は超豪華!!』
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」
かつてないほど歓声が上がった。
お前らな……。
で、エルフとベルがステージに現れた。
「あ、ベルさんです! 兄様、あれ」
「分かってる。それと――隣のエルフ……そうか、やっぱりこの星の都にいたんだ」
「あのエルフさんって……もしかして」
「ああ、あの女性エルフは、リースの母さんだ……ネモフィラだ」
「あのとてもキレイな方が……どうして、この星の都に」
「詳しい事は分からん。だけど、親父さんは以前『形見』と言っていた――けど、それは違ったんだ。この星の都にずっと囚われていたんだよ。
きっと、親父さんは何かしらの事情で諦めてしまっていたんだ……。でも、俺は『死神王の邪眼』で偶然視てしまったんだ、リースの母さんが苦しんでいるビジョンを。たぶん『ユニリング』を通じて見せてくれたんだ……」
「兄様、必ず助けましょう!」
「もちろん。そして、貴族共をぶっ潰し、この都の腐った性根も叩き直す」
そう意気込んでいると――
『ひとつ言い忘れておりました。制限時間はないと言いましたが、フィールドは時間によって『狭まる』ので注意してください~!』
「狭まるってどういうことだよー!」
どっかの貴族がそう野次を飛ばした。
『これから向かってもらう森には、特殊な魔法が掛けられています。よって、森フィールドはどんどん縮小してくのです。そこを『レッドゾーン』と言い、ある一定時間滞在していると強制退去となるのです。つまり、追放されてしまうのですね! 分かりましたか、皆さま!
それでは、いよいよ大会を開催いたします……! 皆さま、舞台へ上がってください!』
少しすると、『ガコーン』と巨人が通りそうなほどの大きな扉が、自動で開いた。いったい、あんなモンをどうやって作ったんだかね。
「おお……あんなところに巨大扉があったのか」
「兄様、わたくし不安で……」
ぎゅっとフォルは子供の様にしがみついてくる。
「フォル。お前の聖なる力を貴族共に見せつけてやれ……! そしたらさ、きっとヤツ等ぶったまげて、あのサイネリアですら聖女と認めるはずさ」
俺はフォルを鼓舞した。
すると、気合が入ったのか、表情がガラリと変わった。
いい目つきだ。
「サイネリア……そうでした。わたくしには、倒さなければいけない敵がいたのです。彼女もきっと参加しているはず。ですから、無名と侮辱したことを後悔させて差し上げなければなりません」
「行こう。あの扉の向こうで戦いが始まる」
そうして、決闘――いや、バトルロイヤルは始まったんだ。
「いくぞおおおお!!」「うおおぉぉぉ!!」「俺が勝つ!!」「ベル様は俺が戴く!!!」「生き残ったもん勝ちだぞー!!」「俺はハレー家直伝のスキルがあるぞ! どいつでも掛ってこい!!」「走れえええ!!」「っしゃあああ!!」
バタバタと参加者が扉に突っ込んでいく。
すげぇ勢いだ。
俺たちも扉に向かって走った――。
◆
【 ブロセリアンド 】
いきなり上空から始まるとか――やばくね?
「うああああああああああああああああああああ!!! なんだそれえええ!! 真っ逆さまじゃねええかあああああ!!」
このままでは地面に激突だろうと、ニトロで何とかしようとしたのだが……いきなり、黄色いオーラに包まれた。
「おぉ?」
「兄様!」
「おお、フォル。まさか合流できるとは……てか、このままだと俺たち死ぬんじゃ」
「このオーラがある限り、大丈夫みたいですよ。任意の場所に着地できるらしいです、ほら。あそこの人とか着地していますよ」
「本当だ。そういうことか。うまく出来ているんだなぁ~」
上空には、まだ数百人以上が自由落下していた。
「よし、フォル。とりあえず、俺と組もう」
「あたりまえじゃないですか♡ わたくしと兄様は一蓮托生ですよ♡ ――と言いたいところなんですけれどね」
「え、どうした、フォル」
「僭越ながら、わたくし……露払いをさせて戴きます! ほら、あの森の広場に貴族たちが固まっていますよね」
「確かに」
「では、グロリアスソサエティを発動し――失礼します!」
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【スキル】グロリアスソサエティ
【Max Lv】5
【効果内容】
聖女のポテンシャルを最大限に引き出す。
パーティーメンバーにも影響する。
[Lv.01]:聖属性魔法攻撃のダメージを
1000%~3000%上昇させる。
使用者のみHPの10%を失う。
(中略)
[Lv.05]:聖属性魔法攻撃のダメージを
5000%~7000%上昇させる。
使用者のみHPの50%を失う。
SP消費量:300
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それから、『ピューーーン』とフォルは落下速度を上げて……
華麗に着地、それと同時に、
『秘奥義!! 覇王轟翔波――――――!!』
……なぬ!?
『――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
赤黒い超波動が放たれた。
すると、一気に【戦闘不能】の文字がバンバン現れ――おおよそ『15人』を打倒した。すげぇぜ、一騎当千だな。
『早くも『16名』が戦闘不能です!! すみやかなご退場を~!』
――と、どこからか実況が響いた。
で、戦闘不能になった者は強制退場させられていた。……消えた。
「~~~~ふぅ」
「フォル! ビックリしたぞ……いきなり猪突猛進していくと思ったら」
「ウェーイです!」
「ウ、ウェーイって……まあ、よくやったよ」
『なんと! 開幕からたった五分で『残り259人』となってしまいましたー!! これは波乱の予感かー!?』
もうそんな減ったのかよ……!
そりゃま、こんだけ人数いるし少しは減るとは思ったけど、なかなかにガッツリ減ってくれた。大半はフォルの仕事だけどな。
「さて、まさかバトロワとは思わなかったが、楽しくなってきやがった……!」
「兄様、フル支援しますよ! グロリアスブレッシング! グロリアスサームズ! グロリアスバプテスマ――」
などなど、フォルは全支援スキルを発動してくれた。
さあ…………はじめようか。
傲慢な貴族たちをSearch & Destroyだ。
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