第163話 オートスキルを覚醒させよ
ああああ騎士団のギルドマスター『ああああ』と合流した俺は、干支ノ助のこと、この星の都で貴族たちがやりたい放題やっていることなど……悪事を聞かせてもらった。
「なんて話だよ。それが事実なら、この都は星の都つーか……『貴族の都』じゃねぇか」
「その通り。反論の余地なしだ。
さっきも言ったが、この都は『マックノート家』、『ヘールボップ家』、『ハレー家』の御三家が牛耳っとる。中でも『マックノート家』はこの都最大の大貴族。あの花の都の王にも認められているっちゅー話やな」
マックノート家――その正体はまだ分からんが、碌でもないのは確かだ。
「情報ありがとう。そいじゃ、干支ノ助のこともよろしく」
「おう、こっちは任せておけ。サトルには返しきれない恩があるからな。ワシの敬愛するオヤジが言うとったわ。人間、大切なのは日々の感謝と恩返し。施されたら施し返さなあかん。恩返しや!!」
固い握手を交わし、ああああは気絶した干支ノ助を連れて去った。
……明日は頼んだぜ。
「サトル。いきましょう」
「そうだな、さっさと宿へ行こう。俺はもうクタクタだ」
◆
宿屋・ムーンライトで一夜を過ごすことになった。
「あー、ねむ。なんだか睡魔に襲われているなぁ俺……」
ベッドの上で転寝ていると、目蓋が百トンの重さとなり、俺は――――眠ってしまったんだ。
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誰かの声がする。
『――――よ、覚醒させるのです』
「……やめろ、俺は眠いんだよ……」
『あなたは、まだまだ可能性を秘めている。さあ、覚醒するのです』
「かく……せい?」
なんだろう。
この声、一瞬は神王・アルクトゥルスかと思ったけれど、いつもと違う。女性の声だった。あれ……こんなこと初めてかも。
『サトルよ、スキルを……【オートスキル】を覚醒させなさい』
「あんたは……何者なんだ」
『わたくしは『フォーチュン』です。あらゆる万物の運命を見守る守護神。そして、聖女である『フォルトゥナ』を加護する存在です』
「え…………あんたがフォルの口癖の存在……なのか」
『ずっと見守っていましたよ。この星の都から――』
声は遠のいていく。
「まて、あんた……いや、フォーチュン! あなたは何者なんだ!?」
『いずれ会いましょう。どうか、星に願いを――』
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「――――――はっ!」
目覚めると、全身が汗だくで……つゆだくだった。
なんであんな夢を。
いや、あれは確かに本物だった。
声だけで姿は見えなかったけど、フォーチュンだったのだ。
なんで俺に?
「……ていうか、【オートスキル】の覚醒だって……そんな限界突破があったのか。知らなかったぞ」
滝のように汗を流しながら、俺は意表を突かれていた。
まさか、まだまだ強くなれるとはな……。
みんなを守れるというのなら、俺は覚醒でも何でもしてやる。
でも、どうやって?
なにをすればいい?
条件はなんだ? モンスターの一万匹狩りとか? 裏レイドボスを倒すとか? 聖地を全部巡る――とか、あれ、それはもうやったな。
もし『聖地を全部巡る』が覚醒の条件なら、らくちんでいいんだけなー。
残念ながら、メサイアが言うには『不老不死』だったな。けど、そんなモノはなかった。デマだったのだ。あったモノといえば――――。
「兄様、なにを悩んでいらっしゃるのですか?」
「俺のオートスキルがあるだろう。覚醒させいたいんだ。なにか方法があるのかなーって。うーん……」
「じゃあ、わたくしにキスすればいいと思いますのですよ♡」
「そうだな、フォルにキスを…………をぉ!? お、お、おまいつの間に!? どこからワープしてきた!」
ビックリした。
隣にフォルがいやがった。
「なにをそんなに驚かれているのですか。わたくしはずっと居ましたよ。そんなことより、兄様、今日はわたくしの番ですから、身を委ねてくださいね♡」
「は? なんのことだよ」
と、フォルはシスター服を脱ぎ捨てて、下着姿になってしまわれた。
「うわっ!?」
「聞いてください、見てください。わたくしこの度、バストアップしました!」
「知らねーよ!? 見て分かるかってーの」
「もう兄様ってば、そうは仰いますが興味津々ですね♡ 息子さんはお元気ですよ♡」
「う、うるさい……」
「あ、そうそう。わたくしこう見えて、体がすごく柔らかいんですよ~」
と、下着姿のフォルは脚をグっと上げた。
すげえ……あれは『I字バランス』ってヤツか。すごい開脚。つか、なぜそれを俺に見せた。いや、大変素晴らしいものをありがとう。眼福である。
まあでも、フォルはあれでも戦う武闘派聖女。接近戦大好きっ子である。
あんなに体が柔らかいのも納得できる。
いつも人間離れしたスゲェ動きしているからな。
「キレイだよ、フォル」
「はい、とても嬉しいです♡ そうでした、わたくしただ下着姿になったのではありません。今日は特別にこちらをっと」
じゃじゃ~んとそれを出した。
「え、それって……」
「そうなんです。明日のためにウェイトレスの格好をしてみようかと!」
「へ……なに言ってるんだ、フォル」
「わたくしも大会に出場します!」
「いやいや……大会に出るのは俺だけでいいよ。フォルには傷ついて欲しくない」
「そう言ってくれるは大変嬉しいです。ですけれど、わたくしにも使命があるんです」
「使命?」
「この星の都はあらゆる要素が複雑に絡み合っているのですよ。わたくしの『フォーチュン』、『奴隷にされてしまっているエルフ』、『怪人マグネター』、そして何よりも悩まされている『星の貴族』の存在。これらは全て関係しているんですから」
だから自分も粉骨砕身の思いで尽力したいと、そうフォルは、俺に祈った。……まったく、そんな露出した格好で言われては、拒否れなかった。
「分かったよ。一緒に出場しよう」
「ありがとうございます♡ では、そんな優しい兄様にはウェイトレスで癒してあげますね♡」
早着替えするフォル。なんとたったの0.5秒で着替えた。なんて速さ!
でもって、なんというフリフリ。ミニスカで可愛いな。
「ではいただきまーす♡」
「まて、なぜ舌を出す! なぜ腹筋を狙おうとする!?」
「なぜって……当然でしょう?」
「やめい、ヘンタイ聖女! たまには普通にさせてくれよ~」
「……普通なんてつまらないです。凡庸は人の進化の可能性を停滞させてしまいますよ。ヘンタイだからこそ、人は進化していくのです」
「なにまともに語ってんだよ、ヘンタイウェイトレス」
「ヘンタイウェイトレス聖女はお嫌いですか?」
「……う、どちらかといえば好きだけど」
「ではいいではありませんか♡ さあ、わたくしに全てを委ねて。兄様のことをぎゅっとしてあげますからね♡」
――結局、俺はフォルには勝てなかった。
◆
フォルとイチャイチャしまくっていたら、深夜前になっていた。
まずい、シャワー浴びて寝ようっと。
浴場は決まった場所にあるらしく、俺は歩いて向かっていた。
「あった、ここか~」
ガラっと戸を開けて、脱衣所で服を脱ぎ捨てた。
あとは適当に浴びるだけ。
そうして、浴場へ入ると――なぜか人影があったんだな。なんだ誰かいたのか、まあ今は男湯だし、他の客だろうと……思っていたのだが。
「メサイア……」
「あ……サトル」
なんとメサイアと鉢合わせてしまった。
「す、すまん……入っていたのか。のれんが男湯になっていたから、てっきり……」
「う、うん。いいの……」
ん――なんだか顔が赤いな。
いや、こんな裸同士なのだから当然の反応なんだろうけど……いや、それとは違う反応な気がする。あれは逆上せているとか、そんな感じ。
「お、おい、メサイア。なんか息が荒くないか?」
「…………もう二時間以上は入っているからかな」
「な、なにやってんだよ!」
俺はメサイアの元へ向かった。
その瞬間、メサイアは脱力し、倒れて溺れそうになった。俺は彼女の体を支え、お姫様抱っこで風呂から出した。
「……どうして、そんな無茶を」
「違うの……これは全てサトルのため……」
「お、俺のため?」
「たぶん……さっき凄く眠くなったんじゃないかな。あれ、私もなの。だってほら、再契約したでしょう。つまり……私とサトルは繋がっているから……あのお告げである睡魔は回避できなかった」
それで風呂にどっぷり浸かっていたらしい。
「く……。他の男に裸を見られていないだろうな!?」
「だ、大丈夫。女神のスキルで『認識拒否』をしていたから……それで見つからなかった」
「なんだその透明人間みたいなスキル。俺のファントムみたいだな」
ちなみに透明人間になれるファントムはぶっ壊れて、使い物にならなくなったのでもう使えない。さすがに神器すぎたなアレは。
人類の夢が潰えてしまったのう。
「とにかく……部屋へ戻りましょう」
「任せろ。でも……下着とかどうする……? 俺がつけていいのなら……やるけど。それかリースとかに頼むか?」
「……ううん。みんなには心配させたくない。だから、ヘンなとこ触らないでよ」
「信用しろ。つか、さすがに身動きできないメサイアにそんなことせんって。んなことしたら、サイテーすぎるだろう」
コクっと弱弱しく頷くメサイア。
まさかの俺がメサイアの体を丁寧に拭いたり、着替えさせたりして……しかも、自分の部屋に連れ帰ることになるとはな。
詳しい事を聞きたいところだ。
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