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【コミカライズ】全自動攻撃【オート】スキルで俺だけ超速レベルアップ~女神が導く怠惰な転生者のサクッと異世界攻略~  作者: 桜井正宗
第一章 救世主

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第15話 氷の騎士 - 令嬢は花婿募集中 -

 昨晩は初めてベッドの上で寝た。

 しかも、女の子たちに(かこ)まれての。

 広いダブルベッドとはいえ、図体(ずうたい)の大きい俺がど真ん中に介入となると中々狭くなる。今までは三人で占領(せんりょう)していたんだ。それが俺含めて四人ともなると限界に近い。


 それでもやっと許されたので、お言葉に甘えることにした。

 最初は天国だった。

 イイ匂いしたり、密着したりで……そりゃもう、興奮して寝られないほどに。噴き出そうな鼻血にも耐えた。だが、そう……それは最初だけ(・・・・)だった。


 気づいたら、俺は()に逆戻り。


 ここ数カ月一緒に生活して分かっていたが……リースの寝相(ねぞう)が凄まじく悪い。

 こうなる以前から、毎日のように俺の床ベッドに転がりこんでいたり、台所(シンク)に頭を突っ込んでいたり、外で半裸で寝ていたこともあった。

 もしや……とは、思ったがこんなに寝相(ねぞう)が悪いとはな!

 しかも、寝相攻撃がなぜか俺だけに命中する始末。


 そういうワケで、俺は蹴飛(けと)ばされて、床へ逆戻りしたワケだ。


「うぅ……。ごめんなさいです、サトルさん」

「いや、謝らなくていいよ、リース。キミの事はよく理解しているつもりだ」

「はぅ……」


 こんな可愛いエルフでも、欠点のひとつやふたつあるものだな。

 天は二物を与えず、だな。


「兄様~、お紅茶ですよー。あとこちらは朝食です」

「おう、ありがとな」


 フォルからタマゴサンドをもらい、のんびり朝を迎えた。

 そういえば、メサイアの姿がないな。散歩か?

 なんて、チラチラ目線を泳がしていると。


「メサイアさんならお風呂ですよ~」


 と、リースが教えてくれた。

 なんだ朝風呂か。道理で姿を見かけないワケだ。


 ……だったらいいや。


 『千里眼』(クレアボイヤンス)で覗いてもなぁ……。目玉が出てバレるし。それに、前に助けてもらった借りもあるし。うん。止めておこう。



「ああ、そうだ。フォル、頼みたい事があるんだけど、いいかな」

「兄様の依頼とあらば断るワケには参りません。いいですよ。なんでも、おっしゃってください」


 頼られたのが嬉しかったのか、祈るポーズでズイっと身を寄せてくるフォル。近いなぁもう。この、傷ひとつないツヤツヤの肌は、どんな感触なのかちょっと指で突いてみたいものだね。


「頼みなんだけど、ポテチップスを作って欲しいんだ」

「……ぽてちっぷす? って、なんです?」


 さすがに、この異世界には存在しないのか。


「えっと、じゃがいもを薄切り(スライス)したお菓子なんだけどね。油と塩があれば作れる。つっても……フォルの【料理スキル】あれば何とかなるかもな?」

「それなら簡単そうですね! 分かりましたよ、兄様。望みのモノを作って差し上げますよ~。三分少々お待ち戴ければ直ぐ完成するかと」


 たった三分か。まるでカップラーメンだな。

 めちゃくちゃ早い。期待して待っておこう。



 ◆



 ポテチップスの完成を待っていると、メサイアが風呂から上がってきた。珍しく髪形を変えて。

 会ってからずっとロングだったが、今日は『ツーサイドアップ』にしている。なんだか新鮮っていうか……俺はこっちの方が好きかもしれない。


「おはよ、メサイア」

「あ、サトル。起きたのね。なによ、私の顔見つめちゃって。顔に何か付いてる?」


「髪だよ髪」


「うん? 神? 私は女神だけど」

「お前わざとだろ!?」


 おのれ……メサイア。

 俺が絶対その髪型を見ると知って、わざとからかってるなぁ……。


「わぁ~、メサイアさんその髪、とてもカワイイのですぅ~」


 リースが羨望(せんぼう)の眼差しで、メサイアのツーサイドアップを眺めている。そういえば、リースは金髪ゆるふわミディアムヘア。あのパーマもポイント激高である。キミは、そのままでいいぞ。


「そ、そお? 実は、結構前はこの髪型だったの。でも、リースだってこんなに(つや)があって、枝毛一本ない綺麗(キレイ)な金の髪だし、羨ましいわぁ」

「そんなコトないのですよぉ~…」


 メサイアがリースのふわふわの金の髪に触れていた。

 ……ふぅむ、これはこれで。



「できましたー!!」



 フォルが叫んだ。


 ――お!

 どうやら、ポテチップスが完成したようだ。

 そういえば、さっきから香ばしいイイ匂いがしていたんだよなぁ。


「お疲れ、フォル。じゃ~さっそくポテチップスを~……」



 戴こうかと思ったのだが――

 突然、窓ガラスが全部割れやがった!!



「うおッ!? なんだ!? みんな大丈夫か?」

「一体なんなのよ~…」

「び、びっくりしたのです……うぅ、さむぃ」

「敵襲ですか!?」


 メサイア、リース、フォル……みんなケガはない。ないが、窓の外から冷気が入り込んでいた。おかしい。さっきまでポカポカするくらい暖かかった。なのに、この冬のような寒さ。


 季節は冬ではないはずだ。急にこんなに寒くなるか!?



「外に何が……」


 外の様子を(うかが)おうとすると、


「中にいるのでしょう。『炎の騎士』を倒したとかいう男が。さっさと出てきた方が身のためです。この小屋もろとも破壊してもいいのですよ」


 (リン)とした女の声が響き渡った。


 『炎の騎士』……それは俺が倒したが、なんだ、またヤツが来たのか?

 まあいい、小屋を破壊されてはたまらん。かったるいが、ここは素直に外へ。



 ◆



 外に出ると、青髪の美しい女性がいた。

 鎧とか重苦しいものは、一切身に付けておらず、青色のドレスに身に(まと)っていた。なんか華やかだ。

 そんな騎士というよりかは、どこかの令嬢って感じの女性が、俺に狙いを定めていた。

 冷たい眼差し。その瞳の奥は氷のように冷たい。そう感じた。


 なんでそんな目で俺を見るかなぁ……。


 意外なのは、前と違って護衛はいなかった。

 今回は単騎。たったひとり。しかも、かなりの美貌(びぼう)の持ち主ときたもんだ。画に描いたような美人だな。深窓の令嬢って感じだ。


 美人なのは確かだが、あの隙のない立ち振る舞い――騎士で間違いないだろう。でも、やっぱり騎士ってかどっかの『令嬢』っぽいような。


「なんだ、あんた。この前の騎士連中にいたヤツか? 悪いが、俺はこれからポテチップスの試食会があるんだ。邪魔しないでくれ」

「…………」


 青い女騎士は、俺の言葉を返すワケでもなく、メサイアをチラッと見ていた。


「……ッ」


 一方のメサイアは顔を()らし、居心地悪そうだった。……なんだ、知り合いなのか?


「やはり……。おられたのですね。これで『炎の騎士』が呆気なく倒された理由に合点がいきました。――そこのお兄さん。私は、氷の騎士『チャルチ・ウィト・リクエ』と申します。長ったらしいので……『チャルチ』と親しみを()めて呼んでいただけると喜びます」


「そうか、じゃあな。さっさとお帰りください」


 俺はポテチップス食いたいんだよぉ!!


「そうはいきません。新参とはいえ、炎の騎士……『グレン・アーカム』を倒した。それを看過(かんか)できませんから」


 腰にある細い剣――『レイピア』を(かろ)やかに抜き、構えるチャルチとかいう女騎士。コイツもやる気か!


「そこのダンディなお兄さん。剣を交える前に、貴殿の名を教えて戴けませんか」


 ダ、ダンディって。そんな歳でもないんだが、そう言われると悪い気はしないけどな。


「俺は剣を交えるつもりはないよ。つーか、剣ないし。……まあいい、俺は『サトル』だ。これでいいか」


「サトル……。そうですか、サトル……とても良い名です。それに凄くタイプ……。振られること101回……ようやく理想の男性に出会えました! 我が花婿(はなむこ)に迎え入れたい! 真剣に結婚を申し込みますッ!」


 ……は?



「なんだって……?」

「貴殿をいただくと言った!!」



 なんでそうなるぅ!?

 まさかの求婚! 初対面でいきなり! 意味が分からん。なんでそうなる。誰が教えてくれ!


「お、おい。メサイア、あのチャルチって女騎士ちょっとおかしいぞ」

「そうみたいね。でもさ、サトル、あんたのことを気に入ったらしいわ。花婿になってあげれば?」

「なるかッ!!」


 俺がツッコむと、背後からフォルがずいっと現れた。


「花婿になんてさせません!! むしろ、わたくしが兄様を貰います! 毎日、マッサージしてあげるんです! (やしな)ってあげるんです!!」


 更に続いてリースも。


「ダ、ダメですぅ! サトルさんは将来、あたしの旦那さんになるのですからぁ! ね、サトルさん! 赤ちゃん何人欲しいですか!?」


 リースも……って、えぇ!?

 さりげなく告白された!?


 ああ~もう、あの女騎士のせいで……しっちゃかめっちゃか、無茶苦茶(ムチャクチャ)だー!!


「おい、女騎士。確かに、あんたは美人で魅力的だ。けどな、悪いが俺にはすでに女神とエルフと聖女がいる。こいつらとはもう随分と長い付き合いだ。案外、可愛い寝顔の女神とか、寝相が悪いエルフとか、夜な夜なつまみ食いしている聖女やらいるからな。それで充分、毎日が楽しいんだ。しかもな、こう苦楽と共にしていると、彼女らのスリーサイズなんてのも分かってきた。いいか、よく聞け。メサイアは上から――ぐぼぉあぁえぇえっぅん!?」


 スリーサイズを言おうとしたら、メサイアから足を思いっきりまれた。な、なんて勢いで踏みやがる……。骨折するだろうが……!



「……と、まぁ俺は、今の生活に満足してるんでな。分かってくれ」

「分かりません……」

「おい、人の話をちゃんと聞いていたか!?」

「それでは……真実(・・)を話すしかないようですね」


 女騎士チャルチは、左腕をゆっくり上げ――そいつを()した。


 その方向を見ると――メサイア?

 メサイアが……どうしたっていうんだ!?

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