第129話 一攫千金のモンスターレース
聖地・トリスタンの中でも一、二を争う超高級ホテル『タントリス』にメサイアたちはいた。部屋はやたら広く、数十人でパーティが開催できるほどだ。
……って、まて!!
超高級ホテルぅ!?
「そりゃ、金が足りないワケだよ。一泊100万プルだぞ! アホか!? よりによって、こんな豪勢なホテルにする必要はなかったろうに……」
メサイアたちは委縮して、申し訳なさそうにしていた。
「だ、だって他に空いている宿がなかったんだもの~」
「だからってなぁ……。まあいい、俺が全額払ってやる。100万プルだよな」
「いやぁ~、それが……」
ベルもまた嫌な汗を滝のように垂らしていた。
なんだ、まだ何かあるのか……(泣)
「高級なお酒も開けまくっちゃって。おかげでとんでもない金額に……」
「は? お酒?」
伝票を手渡される。
その金額を見て俺は絶句した。
……『500万プル』。
「どうしたら、こんな金額になっちまうんだよォ!?」
くぅー…。今俺の財政状況は逼迫している。あんまり金がないんだぞ。まいったなぁ。この前、アヴァロンでベルのために1億プル使っちゃったし……俺の手持ちは――。
「……あ、やべ」
「ど、どうしたのですか、サトルさん……」
リースが顔を青くし、震え始めた。
「ちょ、ちょっとそんなこの世の終わりみたいな顔しないでよ、冗談でしょ……サトル」
メサイアは超引いていた。
「ははは……やだなぁ、理くん。そういう悪ふざけは好きじゃないなあ……」
逃げ腰のベル。逃がすかこの酒仙め。
「兄様まさか……」
目を皿にするフォル。
えっと……。
「お客さーん。もうチェックアウトのお時間です~。ご精算を」
ホテルのスタッフがやって来た。
…………。
まっずーーーーーーーーーーーい!!!
◆
このままでは支払いが出来ない……。
昨日の森での収集品を全て売ったとしても、500万プルには全く届かない。
絶体絶命のピンチ。どうする!?
闇金から借りて……いや、そりゃマズイ。カジノはなさそうだ。他に、他に手段は……。
焦っていると、ベルが妙案を出してくれた。
「理くん。こういうのはどうかな。このホテルのオーナーに話して、『エクストラチケット』を担保にして、ひとまずお金を集めてくるの。どう?」
「おお、名案! けど、それなら『エクストラチケット』を売って、支払いに充てるのは?」
「残念だけれど、『エクストラチケット』の売買は禁止されているよ。見つかったら、裁判なしの火刑だね」
裁判なしかよ! 厳しすぎるだろう!
しかも、火刑って……火あぶりかよ。おっかな!
なるほど、それで担保か。でもそれはいいのか?
……ええい、仕方ない、そのプランでいくか。
俺たちは、ホテルのオーナーに直接交渉しに行くことにした。
◆
「……はあ、この『エクストラチケット』を担保に、500万プルを集めてくると。それは構わないのですが――」
「い、いいんですか!? イゾルデさん」
ホテルオーナー『イゾルデ』は女性で、どこか気品があった。眼鏡も掛けているし、なんだか大人の女性って感じだ。
「はい。ですが、チケットは本来は売買禁止になっているほどで、取引にするには危険な代物です。ですから、一名……そうですね、そこの聖女様をお借りしたいのです」
……フォルを?
う、うーん……。
フォルは運が良いから、居た方が良い気がするんだけどな。
けど、迷っている暇はない――か。
「分かりました……。フォルいいよな」
「はい。致し方ありません。兄様にご迷惑をお掛けしたくありませんから」
「すまん……。しばらくはイゾルデ氏の指示に従って欲しい」
俺は、エクストラチケットを担保+フォルを置いていくことにした。
――さて、これからどうしたものか。
「モンスターの収集品を売りまくって……残り400万プルか。まだまだあるぞ。しかも、今日中には何とかしないと……」
焦っていると、メサイアが俺の肩を叩いた。
「……ん? なんだ、俺は今、あまりない脳をフル回転させている最中でな……」
「サトル、ねえ、あれなんてどう?」
「あれェ?」
メサイアの指さす方向には【一攫千金のモンスターレース】とあった。
一攫千金……? モンスターレース?
まさか!!
「なるほど、これか!!」
これしかない……!
手持ち100万プルをこのレースに賭けるしか……!!!
◆
俺たちは急いで『モンスターレース』会場へ向かった。
幸い、レースはまだ開催中。ピークに達しているのか、白熱していた。
「おおおおおおお!!」「いっけえええええ!!!」「頼む、頼むうううう!!」「一着こい! 一着!!!」「神よォ!!」
「おお……これがモンスターレース。なんて活気だ」
確かに、モンスターたちが直線コースを必死に走っていた。
なるほどな、レースの勝敗は至って簡単。『単勝』『複勝』で賭けたモンスターが一着二着でこれば当たりってとこか。
もちろん、配当は『単勝』の方が高い。ほうほう。
「よし……みんな。100万を元手に増やすぞ……!」
ざわ……。ざわざわ……!!!
みんなゴクリと息を飲んだ。
「で、でも……フォルちゃんがいないけど、大丈夫なの?」
そう、怖気づくベル。
確かに、それに関してはかなりの痛手だ。だが、もうフォルを頼ろうにも時間がない。ここは、俺たちの運を信じるしかないのだ。
「やるしかない……。リース、次のレースはどのモンスターが来そうだ?」
俺は、リースに情報収集に回ってもらっていた。
「え、えーっとですね。一番人気が『スプリンターラビット』、二番人気が『エンシェントタートル』のようです。その他のモンスターは足がそれほど速くないようですよ」
「おお、そうか! 一番人気は名前からして素早そうだな。しかも、ウサギだし……ん? まてよ、これって……『ウサギとカメ』ってヤツか!?」
確かあの話は……!
<ピコーン!!>
勝った……この勝負、勝ったぞ!!
「カメだ……」
「え?」
リースがぽかんとしていた。
「……なんたる僥倖!! このレース貰ったァ!!!」
これは勝ったろ……!
オッズは5.6倍。勝てば余裕で500万に届く……!
いざ、勝負!!
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