第10話 鉄の街 - おまえの神はどこにいる -
メサイアによれば、ある街に接近しているらしい。その前で「絶対に止まるべし!」と語気強く命令された。
反抗すれば、床に敷いてある俺専用マットは、もれなく没収されるとのことなので、俺は素直に従うしかなかった。冷たい床で寝るのは辛いからな。腰も痛くなるし。
――そんなワケで、良さそうな場所で移動をストップ。小屋は、街から少し離れた林の、何もない場所に降り立った。
「オッサン収納完了っと」
確かに、あのオッサン共に担がれている光景は恐ろしすぎる。それこそ、最終決戦のラスボスと勘違いされてしまいそうな。そうでなくとも、だいぶイカれている。
そろそろ【移動スキル】のレベルも上げておかねば――だな。あの見た目はなんていうか……見るに忍びない。
「さてさて、あの中々に広い街は、なんて街なんだ~?」
「数日前にゲットしたマップによれば『鉄の街ジャービス』みたいね。主に鉄、石炭や鉱石の取引が盛んみたい。たくさんではないけれど、そこそこ木材もあるみたいよ~」
――と、メサイアがテキパキ説明してくれた。
へえ~『鉄の街ジャービス』ね?
そっか、近くに『炭鉱ダンジョン』があったのも頷ける。この街が管理しているのかもな。
「よし。みんな気分転換に行ってみるか、街へ」
「「「お~!」」」
みんな乗り気だった。
さすがに、みんなもずっと小屋にひきこもるのに飽きたんだな。かくいう俺もちょっと別の空気を取り入れたかった。
あと【木材】が欲しかった!
目標は、俺のマイルームを作ること!
やっぱり自分の、自分だけの部屋が欲しい。毎日、可愛い女の子三人と一緒の部屋っていうのも悪くはない。いや、むしろ天国なんだけど……目のやり場に困るシーンが多々ある。
例えば、着替え。
特に、リースは気にせず脱ぐ。脱ぎまくる。風呂を出たあとはシャツ一枚姿だったり、バスタオルだけの時さえあった。少しは気にして欲しいものだが……!
まあ、その度に俺は小屋の外に追い出されるワケなんだけど。そんなソワソワ落ち着かない時間も多く……そうなると、プライベート空間も欲しいものだ。
マイルームが成就されるまでは、ダルいけど……。かったるいけど、頑張るしかない。でも、目標があるコトは良いコトだ!
◆
街の中は寂れていた。
閑散としすぎて人気がない。チラホラいる程度で、活気がほとんどない。なんとか見つけた住人に話を聞くと、こういった事情があった。
「つい最近だねぇ~。炭鉱が廃鉱になっちまってね。失業者で溢れ返っているのさ。おかげで街は御覧の通りの有様でね」
炭鉱で働いていた爺さんがそう悲し気に、溜息を洩らしながら話した。その余波で街は一気に不景気になってしまったと。
しかも、給料も未払いだという。
「そりゃ、お気の毒に……」
憐れむことしか出来なかった。
更に街を歩くと、突然、変な髪形をした……変なオッサンに絡まれた。
「おまえの神は……どこにいる!!」
とまぁ、凄まれた。顔が近い。何なんだこのオッサン。
「さあ、問いに答えよ……! そこのギリギリ中年!」
ギリギリ中年ってなんだよ。まあ中年っちゃ中年かもしれんが、一応俺は『25歳』だ! ギリギリ青年だ! ちなみに、心は少年だ。そりゃいい。このオッサンの問いに、俺はこう答えた。
「知るかッ!!」
「そうかならいい……」
「いいのかよ!!」
意味分からん。
オッサンは次に、俺の隣にいるフォルに迫っていた。さすがに引き気味だったものの、フォルも負けじと、何故か俺を差し出し――
「わたくしの神はこの人です!」
とか言いやがった。
なんで俺!?
すると、オッサンは……
「このギリギリ中年が……? んっ……やや!? あ、貴女様は……! よ~~くお顔を見れば、聖女様ではありませんか!! し、失礼いたしました!!」
汗を滝のように流すと、オッサンは逃げ去った。
「……なんだったんだぁ?」
ていうか、聖女つーか、聖職者のフォルが俺を神だとか言っていいものなのか。――が、しかし、フォルは気にも留めていない。
「良かったのか、俺なんかが神で」
「なんかじゃないです。だって、わたくしに居場所をくれたではありませんか。ですから、兄様は神様も同然なんですよ。決して、間違いなんかじゃありません」
「そーゆー意味の神かよ。なんだかな」
――いや、ま、いっか。
それより、買い出しだ。
◆
炭鉱ダンジョンのボスモンスター『SHEEP-RX87-2』を倒した時に得た大金で、家具やら生活する上で便利そうなものを買い漁った。かなりの量を買った。
これで少しは便利になるかな。
そんな量の荷物持ちは、さすがにダルイので【運搬スキル】を即座に取得。それを発動した。――するとアイテムが圧縮され、ミニチュアのようなサイズに。軽量化されたので、それを適当にカバンに放り込んだ。
「すご~い! ラクチンですね♪」
リースが「すごいすごい!」とハイテンションで驚いていた。
そう感心されると、ちょっと照れるな。
「椅子はこれで人数分。大きなテーブルも買ったし、やっとまともに料理が食べられるわね。あと~…塩胡椒、キャベツに……あ、スライム人形も。あとあと、マッサージ器に~、孫の手……角スコ」
メサイアが何やらブツブツ独り言を……まて、後半色々おかしいぞ、それ。
「まてまて、そんなに色々買ったら小屋に入らんぞ」
「別にミニチュアサイズにしておけばいいじゃない? 必要に応じて大きくすればいいんだから」
「そりゃそうだけど、そうなると常時発動にしなきゃだから【オートスキル】にセットしておくか。そうすれば、ずっとミニにしておける」
「決定ね!」
俺は【オートスキル】に【運搬スキル】をセット完了した。これで解除しない限りは、ミニチュアサイズのまま。必要に応じてサイズを元に戻すことが可能だ。最初はどうかと思ったが、なんだかんだ、この【運搬スキル】は便利だなぁ。
「さあ、帰ろうか、みんな」
買い物も終わったところで、俺たちは小屋へ。
……ん、あれは?
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