三八三年 雨の三十四日
朝目が覚めたら目の前にククルがいて。
にっこり笑って、おはようって言われた。
昨日、ふたりで泣いて。心配だったから、そのままくっついて寝たんだった。
「おはようククル。ごめんね、苦しくなかった? ちゃんと寝られた?」
慌ててククルから離れると、大丈夫よと笑われる。
「安心できたわ」
そう言ってくれるククルは昨日よりちょっと落ち着いた顔をしてて。
私、役に立てたのかな。
一階に降りるとお兄ちゃんはもう座ってて。お茶も半分以上減ってるから、結構早くから待ってたんだと思う。
ククルのこと、心配なんだよね。
「ふたりともおはよう」
「お兄ちゃんおはよう」
「おはよう、テオ」
ククルの顔を見て、ちょっと安心したみたい。よかったね、お兄ちゃん。
朝食を食べてる間にお父さんもお母さんもククルの様子を見に来て。食べたらククルとお兄ちゃんは食堂に、私は宿に向かう。
今日もソージュが来てくれるから、お兄ちゃんはずっと店にいなさいって言われてた。私もいそがしくなるかもって謝られたけど、そんなの全然平気!
ククルが安心できるように、お兄ちゃんが心配しなくて済むように。こっちはしっかりやるからね!
「ククル、どんな様子?」
来るなりソージュに聞かれたから、ちょっと落ち着いてるよって答えたら、ソージュもほっとしてた。
「レムも。ちゃんと休めてる?」
「大丈夫だよ?」
ソージュは相変わらず私の心配までしてくれてた。ホント優しいよね。
今日は全然困ったこともなくて。
ソージュはしばらく来てくれるっていうから、お兄ちゃんにも店にいてもらえるね。
今日も泊まりに来てってククルに言ったんだけど、もう大丈夫って断られちゃった。
来てくれたほうが嬉しいのに。気にしてるのかな。
部屋に戻ってひとりでいても、ククルのことばっかり気になって。
ククル、大丈夫かな。
我慢してないかな。
怖がってないかな。
涙が滲んできて、余計に悲しくなる。
私が泣いたって仕方ないってわかってるんだけど。
私はククルに何かできるかな。
……何か、できたらいいな。
皆がククルを心配する中、自分に何ができるか迷い気味のレム。
ちゃんと気持ちは届いているのですが。不安は不安を呼びますよね。
本編は前を向くククルと、ロイとククルのことを考えるテオ。まだ正解には辿り着けませんでした。





