(99)芳しくない戦況
静寂に包まれるはずの夜の街。そこに響き渡る、異様な金属音。
「ぐあぁ‼」
「リーフさん‼」
右腕の肘付近を抑えている。出血も見られた。
その上、剣を落としてしまっている。
「く、くそっ、剣が、持てねえ……‼」
「リーフ、とりあえず下がって!」
「ああ、悪ぃ!」
これはまずい。
おそらくお姉ちゃんの能力も使えない。
そうなると、リーフさんのケガを治すことができない。
しかも患部は利き腕。
戦うのは厳しいか?
念のためお姉ちゃんがリーフさんのもとへ。
その間、俺、アイシャ、エリナさんで魔物を引きつける必要がある。
「アイシャ、エリナさん。俺が奴を止めておきます。その間に奴の脚を」
「かしこまりました」
「うん、任せて」
「ただ、脚を斬ったらすぐに退避で。リーフさんにケガを負わせるほどの反撃ですからね。じゃ、行きますよ!」
合図をし、俺は再び魔物の前へ。
正直、能力が使えない状態でこいつを止めておくのは厳しい。
「ほら、こっちだ‼」
斬りかかると、盾で防がれた。
怯んだ俺を刺そうと、剣で突いてきた。
これを何とか左に回避し、剣を振り上げて魔物の手首に攻撃。
だが効果は見られず、魔物が反撃に転じる。
——まずい!
今この状況で剣を振り回さられると、
せっかく背後に到着した二人が離れざるを得ない。
覚悟を決め、攻撃を剣で受けた。
「くっ、お、重い……っ!」
「ご主人様!」
そんな俺を見て、エリナさんが急接近し、左足を斬った。
さっきリーフさんの攻撃を受けた左脚は
今回で限界を迎えたようで、魔物は体勢を崩した。
腕の力も抜けている。
——今しかない……っ!
このチャンスを逃すわけにはいかない。
魔物の右肘に、全力の突きを食らわせる。
「そっちの脚も‼」
続いて接近したアイシャが、今度は右足を刺した。
これは深々と刺さり、かなりダメージを与えたようだ。
両ひざから崩れ落ちた魔物。
その隙を見逃さず、リーフさんの落とした剣を拾い——
「食らえぇ‼」
——兜の覗き穴から突き刺した。
《ニン……ゲン……‼》
崩れた姿勢のまま後ろに倒れる魔物。
その声には、人間に対するはっきりとした「怒り」が見られる。
なぜそんなにも人間を憎んでいるのだろう。
「卑怯者」とは何なのだろう。
なぜ攻撃してくるのだろう。
疑問はきりがないほど湧いてくる。
だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
一度体勢を立て直すのが先決だ。
アイシャやエリナさんと、魔物を挟んで反対側。
お姉ちゃんとリーフさんが居る方へ下がった。
「そっちはみんな無事?」
「俺たちは今のところ大丈夫です。リーフさんは?」
「変な体勢で攻撃を受けちゃったみたい。多分折れたか、よくてヒビってところかしら。能力が使えないのが厳しいわね」
「そうですか……」
「悪いな」
ケガの具合は最悪、といったところだろうか。
お姉ちゃんの能力も封じられている以上、戦闘に復帰するのは無理だろう。




