(98)封じられた戦術
「……えっ?」
「どうしたの?」
「……どうしてか、剣に熱を与えられないんです……。もう一度やってみます」
そういって、さっきと同じ行動を繰り返す。
しかし、ついに彼女の剣が光を帯びることは無かった。
「すみません、出来そうにないです……」
「体の不調とかありませんか?」
「ええ。それは大丈夫なのですが……。溜めておいた熱が足りなかったのでしょうか……?お役に立てず申し訳ございません」
——こうしている間にも、魔物はじりじりと近付いてきている。
「このままじゃ防戦一方になっちまうぞ」
「それは避けたいところね」
「一つ、可能性が——っ!」
アイシャが言いかけたところで、魔物の攻撃が横槍を入れる。
アイシャが言おうとしたのは、おそらく鎧の弱点だ。
どんなに堅く、どんなに重厚な鎧でも、防御力の低い場所が必ず存在する。
「関節を狙いましょう!」
この魔物を倒す近道となりうる、関節への攻撃。
膝や肘を曲げられないと困る故、
関節部分は柔らかい材質でできているはず。
そこを狙えば攻撃は通る。
「任せろ!」
後ろに回り込んで膝裏を狙う。
それはリーフさんに任せよう。
「足止めは任せてください!」
コイツが相手でも、反射を使えば剣を止めるくらいはできるだろう。
「でやあっ‼」
魔物の注意を引くため、わざと正面から攻撃を仕掛けた。
案の定、俺にヘイトが向く。
魔物は剣を振り上げ、そして、振り下ろす。
それを剣で受けて能力を——
「な、なにっ⁈」
いつも通りに能力を使ったはずだが、なぜか全ての力を受けてしまった。
必死に抑えながら能力の発動を何度も試みたが、効果がない。
インゼル島の魔物のように押しきられているわけではない。
発動しないんだ。
「このままじゃ……」
剣がしなっているのが分かる。
「今行く‼」
リーフさんが瞬間移動で魔物の背後に——
「くっ、何でだ⁈ 瞬間移動できない!」
仕方ないと、リーフさんは走って魔物の背後へ。
「もらった‼」
——左膝をやられ、一瞬怯んだ。
その隙を見て魔物の攻撃を流し、退避。
腕がしびれている。
自由になった魔物の剣は、今度はリーフさんに向く。
瞬間移動を封じられ、戦いにくそうだ。
俺も反射が使えず困っているし、エリナさんの能力も発動しなかった。
これはもしや——
「はあ……こいつはキツいな……」
「ユウ、腕大丈夫? 反射しなかったの?」
「アイシャ、ちょっと霊視を使ってみてくれないか?」
「え? うん、分かった」
俺に剣を預け、胸の前で合掌。
いつもならば、間もなく青白い光が彼女を包む。
だが——
「あれ? 出来ない」
「やっぱりそうか」
「もしかして、あの魔法陣って」
「ああ。確証はないけど。多分そうだな」
最初に俺たち全員を包んだ魔法陣。
あれが、能力を使えなくなる現象と関係しそうだ。
魔物にも能力があるのだろうか。




