(97)怒れる騎士
実家の部屋に戻って横になったが、結局休むことは出来なかった。
もう時間だ。
装備を着けて「予言」に向かう。
リーフさんと共に実家から出ると、女性陣も集合していた。
「さあ、行くわよ」
「最後ですね」
「ああ」
「何か、変わるんですかね」
「……」
何が起こるのかは分からない。
仮に「運命」と言う奴が存在していたとしても
基本的にはそれを予め知ることなど出来ない。
大事なことに気付くのは、いつだって何かが起きてからだ。
座標に到着。住宅地からほど近い。
お姉ちゃんが憲兵に話し、住民は避難指示がない限り
家から出ないように言ってもらったらしい。
そうならないようにするのが俺たちの役割なのだが、念には念を、ってことで。
「もう間もなくです」
剣を抜き、構える。最後だというのに、
相も変わらず魔物が出るときに感じる圧には慣れないな。
空間の歪みから無気味な色の気体が流れ出る。黒というのか、紫というのか。
それでいて黄色も混じった色。それがやがて溶岩のようなドロドロの液体となり地面へ。
歪みが消えると、魔物を模っていく。
これはもう見慣れたものだが、やはり今回もヒト型らしい。
重厚な鎧に身を包み、大盾と大剣を装備している。
遠目からでは人間の騎士と区別がつかないかもしれない。
体格も、ちょっと大きい人くらいだ。
これまでの「予言」とは一味違う
なんと言うのだろう……「強そう」な、魔王の一番の部下という感じがある。
《ニンゲン……。コンドコソ……ワレワレガ……コウカツナ……キサマラヲ……ホロボス……!》
インゼル島の奴らと言い、こいつと言い、やはり人間を「卑怯者」と認識している様子だ。
「はいはい、卑怯者はもう分かったわ。各自散開!」
「「「「了解‼」」」」
そいつを囲むように散り、様子を見る。
魔物はキョロキョロと周りを見回している。
《……ッ‼》
一瞬力を込めたそいつは、肩に担いでいた大剣を地面に刺した。
直後、その地点を中心とし、巨大な魔法陣のようなものが現れた。
俺たちの立っている場所もその範囲だ。
「なんのつもりだ?」
そんな疑問を呈している一瞬の間に魔法陣は消えた。
いったい何だったんだ?
特にダメージはないし、体に違和感もない。攻撃ではなさそうだ。
「俺が行く!」
体格の大きい魔物と、真っ先に勝負に出たのはリーフさん。
だが、当然一人で勝てるような相手ではない。
俺含む四人も、距離を詰める。
あまり近寄りすぎても、瞬間移動の邪魔だ。
十メートルほどの距離まで近付いた。
「ぐっ、見た目通りガードが堅いな……!」
リーフさんの攻撃をもたやすく防ぐ盾。あれは厄介そうだ。
「俺も参戦します!」
魔物は、リーフさんの攻撃を防ぐのでいっぱいいっぱい……に見える。
走って近付き、背後から脇腹に斬りかかった。
しかし——
「か、かってぇ……!」
いとも簡単に弾かれてしまった。
体勢を立て直すと、魔物の剣が地面に対して水平に回ってくるのが見えた。
「避けて、ユウ‼」
——くそ!
アイシャの声を聞き、間一髪で屈んで回避。
空気を割く低い音が聞こえ、頭に風を感じた。
その重厚感に反し、攻撃速度はすさまじい。
一度後退し、お姉ちゃんたちのいる方へ。
「まさか、あんた達の攻撃が通らないとはね」
「ああ。押すくらいはできると思ったんだがな。」
「あの重さじゃ、俺のカウンターも効かなそうです」
「そう、厄介ね」
「ここは私にお任せを」
「エリナちゃん」
そうか。
いくら防具が堅いとはいえ、エリナさんの光剣なら貫通できる。
エリナさんは、切先を左に向け、剣身を左手でなぞる——が。




