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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【九話】欲念と自戒。
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(91)強欲・色欲の罪

 その日の晩。王都の屋敷に帰って体を休める。眠気が凄まじい。


「ねえねえ、ユウ」

「ん~?」


いつものように、眠るまでの会話。

俺はもう半分寝ているのだが……。


「うれしかったよ」

「何が?」

「水着、褒めてくれたこと」

「ああ、あれね」

「ふふっ、かわいかった?」


からかう様に訊いてくる。


「うん。かわいかったよ」


負けまいと、非常にまじめなトーンで返答。


「そ、そっか……」


暗くてアイシャの顔はよく見えない。


「どうした? 突然そんな」

「ユウは、さ」


なぜか改まった様子で。


「手、出さないのかな~って」

「……はい?」

「色々攻撃してるつもりなんだけど」


服装選び。


甲板での行動。


言動。


水着。


オイル塗り。


昨日今日だけでも、思い返してみればアイシャの言う通りだな、と。


「き、効かねえな……」

「え~、じゃあもっと攻めちゃおうかな」

「嘘ですごめんなさい」


本人には言わないが、俺とて必死に耐えている。


「現状維持」のために。


「ていうか、そう言うアイシャこそ、結局は挑発止まりじゃんか」

「それは……そうだけど」

「……今はまだ、それでいいか」

「……うん」


——俺たちの関係は「恋人」ではない……はずだ。

もしそうなら、とっくの昔に……その……ね。

それを分かっているのは、俺だけじゃない。

だからアイシャも、色々とやってくるが、終着点まではいかない。


……そこに、二人の共通認識があるからだ。

俺たちはまだ「幼馴染」でいる。その理由は過去にある。



 かつて、俺たち二人の前から姿を消した少女、サラ。

彼女の死については、未だに何もわからない。

その一件に片が付くまで、俺とアイシャは「幼馴染」を続ける。

何も言わずとも、お互いがそれを理解していた。



 かといって、アイシャに対して「欲」が無いと言えば嘘になる。

あの時。攫われたアイシャを助けに行った時だ。結局俺には何もできなかったが……。


あの時の俺の行動原理は何だったのだろう。

当時は、アイシャを救うという目的のためだと思っていた。


正義の味方ぶっていたんだ。


だけど時間が経った今、冷静に考えてみるとそれは違うと気付かされる。


あの時俺はアイシャを奪われた「怒り」と彼女を誰にも渡したくない、

俺の傍にいて欲しいというアイシャに対する「欲」で動いていたんだ。


つまり、俺とザックの争いに「正義 対 悪」という構図は存在せず。

ただ単に「アイシャを自分のものにしたい」という欲と

「誰にもアイシャを渡したくない」という欲の争いだったんだ。


 もちろん、ザックの行動を正当化するつもりはないし

未だに許せないことの一つではある。

だけど、それを理由に、自分を「正義」だとは言えない。そう思った。



 人間をはじめとした生物たちは、常日頃から「欲」と向き合って生きている。

自制心をもって戦っている。俺にも、溢れんばかりの欲がある。


だが、それをも押さえつけるほどの力を持った

「幼馴染を維持」という盾でもって、耐え忍ぶ。


恐るべき威力を持った攻撃に、今日も明日も明後日も。


その時が来るまで俺は、自戒を続けていくのだろう。




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