(90)目には目を、連携には連携を
——また再生、合流を繰り返した。
「クソっ……面倒な奴らだ……」
「倒しても倒しても再生……。確かに面倒ね」
何度も言うが、この魔物が一匹であれば、何の問題もない。
最初に、俺とリーフさんだけでも黒い方を倒したわけだし。
エリナさんのように、防御を貫通できれば一人でも勝てる。
だが問題は、合流した二匹の連携攻撃と、相方を蘇生させる能力だ。
かれこれ各四、五回はコアを破壊している。それでも、討伐には至っていない。
「やっぱり、同時に倒すしかなさそうですね」
「ええ。ですが、そのようなチャンスは滅多に……」
とにかく蘇生が厄介で、交戦中だろうとお構いなしに離脱される。
しかも蘇生は瞬時に行われ、追いついた頃には全快している。
「チャンスが無いなら——」
エリナさんの嘆きを聞き、口を開いたのはアイシャだった。
「——作ればいいんですよ」
「確かにその通りですけど……」
「ね、ユウ」
ね、と言いながら俺の方を見るアイシャ。
自信満々。
そんな表情をしている。
「アイシャ」
数秒その顔を見て、言いたいことを理解した。
そうだったな。相手の連携が厄介ならば、俺たちも「厄介」な連携をすればいい。
同じように攻撃し、同じように怯ませ、同時に動けなくし、同時にコアを破壊する。
そんな夢のような事ができるだろうか。
「けどアイシャ、それには敵の動きが同時に止まる必要が……」
俺たちがいくら同じ行動をしても、相手の動きが
違っていると初動からバラバラになってしまう。
「それでしたら、私にお任せください。私の能力を用いれば、遠距離からでも一瞬動きを止めることは可能です」
溜めた熱量を操るエリナさんの能力。
両手から熱戦のように一瞬だけ放ち、
魔物の頭を撃ち抜けば同時に動きを止められるかもしれない。
「でもエリナさん、それって……」
「貴女の消耗が激しいんじゃないですか?」
「ふふん、そこは私の出番よね」
「そっか、お姉ちゃんが回復してあげれば、エリナさんの体力は大丈夫なんだ」
「お姉ちゃん先輩にはすみませんが……それでお願いします」
「もちろん、お姉ちゃんにお任せあれ」
「じゃあ俺はお前たちを魔物の所まで送る」
「それなら一瞬で詰められますね」
動きの停止。
消耗者の回復。
移動時間の大幅削減。
そして——
「あとは、私とユウの連携だね」
「……ああ、任せろ」
「ちゃんとついて来てよね~」
「アイシャこそ。遅れるなよ?」
「へぇ、言ってくれるじゃん」
連携は、連携をもって制す。まさにそんな作戦だ。
魔特班五人による総攻撃。それをあの二匹に叩き込み、勝利する。
活路は見えた。
あとは信じるだけだ。
「では、行きますよ!」
エリナさんは残った熱量を限界まで絞り出し、
二匹の魔物に向かって両手から放った。
見事な狙撃能力で、イチャつく黒色と桃色の顔面を捉えた。
一気に消耗したエリナさんが膝をつく。お姉ちゃんが彼女を介抱。
——やはり、二匹とも剣に変異していない左手で撃たれた顔をおさえた。
「よし、こっちも行くぞ!」
「はい!」
「お願いします!」
瞬間移動で急接近。
——アイシャと俺の連携。
それを意図して練習したことは一度もない。発想が無かったのではない。
「必要ない」と判断したのだ。「連携」が、ではなく「練習」が、だ。
俺はアイシャの動きをよく見ているし、アイシャは俺の動きをよく見ている。
故に、わざわざ練習するまでもなく、互いがどう動くのかが分かる。
アイシャならこうする。
ユウならこうする。
そう言った、もはや「決めつけ」レベルでの判断。
ただし、そこには絶対的な信頼があった。
——だからこそ。
——俺とアイシャは今。
——こうして、二つのコアを同時に、一刹那の差もなく破壊したのだ。
「終わったな」
「うん。信じてたよ」
「俺もさ」
魔物の身体は、無論二体とも、淡い光と共に消えていった。




