(82)我利我利亡者共
指定されていた実習棟の裏に行くと、男が立っていた。
「お、来た来た。随分早かったな」
「アイシャを返せ、クソ野郎」
「ははは、返せって言われて返すと思うか?」
——ヘラヘラしやがって
「アイシャは今、ある場所に監禁してある。警備をつけてな」
「警備? へえ、お前みたいな奴に友達なんて居たんだな?」
「黙れ! そんなことを言ってられるのも今のうちだぞ。お前は今からいたぶられるんだ。俺たちにな!」
「俺たち?」
「そうだよ、へへへっ。おい、頼むぜ!」
ザックが合図すると、どこからかガタイのいい四人の男が現れた。
「お前ら……仲間だったのか!」
見覚えのある顔。
それは、昨日食堂で声をかけてきた連中だった。
「仲間ってわけじゃねえけどよ」
「お前を痛めつけりゃ、俺たちもアイシャとやらしてくれるって言うもんだからさ」
——拳に力が入る。
「お前に恨みはねえけど……」
——生暖かい感覚が両手を支配する。
「大人しくやられとけぇ‼」
——怒りが頂点に達した。
ザックの余りに卑劣な行為に。
アイシャを奪われたことに……‼
——どれほどの時間が経ったのかわからない。
いくら戦闘に使える能力があっても。サル型魔物くらい余裕でも。
今回は分が悪かった。相手は道具を持った五人。その内四人は身長も体重も俺より上だ。
——その四人を黙らせるので精いっぱいだった。
「はぁ……はぁ……残りはお前だけだぞ……ザック‼」
「く、くそ! 訳に、た、立たない奴らだ!」
あまり慣れない対人格闘の末、残ったのは主犯だけ。
一番許せないクソ野郎だ。だが、悔しいことに……
「く……っ‼」
「は、ははは、はははははっ‼おい、お前。立つのがやっとみたいだな?」
「お前くらい……っ‼」
「こ、これ見ても、そんなこと言えるか?」
「なっ⁈」
ザックは短剣を取り出し、俺に見せびらかしてきた。
「ほら、ほらほら、怖いか? 今から俺が貰ってやるぞ、お前の何もかもっ‼」
こんな状態では勝てない。それは明らかだ。
もう足に力が入らず、倒れてしまった。
「く、くそ……っ‼」
「お前をいたぶるのはもういい。ここでお前を殺して、アイシャを縛り付けて、全身を……ふふふっ、ははははは‼」
——涙があふれた。
——こんなところで
——こんな奴に
——終わらせられるのか?
——なんで、いつも俺は。
——なんで、何もできないんだ。
——なんで……立てないんだ!




