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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【九話】欲念と自戒。
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(78)生き物の行動原理

 生き物には、欲というものがある。

「寝たい」とか、「食べたい」とか。

そう言う、生物が生きるために持ち合わせる、あまり我慢すべきではない欲。


 対して、「奪いたい」とか、「殺したい」とか

お世辞にも善とは言えない、抑えた方がいい欲。


 そんな欲を叶えるか抑えるかの選択を

我々は生きる中で絶えずし続けている。


 前者の欲に対して「あまり我慢すべきではない」といったが

それはあくまで生きるためであって、それらの欲に忠実すぎるのも良くない。


それは過去のオレが証明している。


どうしても、自分を追い込みすぎない程度の自粛は必要になってくる。


 後者に関しては言うまでもない。

奪ってはいけないし、殺してはいけない。道徳的にも、法的にもだ。


だが、そうと分かっていても。

欲が増大し、自制する力を上回ってしまったとき、人は罪を犯す。


奪う。


脅す。


殺す。


攫う。


——何年か前、そうなった人間が起こしたことに巻き込まれた経験がある。



 騎士校に入って暫く経った、もうじき冬を迎えようという時期。

俺とアイシャはその成績から、大げさなうわさで語られている。


それともう一つ。


「おしどり夫婦」なんて言われ方もされている。


嫌というわけじゃないが、俺たちは未だ「幼馴染」を続けている……つもりだ。


「ふあ~眠い」


俺の右側を歩きながら、大あくびをするアイシャ。

右手で口元を隠している。成長したな。


「まだ昼休みだぞ、耐えろ耐えろ」


午前中の講義を凌いだ俺たちは、昼食をとるために食堂へ向かっている。

騎士校の校舎は古い木造で、今歩いている廊下も、いちいち軋む音がする。

薄汚れたガラスから差し込む光は、アイシャが着けた桃色の髪飾りを光らせる。


「ユウがおんぶしてくれたら寝れるのに」

「こんな所でできるかい」

「えー」

「ほれ、もうすぐ着くぞ」


着く、といっても校舎を一つまたぐだけ。

この立地は悪意を感じざるを得ない。

匂いテロがすさまじいからだ。

講義中でもお構いなしに食欲を刺激してくる。


食堂舎の扉を開くと、すでにたくさんの人でごった返している。


「席は……ちょっとのん気すぎたか」


ここの席取りはまさに戦争だ。

近い教室で講義があった人間に軍配が上がるのは言うまでもない。


「こりゃ今日も外行きだな」

「そうでもなさそうだよ」

「ん?」


混雑した食堂の奥の方に手を振るアイシャ。

その方向をよく見ると、友人のクリスとミラが席について食事をしていた。

人ごみをかき分けて二人のいるところへ向かった。


「よう、おしどり夫婦。」

「おう、助かったぜおしどり夫婦」

「「誰が夫婦だ‼」」

「お似合いだと思うけどな」

「クリスと夫婦なんて嫌よ。それならユウとがいい!」

「お、おう」

「そうそう。ミラと夫婦になったらDV祭りだぜ」

「あんたが悪いんでしょ?」

「……この調子さ。俺はアイシャとがいいなあ」

「やだ」

「冗談だよ、傷つくな……」


クリスたちのおかげで席は確保できた。


 次に待つ地獄は、食券を買う長蛇の列に参加すること。

この調子だと二十分はかかりそうだな……。





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