(70)余計なことは言わない
戦闘があった地点から二十分ほど歩き、やっと墓地に到着。
「着きましたね。我々は周辺を警戒しますので、安心して済ませてください」
「ありがとう。なるべく急ぐよ」
と、祖父は俺の方を見て言う。
「ユウ。お前は一緒に来てくれんか?」
「俺も?」
「ああ。将来のため、墓のことは知っていてほしい」
「……うん、分かった」
周辺の警備を二人に任せ、祖父と共に墓石へ。
この山にうちの墓があるというのは聞いていたが
実際に墓参りに来たことはなかった。
行こうとしても、祖父は「一人で行く」と言ってきかなかった。
さっきの話から察するに、父さんが一緒に来るのが良くないのかもしれない。
その理由は知らないが……。
「さあ、着いたぞ」
「うわ、結構でっかいんだね」
想像していたより大きめの墓石。
周辺のものと比べても、ひときわ目立つ。
「まずは……そうだな、墓石を掃除しようか。コケまみれだ」
「了解」
もう数年来てないって言ってたっけ。
確かに、遠目でもわかるほどコケがむしている。
金属のヘラみたいなものでそれを剥がし、そのあと濡れた雑巾で綺麗に拭く。
「あ、高いところは俺がやるよ。危ないし」
「そうかい。助かるよ」
やっているうちに、墓石掃除にのめり込んでいることに気づいた。
部屋の掃除なんかでもこの現象が発生する。
普段は最低限の片付けしかしないくせに
一回掃除を始めると、本格的に綺麗にし始める。
おかげで、俺の部屋は定期的に快適空間になる。
まあそれは良いとして。
「さあ、綺麗になったな」
「見違えたね」
「ああ。あとは花だな」
祖父は荷物から花束を取り出し、墓石の左右にお供え。
「あとは手を合わせて終わり?」
「いや、もう一工程ある」
「……?」
これ以上何をするんだろう……?
見ていると、祖父は墓石の下の……引き出しのような所を開け
首にかけていたカギを使った。すると、床に一部が観音扉のように開いた。
何が起きるのかと注目していると、その扉の中から小さな箱を取り出した。
「ユウ。これは大切なものだから、よく覚えておいてほしい」
「……分かった」
頭の中で、祖父がやった行動を何度かなぞる。
次に祖父は、懐から真紅の輝きを放つ宝玉を取り出した。
それを例の箱に入れ、元の位置に戻し、引き出しや観音扉も戻した。
……さっきの石は何なのか。
その疑問はもちろんある。だけど何だか、訊いてはいけない気がした。
だから何も言わず、俺たちは二人のもとに戻った。
「お待たせしました」
「おお、戻られましたか。魔物は大丈夫でしたか?」
「ええ、平和に終わりましたよ。帰りましょうか」
「ですね」
「アイシャ、ブルーダーさんにセクハラされなかった?」
「うん、大丈夫」
「ユウ。帰ったらお前は素振り千回な」
「千⁈」
——口は災いのもと。




