(67)尾を引く悪夢
心に傷を作り、未来に至ってもなお嫌悪感を抱かせる出来事。
トラウマ。
幼いころに階段から落ちたとか、馬に踏まれたとか。
お化けを見たとか、魔物に襲われたとか。
そんなトラウマを、俺もいくつか抱えている。
一番大きなものはもう一人の幼馴染の件だ。
リーフさんに聞いてもらうことで少しは解放された気分だが
それでもあの絶望を拭い去ることは出来ていない。
そんなしぶとい、悪夢のような記憶だ。
ゲルプ砂漠での戦闘から一週間弱。
今日の任務は、アルプトラオムの戦線に参加すること。
この前のような大規模な作戦ではなく、とにかく参加して魔物を掃討する目的だ。
「——と、言うのが今日の任務よ」
現地の基地で軽くミーティング。
今日は、エリナさんは参加せず四人での参戦となっている。
五人での仕事に慣れてきていたころだし、なんだか寂しく感じる。
「それと、ここら辺は接触危惧が多いから一応気を付けること。じゃ、各個遊撃にあたってちょうだい」
「「「了解」」」
その返事と共に、お姉ちゃんとリーフさんが別の方向へと駆け出した。
さて俺も——
「いてっ」
何者かに襟をつかまれ、姿勢が崩れる。
「待って」
「ん、どうした?」
犯人はアイシャだった。
……こういうのって裾でやるんじゃないのか?
「ねえ、ここって……あいつ居るよね、きっと」
「あいつ?」
おそらく、アイシャのトラウマになっているクモ型魔物の事だろう。
「一緒に動きたい……」
「……だな。それがいい」
「ありがと……。ごめん」
「気にしなさんな」
繰り返しになるが、アイシャはクモ型を苦手としている。
これには過去のある事件が関係している。
それがあったから、彼女はいまだにクモ型と戦うことが出来ない。
もっとも、俺にとってもあれは思い出したくもない出来事だが……。




