(64)油断に重なる油断
……おかしい。何かがおかしい。
俺たち魔特班は、今までに何体もの強力な魔物を退けてきた。
ヴァルム地方では、驚異的なスピードを持つ魔物と戦った。
ヴァイス氷山では、周辺の環境を武器に変える厄介な魔物と交戦した。
それでも、今こうして生きている。
うぬぼれたくはないが、一般的には
接触危惧とされる魔物も、個人で討伐することができる。
それらを達成できるのが、俺たち「魔特班」だ。
なのに——
「くっ……!」
「リーフさん‼」
「ちょっと、気を抜かないでよね」
「ああ、悪い……」
「といっても、私もちょっと……」
——苦戦しているのだ。
この、ただ触手を蠢かせているだけの魔物に。
その理由は分からない。
攻撃を仕掛けようにも、カウンターで弾き返そうにも
たいして早くないはずの触手攻撃をよけることで精いっぱいになってしまう。
頭で描いている戦闘のビジョンに、体がまるで
ついていかないといった現象に、五人とも悩まされている。
そのせいか、お姉ちゃんによる回復の頻度はいつにも増して高く
それもまた、彼女の消耗を引き起こしている。
「ユウ」
かなり消耗した様子のアイシャが、オレの横に退避してきた。
「どうした? 俺が言えたことじゃないけど、珍しく消耗してるな」
「うん。なんか、変」
「確かに。ヴァルム地方の魔物の方が、遥かに強かったはずなんだけどな……」
「だね。何か減衰系の能力でも持ってるとか?」
「うーん、どうだろう。」
今までに何度か、能力減衰をかけられたことがある。
その時は、体が重く感じるようになることで、移動や攻撃速度が落ちるといった効果だった。
だが今回は違った。特に重みは感じないし、その他にも、体の不調は全くない。
むしろ好調なつもりで戦いに臨んでいる。
敵の能力である可能性は低く、かつ、身体の不調ではない。
とすると、問題は——
「ねえ、すき」
「えっ、突然何を」
「作ってくれる?」
「……ああ、隙ね。うん、出来るはず」
——やれるはずだ。
信じろ、自分の力を。
これまでの経験を。
そう自分を鼓舞する。
「じゃあ、行くよっ‼」
「おう」
アイシャの合図に合わせて走り出す。
幸いなことに、触手は弾けば一瞬怯む。
一瞬で何ができるんだ、という話だが。
大丈夫だ。
こっちにはアイシャが居る。
信じるべきは己だけじゃない。
十年以上付き合っている相方の力を信頼する。
それもまた強さの一つだ。
俺が触手を弾き、その隙に味方が距離を詰める。
いつもの作戦だが、いつも通りの力が出せない状況下ではむしろ好ましい。
——来る!
冷静に触手の動きを見る。
——上っ!
本体に近付くほど攻撃が激しくなる。
だがこちらの攻撃も、勢いが増している。
「ユウ、アイシャ!後ろは任せろ!」
「安心して進んでください!」
「「了解!」」
そうだ。
仲間はアイシャだけじゃない。
やがて、アイシャがコアのある場所にたどり着いた。
「——とどめ!」
剣を振り下ろす。
剣身が不気味な色の球体を直撃し——
——⁈
「コアが……!」
——震えながら膨張して……
「アイシャ、逃げ……」
——爆発する……っ!




