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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【七話】怠惰と変動。
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(63)まるで鏡のよう

「……とまあ、そんな感じですかね」


馬車を停めて女性陣を待ちながら、リーフさんへの説明を終えた。


「そうだったのか……。悪いな、気軽に聞いちまって」

「いいんです。誰かに話せてよかったです」

「その……なんだ」


リーフさんはまだ何か聞きたそうにしている。


「サラって子は何で?」

「それが……」


それこそが、彼女の死にまつわる最も不可解な点だ。


「わからないんです」

「わからない?」

「はい。迷宮入り、ってやつです」


憲兵がどれだけ捜索しても遺体は見つからず。

しかし、部屋に残った血痕は致死量であった。

騎士になってから見た事件簿にはそう記されていた。


要するに、絶対に亡くなっているが遺体は無い、と。

誰がそんな現実を受け入れられるか。

俺たち幼馴染……ましてや一人娘がそんな目に遭った両親は。


「……そうか。でもよ、アイシャは……あぁ、いや。何でもない」


何かに気づいた様子で言いかけたリーフさんだったが、途中で言葉をやめてしまった。

俺はそれを追求せず、次の言葉を探していた。


そこへ、三人が荷物をもって現れた。無事にマントを買えたようだ。


「お待たせ。何? しんみりしちゃって」

「なんでもない」

「ちょっと話を聞いてもらっただけです」

「告白、ですか?」

「違うわ!」

「違います!」


時折おかしなことを言うエリナさん。

純粋無垢なのか、意図的なのか。

彼女にはそれを判断させない何かがある。


「大丈夫なら行きましょう。もう三十分しかないわ」

「だな」


重い腰を上げて、「予言」の示す座標へ向かう。

俺とリーフさんによる会話の内容を知ってか知らずか、アイシャは何も言わなかった。




 座標付近に到着。周囲は小高い砂丘に囲まれている。


「厄介な場所ですね」

「ええ。ここでの戦闘は避けたいけれど——」


——瞬間。


ヴァイス氷山の時と同じような空間の歪みと、強烈な圧迫感に襲われる。


「来るぞ!」


一度経験した俺たちは、剣を構える。

未経験の二人は少し動揺し、遅れて戦闘態勢をとった。


邪悪な色の気体が形を成し、やがてそれが魔物の形となる。


しかしその姿は……。


「……なんだ、こいつ?」

「これが魔物?」


目の前に現れたそれは、まさに異形というやつで、仮にも生物とは思えなかった。

なんと言えばいいのか……そう、肉塊だ。


「きもちわるい……」


頭や四肢はある。欠損はない。

ただ巨体が地面に仰向けになり

肉塊に見える膨れた腹を天に向けている。


「もしかして、動けないのではないでしょうか?」


エリナさんの言う通り、こいつは移動に向いていないと思われる。

手足の細さに対して体が大きすぎるためだ。


「……攻撃すればいいのかしら?」

「やってみるしかないですね」


相手の出方を伺いながら、じりじりと近寄る。

相手は仰向けでうめくだけ。向こうからは何もしてこない。


「はぁっ!」


前回の戦闘で学んだ、埒が明かなければ

こっちから仕掛けるというシンプルな戦法。

それは時に、状況を打破する最善策にもなりうる。


しかしそれはまた、万能策ではないのだと——


「えっ?」

「なんだ、こいつ……?」


そんな疑問を復唱したくなるリーフさんの気持ちは

痛いほど理解できる。本当に、何なんだこいつは……?


「ダメージはあるみたいですね」


斬っても。


叩いても。


何人で何をしても、この魔物は反撃をしてこない。


「もがくし、痛いといえば痛いんじゃない?」

「妙ですね……。皆さん、少し離れてください」


そういうと、エリナさんは剣に光をまとわせた。

その超兵器を、何度も何度も肉塊にたたきつける。


「はぁ……はぁ……これで、何か……」


息をきらすほどの連撃をお見舞いしたエリナさん。

しかし、それでも魔物は動かなかった。


「怠け者がここまで厄介だとはな」

「ですね。この肉の塊から核を探すのは……気が引けますね」

「ああ……」

「どうします?切り裂きますか?」

「ちょ、やめてよアイシャ……」


アイシャのサイコ発言はさておき、本当に困った。

こんな相手は今までになかった。

こいつが相手では、カウンター重視である俺の能力では太刀打ちできない。


それに、何にも受動的で、能動的な行動を一切しない

魔物の姿を見ていると、なんだか複雑な気持ちになる。


あの怠惰な姿はまるで——


「あった! 核、ここにありますよ」


魔物の頭の方に回り込んでいたアイシャが言う。


「了解。壊しちゃって。もう帰りましょう」

「はーい」


アイシャが剣を振り上げ、一気に振り下ろ——


——瞬間。


これまで動かなかった魔物は、自身の命の危機に反応し、動きを見せた。

全身から出た触手が、ほんの一刹那前までアイシャが立っていた空間を貫く。

間一髪のところをリーフさんの瞬間移動で何とか回避。


「危なかったな」

「助かりました。ありがとうございます」

「ついに動きましたね」

「そうね」

「ですね。相手が攻撃してくるっていうなら、任せてください。ちゃちゃっとカウンターを仕掛けてやりますよ」

「それがいいかもね。頼むわ、ユウ」

「了解」




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