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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【六話】嫉妬と嚆矢。
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(54)予言の魔物

 座標方向を見ると、これまたなんと表現すればいいのやら……。

空間が歪み、その狭間からなにかが溢れてきている、というのだろうか。

黒い霧が溢れ、やがて形をつくり、歪みは消えた。


形は次第に安定していき——


「……魔物だ」

「なんだか、不気味ですね」


基本骨格はヒトのそれだが、歩行は四つ足。

かつては美しい見た目をしていたが……というストーリーを想起させる。


ところどころ肉が膨らみ、そこには無数の顔があるように見える。

手足の爪は伸び、地面に傷をつけながら歩いている。

グロテスクな見た目で、正直に言えば近寄りたくない。

しかし、そんな悠長なことは言ってられなさそうだった。


「こっちに気づいたみてぇだぞ」

「やるしかないみたいですね」

「やりましょう」


俺たちが少し近付くと

そいつは憎しみのような目でこちらを睨みつけた。


そして——


《フェ……フェラライ……コ、コロシ……ダ……》


——やはり。


この前の魔物は、俺たちを見るなり、「ニンゲン」と喋った。

今度の奴が何を言っているのかは分からないが、やはり同じように言葉を発した。


話す魔物が居るとは伝えたものの

実物を初めてみたエリナさんは驚きの表情をしている。



 魔物は、甲高い唸り声をあげて四足歩行で突進してきた。

前回の魔物ほどではないにしろ、かなりのスピードだ。

左右に散ってこれをかわし、三角形で奴を囲んだ。


 様子を見ていると、そいつはリーフさんに狙いを定めた。

爪を食らう直前、瞬間移動で浮かび上がり、そのまま重力に身を任せて剣を振り下ろす。


——なんだ、アレ?


リーフさんの攻撃を、右肩の膨らみに受けた。

その傷から、黒い霧が間欠泉の如く噴き出ている。

数秒でそれは収まったが、俺たちに


「あれにあたるとヤバそうだ」


というプレッシャーを与えるには十分な仕事をした。



 三角形の布陣を守りつつ、背後をとれ次第攻撃を繰り返した。

現状、四か所の膨らみを破壊済みだ。


——隙が出来た……‼


「もらった!」


右後ろ脚の膨らみに斬り込み、霧に当たらないよう即座に回避。

魔物は今までよりも甲高い叫びをあげ、地面に突っ伏した。


「……どうだ?」


リーフさんがフラグになりそうなセリフを吐くのと同時、

魔物は苦しみながら二本足で立ち上がった。


——刹那。


「……っ⁈」


恐ろしいスピードで俺の胴体を突き刺さんと迫ったきた鋭利な爪。

ヴァルム地方での経験が無ければ、見切れなかったかもしれない。


とっさに能力を使った。


——右腕


怯んだ隙に魔物の右腕を斬った。

この前のように回避されることを想定していたが、そうはならなかった。

スピードはあるが、戦闘能力は大したことないように感じた。


——無傷の左腕を振りかざしてきた


冷静にそれを弾くと、脚で踏ん張って、耐え、噛みつこうと牙をむいた。

ギリギリで体をかがめ、剣で腹を捉えた。


しかし致命傷にはならず、俺に背を向け、岩場の方に向かった。


「追うぞ」

「「了解」」



 俺たちがさっきいた岩場だ。


「何をしているんでしょう……」


エリナさんの疑問はもっともだ。

消し忘れた焚火にまたがり……火を浴びている?


「あいつも寒がりか?」

「そんな、まさか……」


火にあたりながらも、こちらへの警戒を弱めることはなかった。

隙を見つけることが出来ず、しばらく見守っていた俺たちは、衝撃を目にする——


「おい、なんか火をまとってないか?」


リーフさんの言う通り、浴びていた火が魔物に移っていく。


「厄介なことになりましたね……」

「お前ずいぶん冷静だな」

「驚きは前回の奴で出し尽くしましたよ」


——とは言ったものの、今回の奴もそこそこヤバそうだ。

要するにこいつは、周辺の環境を体に取り込んで利用できるわけだ。


焚火を消し忘れたのは痛手だ。


相手が火をまとっている以上、近付けない。

お姉ちゃんがいれば、ムリをしても良かったのかもしれないが……。



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