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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【六話】嫉妬と嚆矢。
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(50)憧れの喪失

 しばらく沈黙が続いた。そりゃあそうだ。

不意に出たお姉ちゃんの言葉に驚いたのは、俺たち三人だけじゃない。

言われた本人ですら唖然とするばかり。


やがてエリナさんがその寡黙を打破した。


「――私が?」

「ええ。エリナちゃんが良ければお願いしたいのだけれど……」

「私は……」


エリナさんは困って何かを考え込んでいる様子だった。

やがて、迷いながらも口を開いた。


「大変おこがましいのですが、私の悩みを……聞いていただけませんか?」




 私は、騎士の父、メイドの母の間に産まれました。

「エリナ」と名付けられ、幸せな環境で育てられました。


そんな私が夢見たのは、父のように騎士になることでした。

両親とも私を応援してくれました。


「エリナ。お前はどうして騎士になりたいんだい?」


どうしてと言われても、特に考えたことはありません。

父の背中を見て、私もそうなりたいと思った。


ただ、それだけでした。


「騎士って言うのはな、人々の笑顔を守る仕事なんだ」

「守る?」

「そうだ。悲しい顔をしていたら楽しくないだろ?」

「うん。でも、何から守るの?」

「悪いものからさ」

「悪いもの?」

「そう。世の中には、とっても悪い人が居るんだよ」


父は憲兵をしていました。

悪いことをした人を捕まえる仕事。

そして父が言うように、人々の笑顔を守る仕事です。


「だけどな、エリナ」


父は改まった表情で続けました。


「騎士の仕事には、危険がいっぱいあるんだ」

「危険?」

「そう。悪い人が武器を持っていたら危ないだろう?」

「うん」

「でも、それを覚悟したうえで、笑顔を守る。それが騎士の誇りなんだ」


私はそんな父を誇りに思っていました。


「でも、危ないお仕事は、怖くないの?」

「……大丈夫、怖くないさ。お守りがるからね」

「お守り?」

「ああ」


父は、懐から綺麗な碧玉のネックレスを取り出しました。


「これがお父さんのお守りさ。エリナ、これはお前にあげよう」

「それじゃあお父さんのお守りが」

「いいんだよ。お父さんの一番のお守りはエリナだからな」


なんて、父は言って笑いました。


「ありがとう、お父さん!」


私はその時、父のしたことによって自分が笑顔になっていることに気付き

これが騎士の仕事なんだと幼いながら悟りました。


そして同時に、絶対に騎士になろうと誓いました。

誰かを笑顔にするために。


今、私がそうしてもらったように。



 ですが、私が騎士養成校に入学した翌年、状況は一変しました。

当時寮生活をしていた私のもとに、連絡が届きました。母からでした。


急遽地元に帰り、親戚の方に導かれて、母の居る所へ行きました。


「……お母さん」


膝から崩れ落ち、手と額を地面につけて涙を流す母。

その前には、地面に建てられた十字架。

私も気が狂いそうでした。泣き崩れそうでした。母と同じように。


 私は何もできませんでした。

慰めるどころか、それ以上声をかけることさえ

私には難しいと感じました。




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