表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【五話】勇躍と向後。
42/269

(42)言えなかったことも今であれば

 リビングに降り、クリスに紅茶を振舞った。

また雑談をしながらくつろいでいると、一班のカタリーナさんが降りてきた。

自分の作業が終わったようだ。


「お疲れ様です」

「ああ、クリス。お疲れ様。それは……紅茶かい?」

「はい。魔特班には頻繁に支給されるらしいです」

「そうなんだ」

「よかったら淹れましょうか?」

「いやあ、悪いよ」

「大丈夫ですよ、余るくらいなので」

「そう? じゃあ済まないけど、お言葉に甘えようかな……?」

「コーヒーもありますけど、どうします?」

「うーん……ではコーヒーを頂こうかな」

「了解です」



 数分経つと、残りの人たちがぞろぞろと降りてきた。

お姉ちゃんを見つけた俺は、さっき考案したお願いをしに向かった。

念のため小声で話しかける。


「お姉ちゃん」

「どうしたの?」

「ちょとお願いが」

「なに? 下の世話ならアイシャに」

「違いますよ……」

「ごめんね、早とちりしちゃった」


……とちりすぎにも限度があると思います。


「支給品のコーヒーや紅茶なんですけど、少し一班に分けられないですかね?」

「良いけど、どういう風の吹き回し?」


なんで俺が普段はケチみたいになってるのかは分からないが……。


「さっきクリスから兵舎の話を聞きまして……」

「ああ、そういうことね。私もセリアさんから聞いたの。良い考えね。ご褒美あげちゃうわ」


……この人の「ご褒美♡」より怖い報酬はない。


「じゃあ、すみませんがその方向でお願いします」



 クリスの横に戻り、小声で交渉結果を伝えた。


「良かったな、クリス。さっきの件、交渉成立した」

「おお、マジで⁈ サンキュー‼」


革命が成功したかのように喜ぶクリス。

これから暫くの間コーヒーや紅茶が飲めることに、心が躍っているのだろう。

一方で俺も、王都で良いお茶なんかが買えるんじゃないかと期待している。


いや、それが理由でプレゼントを考えたわけではないが……。



 全員がリビングに揃い、班長同士で何かの話し合いをしていた。

例の四人で一か所に固まり、残り少ない再会の時を有意義に過ごす。


有意義……?


「もうすぐお別れだね」


騎士校以来の再会を心待ちにしていたのは、アイシャとて同じこと。

特に、親友ミラとの再会には胸が高鳴っていたことだろう。


「二度と会えなくなるわけじゃねえし、まあそのうちまた集まれるだろ」


ちょっといいことを言うクリス。


「だな。お前が死ななければ」

「おい、なんで俺限定なんだよ」

「あの店に通っていれば会えるかもね~」

「あの店? お前が興味持つようないかがわしい店なんかあったっけ?」

「え、どこ? 私も見てみたい」

「ご飯食べた店‼ ユウは私のことなんだと思ってんのよ……?」

「「ビッ……ゴフ⁈」」


綺麗に同じセリフをハモる(予定だった)

俺たちの腹に、えぐいスピードのミラの両拳。


いや、今のはそっちから誘ってただろ……‼


「こ、この拳も次に会う時までは無いな。助かった」

「え~、それは無念すぎる。ていうか、くらう前提なのね」

「私が代行しとく」

「え⁈」

「おっ、それ良いね~。頼むよアイシャ」

「やめてくださいお願いします」


——お姉ちゃんたちに動きが。


とっさに会話をやめ、顔を向ける。騎士の条件反射だ。


「はい。とりあえず合同作業はこれまで。お疲れさまでした」


お疲れ様で~すと、各自言い、再び静まった。


「細かいことは大体シュルツさんに伝えました。この屋敷を大切に使ってあげてくださいね。私からは以上です。シュルツさんは何か?」

「私からは特に」

「分かりました。では解散としましょう」



 各自別れの挨拶を交わしている。


お姉ちゃんはシュルツさんやセリアさん。

リーフさんはタイロンさんと交流が深まったようだ。


それを見ていると、カタリーナさんが俺の所に。


「やあ、今日はありがとうね」

「いえ、お役に立てて何よりです」

「コーヒーまで頂いて。本当に助かったよ」

「あ、それなんですけどね。おね……班長に言って、コーヒーと紅茶を一部置いて行く事にしたので、よかったらどうぞ」

「本当かい? ありがとう、嬉しいよ。おね……?」


俺の言葉に、目を輝かせたカタリーナさん。喜んでもらえて嬉しい。

カタリーナさんと別れて馬車前へ。そこには、クリスとミラが居た。


「じゃ、またな」


クリスの言葉に、俺も返事をした。


「ああ、また」


すると、クリスが拳を差し出してきた。その拳に俺の拳を合わせる。

アイシャとミラは手を握り合って別れを惜しんでいた。


「ユウも。またね~」

「おう、またな」

「最後に拳いっとく?」

「いいえ、結構です……」

「ちぇ~」

「またな」

「うん」


アイシャを先に馬車に乗せ、俺は思い出したようにクリスへ。


「そうだ。カタリーナさん、めっちゃいい人だな」

「ああ。あの人は良い人ランキング世界一位だからな」

「なんだよ、それ……」

「お前のとこの班長もいい人だよな」

「あ……うん。そ、そうだな。おね……班長は……」

「いつものその「おね」って何だ?」

「いや、何でもない‼ こっちの話さ! じゃあな!」


不都合な話題を振られ、俺もさっさと馬車へ。


「なんだ、アイツ……」



 馬車が走り出した。俺は急いで窓を開け、二人に視線を向ける。

まだ言えてないことがあるからだ。

今までは言えなかったが、動き出した今なら言える。


——またな、ビ〇チ‼


こら~殴らせろ~‼ と暴れるミラを抑えるクリス。

そんな友の姿を見て、ふと笑みがこぼれた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ