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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【五話】勇躍と向後。
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(39)予知ができれば回避できた爆弾

寝癖を直してリビングへ降りると、リーフさんが居た。


「「おはようございます」」

「ああ、おはよう」


挨拶を交わし、台所へ。

ボケた頭にコーヒーが愛おしい。

ついでに水道で顔も洗おう。


「明るければ普通の台所だな……」

「ユウ、あそこに」

「うそ⁈」

「うそ」


こいつ。


何か仕返しをしてやりたいが、何も思い浮かばず

ただお湯が沸くのを待つばかり。


そう言えば、ここでこうして

コーヒーや紅茶を淹れるのはこれが最後か。


「この台所ともお別れだね」

「……そうだな」


ボロい水道も、妙な音を立てる食器棚も。

思い返してみれば、どれもお世話になった思い出の品——


「次からはもっと綺麗で!」


「ほぼ最新式の設備が待ってるのね!」


——などではたかった。


まあ住んでたのはたった半年ちょっとだし。

思ひ出もへったくれもない。

むしろ昨日の夜に憎しみが生じたまである。


「部屋も綺麗なんだろうな」

「それに、広そう」

「廊下の雨漏りも無いな」

「何より、私は広いお風呂が楽しみかなぁ」


未だ見ぬ屋敷に心を躍らせていると、いつの間にやらお湯が沸いていた。

コーヒーと紅茶を一杯ずつ淹れ、リビングに戻った。

俺たちが台所にいる間に、お姉ちゃんが降りてきていたようだ。


「二人ともおはよう」

「「おはようございます」」

「あら、可愛らしいスカートね」

「はい、去年の誕生日にユウがくれたんです」

「そうなの……。そこそこ短いけど、ユウってばそういうのが」

「違います」


好きじゃないと言えば嘘になるが

この展開はもう見たので即否定でキャンセル。



 本や服など荷物の荷物を箱に詰めた。

寝具は新しいものが支給されるらしいので処分する。

早々に作業が終わってしまった俺は、暇つぶしにアイシャの部屋へ。


「進捗いかがです?」

「ノックくらいしてよねー、非常識な」


誰が言ってんだ、誰が。


「すみませんね」


部屋全体を一瞥。


「服、結構多いね」

「女の子だもーん」

「存じております」

「下着泥棒にでも来たの? 残念、もう詰めちゃったよ」

「そういうわけじゃないけど……」


ふと、棚の上にアレを見つけた。


「この人生ゲームどうしようか」


遊びつくしたおなじみのゲーム。


「うーん。もう飽きたし、こっそりプレゼントにしちゃう?」

「そうするかぁ」

「王都に行ったら新しいの売ってるかな」

「どうだろう」


そういえば王都の中を練り歩いたことは無かった。

屋敷に住めば休日には散策が出来る。

新たな楽しみが出来て期待で心が跳ね回る。



 一階に戻ると、お姉ちゃんの丁寧な話し声が聞こえた。一班が到着したのだろう。

リビングで待っていると、六名の騎士がぞろぞろ入ってきた。


一班は六人編成だ。二班、三班もそのくらい。

四班以降はもっと大人数で構成される。


その六人の中にクリスを発見。

その後ろには見るからに明るそうな女性、ミラがいる。

ジェスチャーのみで挨拶を交わした。


「どうぞ、お好きなところへ」


お姉ちゃんが言い、一班の人らは各々社交辞令を言いながら座った。

誰も椅子には座らなかったので、俺たちがいつもの配置に。

次に、名前だけの簡単な自己紹介が入った。


 一班のメンバーは、班長のシュルツ、副班長のセリア、

カタリーナ、タイロン、クリス、ミラ(敬称略)だ。


俺たちもそれに続いた。


「では改めて。今日の大まかな予定は、まず我々の荷物を荷台に積むわ」

「同時に一班の荷物を運び入れ、この場所に一時保管する」

「それが終わったらお昼よ。で、時間を決めてここへ再集合。何かあれば適宜引継ぎをして、解散よ」

「では、すぐ作業に入ろう」


了解、と返事をして立ち上がる。

休日なんだか仕事なんだか……。

引っ越し屋に転職した気分だ。



 さっき荷物を詰めた箱を荷台に積んだ。

それと、魔特班の支給物資と、各々の装備品も荷台へ。

古い寝具は一班が後で廃棄施設に運んでくれるとのことなので、彼らの荷台へ。


一通り作業を終え、昼食タイム。

用意されている訳ではないから、自由時間に食べに行く、という感じだ。

これは俺にとって好都合だ。クリスとの約束と、アイシャへのツケの支払いが

両方一気に済ませられるからだ。


「お姉ちゃん、俺たちは商店街の方に行こうと思います」

「そう、分かったわ。気を付けていくのよ」

「了解」

「了解、お母さん」


——あ、それ俺がいつか言ってみようと思ってたセリフ!


「ア、アイシャ……」


……ん?


「はい……」

「わ……」


あれ、これヤバそう。


「私……は……」


突然、お姉ちゃんは膝から崩れ落ち、アイシャの両手を掴んだ。


「私はまだ! お母さんなんて歳じゃ! ないのよ!」


魔特班所属、班長、ルナ。二十一歳。


爆弾だったようだ。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん! ごめんなさい!」

「アイシャ……私はね……二十一歳……あなたの三歳しか上じゃないの……」

「はい! 存じ上げております! ごめんなさいお姉ちゃん!」


爆発した爆弾ことお姉ちゃんも面白いが、

思わぬお姉ちゃんの反応に、見たことないくらい慌てふためくアイシャの姿。

これは地味に貴重だ。周囲の気配に敏感なアイシャに奇襲をかけるのは難しいからだ。


「いい? 二十一歳。お姉ちゃん。はい、復唱」

「二十一歳。お姉ちゃん」

「はい、よくできました。じゃ、アイスよろしくね?」

「……はーい」


いつの間にか立ち上がったお姉ちゃん。

しれーっとアイシャに刑を課す。


よかった、言わないで。




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