表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【四話】暗晦と憂虞。
36/269

(36)分かっていても怖いモノ

《アーベル、何度言えば分かるんだ!》

《すみません》


アーベル。それが俺の名。

今、くそったれ上官にどやされてるところさ。


《作戦に寝坊してくるなど不埒千万! そんな態度では本当に死ぬぞ!》

《以後気を付けます》

《そう言って何度目だ貴様!》


うっせえなジジイ……。

作戦は無事終わったんだからいいだろうがよ。


《一週間の謹慎だ。七日間兵舎で大人しくしていろ!》

《申し訳ございませんでした》


くそがっ! と、心の中で毒を吐き、自室に帰った。



 謹慎一週間なんか余裕。そう思っていた俺は

三日目にしてすでにメンタルがやられてきた。


やることが無さ過ぎてイライラしてきた。

そこへ、誰かのノックが聞こえてきた。


《……どうぞ》

《アーベル? 私。ハンナよ》

《何の用だ?》


ハンナは俺と同じ班のメンバー。 やたら俺に絡んできやがる。

最初は鬱陶しく感じたが、最近はそうでもないし、

たまに俺から話しかけたりもするようになった。


だけど、今は違った。


《何の用だ~じゃないよ。また寝坊して謹慎食らったんだって?》

《うるせえな……》

《あんた、戦闘技能はすごいんだから。もっと真面目にやれば出世だって——》

《うるせえって言ってんだよ!》

《……あっそ。じゃあ知らない!》


……うるせえ女だ。

そう思いつつも、イライラをぶつけてしまった罪悪感が心につかえた。




謹慎の七日を終え、今日から戦線に復帰する。

ハンナとはまだ険悪なままだ。


《本日の任務は、掃討戦だ。居住区近くに出現した魔物の群れを殲滅する》


やれやれ、またか。ここ何か月もの間、仕事は掃討戦がほとんどだ。

しかも相手は雑魚ばっかし。だから緊張感が抜けちまったんだろうよ。



 現場に着くと、やっぱり相手は九割がたサル型。

気を引き締めろなんて言われるが、こんなことで

いちいち気張ってたらやってられねえよ。


《お前、ハンナともめたんだって?》


ペアを組んでいる班員が俺にそう訊いた。


《ほっとけよ》


その話題は好かない。

気持ちの整理がつかないからだ。


《別動隊で残念だったな。何があったかは知らんが、とにかく謝っとけよ》

《ちっ、なんで俺が》


ぶり返してきた苛立ちを、ひたすら魔物にぶつけ続けた


粗方殲滅し、集合ポイントへ。

俺たち二人に加え、別動隊の二人が合流した。


《残りはハンナの所だけか》


あいつの名前が出されるたび、少し緊張する。



 十分くらい待ち、やっとハンナともう一人が合流した。


《任務完了だ。これより帰投する。各位、緊急出撃命令が出てもいいよう、準備しておけ》


連絡事項やら何やらと続き、やっと帰投することに


なったのだが。


馬車に乗ろうと、手すりを掴んで何となく振り返った時。


《……っ!》


魔物だ。まだ残っていやがった。

トラ型、接触危惧種だ。


最後尾にいるのはハンナか!


奴はハンナを殺さんと牙をむいている。


《ハンナ! 後ろだ!》

《ま、魔物⁈》

《バカ、おせえよ!》


もう十メートルもない。 剣を抜く時間はない。

俺はとっさにハンナを横へ突き飛ばした。



——ああ、何やってるんだろうな俺は。


そうだ、ハンナは?


《アーベル! アーベル‼》


ふん、元気そうで何よりだ。


 気を引き締めようが緩んでいようが。


死ぬときは死ぬ。


死と隣り合わせの仕事、それが騎士だ。


強くても、弱くても。 良い奴でも、くそ野郎でも。



——だが、死にたいわけじゃねえ。


俺にはまだ、やってないことがある。


周囲が騒がしい。剣を抜く音と怒号が響く。


——バカ、もうおせえよ。


俺が最期に聞いたのは、バキバキと骨が砕ける音。


ああ、まだ言ってないのに。


いてえ、いてえよ……


————怖いな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ