【著者備忘録4】没② なんかユウが小さくなる話。
作りかけたはいいけど、没のため本編に入れなかった話です。
没理由:没①同様、天魔自体が敵という設定を変えたため。加えて、ストーリーのどこに入れてどうやって絡ませるべきか全く考えつかなかったため。
前提:天魔の謎技術によってユウが一時的に子供の状態に。さてどうしよう、という話。アイシャ視点。
「……っていう事がありまして、ご覧の通り、ユウが子供になっちゃいました」
帰りの馬車にて、一連の流れと結果をお姉ちゃんに報告した。
「えっと……ええ。解らないけど分かったわ」
まあ、分からなくて当然だよね。私も分からないもん。
「なんだ。案外、普通のこどもだな」
「先輩かわいい~! お菓子食べますか? ジュースも欲しい? ぜ~んぶあげちゃいますからね!」
もはや誘拐犯じゃん
「こら、勝手に撫でないの」
「え~。だって、かわいいじゃないですか」
うん、分かるよ。確かにかわいいよ。
「ユウ困ってるじゃん。ねえ、ユウ?」
「えっと……」
「ほらね」
「皆さんは、どなたですか?」
「やっぱり困って——え、なんて?」
たった今、衝撃発言があった気がする。
「まさかとは思うけど、身体だけじゃなくて……記憶も戻っちゃったの?」
「どうすんだよ……」
ちょ、ちょ~っと大変なことになったね?
「えっと、君のお名前と歳、教えてくれる?」
「え? ユウ、十歳ですけど……」
「……本当に?」
「……?」
ユウ少年の肩に手を置いて、まっすぐに目を見た。
かわいいって言うのは置いといて。
「な、何ですか⁈」
「う~ん」
嘘をついてるって感じじゃない。
体も記憶も、本当に十歳のユウみたい。
事情を説明すると、理解は出来ないだろうけど、納得はしてくれた。とりあえず、私たち魔特班メンバーの名前だけ知っておいてもらうことに。
「騎士になった君のお姉ちゃん、ルナよ」
「純粋な子供に変な事、吹き込まないでください」
「おま——君と同じ班のリーフだ。なんか、変な感じだな」
「ユウ先輩の彼女、ノエルです‼」
は? という意思を込めて、薄目でノエルを見る。
「……」
「ごめんなさい嘘です。後輩騎士のノエルです」
最初っからそう言いなさいよ。
「じゃ、最後は私ね」
もう一回ユウ少年の肩に手を置いて、瞳をまっすぐ見つめた。
「ユウ。私だよ、分かる?」
ユウもまた、私の目をしっかり見つめてくれた。
「っ!」
一瞬、目を見開いたのが分かった。
うんうん。
やっぱり、名乗る必要なんて——
「ごめんなさい、分からないです」
——ズコーッ
「……私。幼馴染のアイシャだよ」
「え、ア、アイシャ……⁈」
私が名乗った途端、ユウ少年の視線が泳いだ。
「え~なに照れちゃってるの?」
「て、照れてね……ない、です……?」
態度が迷子になってるの面白い。
帰還後、屋敷のリビングで、ユウ少年が注目の的になってた。
「あら~、かわいいわね~」
お姉ちゃんは、まるで自分の子供みたいに頭を撫でるなどしている。
ううん。子供と言うより、これじゃまるで——
「ペットじゃないんですから……」
なんて話してると、迫る足音が聞こえた。
やばい。
「皆様、おかえりなさいませ」
「……やば」
状況を知ったら、一番大変そうな人が来ちゃった。
「あら? そちらのお子様は……?」
まあ、見れば気付くよね。
「ほら、挨拶して」
「分かってるよ……。えっと、ユウと言います」
「えっ⁈ ごごご、ごしゅ、ご主人様⁈」
「え……?」
子供を困らせる、悪い大人ばっかりじゃん。
「申し遅れました。私、ごしゅ——ユウ様専属のメイド、エリナと申します」
「いやユウの専属じゃないでしょ!」
「失礼いたしました。テンションが上がり、少しばかり誇張してしまいました」
少しって言葉の意味を、辞書で一万回くらい調べておいてください。
「よろしくお願いします。エリナお姉さん」
「おおおおねおね、お、お姉さんっ⁈」
「……?」
悪意のない、完全無垢な攻撃が一番怖いよね。
変人たちから散々かわいがられたユウ少年。
そろそろ疲れちゃってるんじゃないかな……と言う事で、部屋で休ませてあげよう。
「もう疲れちゃったでしょ?」
「いや、別に」
「もう寝る時間だもんね?」
「いや、まだ夕方だけど」
「はい、ここがユウの部屋だよ」
「まったく聞いてない……」
自室の扉を開け、入るようにジェスチャーで促す。
「じゃ、また——あれ、なんで入ってくるの?」
「兼、私の部屋」
「……はい?」
きょとん。
「だから、ここがユウの部屋」
「うん」
「兼、私の部屋」
「……なんで?」
「なんでって。ユウが一緒に暮らそうって言ったんだよ?」
「え、マジかよ……。何言ってんだよオレ……?」
よし。
小さいころの記憶に、真っ赤な大嘘を刷り込んでおこう。
「そう言う訳だから」
後ろ手で扉を閉めて——
「お姉ちゃんと遊ぼうね~」
強引にユウ少年を抱っこして、私が下になるように布団に飛び込んだ。
「うわ助けて! 誰だ! お姉ちゃんって誰だ⁈」
「え、私だけど」
「え、アイシャが、お姉ちゃん?」
「そうよ」
「いや、同い年だろ」
「君、いくつだっけ?」
「十歳」
「私ね、十九歳」
「ズルじゃん!」
……ズルではないよ。
「ち、畜生……」
それにしてもユウ少年。抵抗したら放してあげようと思ってたけど、全然そんな感じしない。全く暴れないし、なにこの子。
「かわいいね~ユウ君、かわいい~」
ちょっとだけ抱き寄せてあげると、鼓動の速さから緊張しているのが伝わってきた。
え、やだむり、かわい過ぎる。
「ねえ」
「どうしたの?」
「本当に、アイシャなの?」
ああ、遂に疑われちゃった。
「正真正銘、アイシャだよ。見てほら、こんなに可愛い娘、私しか居ないでしょ?」
「オレの知ってるアイシャと、まるで違うからさ……」
……無視は酷いじゃん。
「……アイシャはね。十三、四歳くらいから女の子になるよ。覚悟しといてね?」
「え、怖っ」
——何がよ。
まあ、いいや。
「ところで、ユウ」
「なに?」
任務帰り。夕食まではまだ時間がある。なら、やることは決まってるよね?
「私、お風呂入りたいんだけど」
「行ってらっしゃい」
「え~、今日は一緒に入ってくれないの?」
「は、入るわけないだろっ⁈」
「なんでよ?」
「な、なんでって……そりゃ……な、なんでもだよ!」
わ、顔真っ赤にしてる! それ以上かわいい事されると、私死んじゃうよ‼
「え~。いつもはユウが一緒に入ろうって言うのにな~」
なんて、また大嘘をしみこませる。
「それは……さすがに嘘でしょ」
ちぇ、カンが良くなってきた。
「いいからいいから。私、肩が痛くて洗うの大変なんだから、助けてよ」
全くどこも痛くないけど。
「え、ケガでもしたの⁈」
「そうそう。だから、一緒に来てくれないと困っちゃうな~」
「うう……」
よし、作戦大成功。
半端な感じですがここまで。
状況に対してのん気すぎるというのも没理由の一つです。
最後に【著者備忘録5】キャラクターまとめ を出していよいよ完結済みに設定します。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございます!




