【著者備忘録3】没① なんかユウが三人になる話。
没にした内容の垂れ流しです。
まず本編からご覧いただければと思います!
没理由:この話を考えていたころは「天魔」という存在自体が黒幕と言う設定だったが、
途中で路線変更したため、お蔵入り。形を変えて現行の本編に入れたかったが、
そもそも、後述の技術が何のためにあるのか一切分からなかった……。
前提:天魔の謎技術によってユウの模造品が二つ爆誕した。
その晩、アイシャが本物のユウを見つけ出す話。
夜。「俺たち」とアイシャは自室でにらみ合っていた。
彼女が、どの俺が本物なのかを見極めるためだ。
天魔め、厄介なことをしてくれたな……。
「本物のユウだよ~って人」
「「「はーい」」」
「……だよね」
アイシャの呼びかけに、全員の俺が挙手をした。
——全員の俺って何だよ。
「う~ん。識別方法……」
どうやって本物を見つけるのか、その方法を探すアイシャ。
このままでは埒が明かない。今しがた思いついた方法を提案してみよう。
「じゃあさ」
「何? ユウ二号」
「二号……?」
——囚人かな?
咳払いをして続ける。
「いつもしてる事があるだろ? 手をつなぐとか……えっと……ほら」
「腕枕、とか?」
「そうそう」
「そこでおどおどするの、本物っぽいね」
「し、失礼な……」
——だって本物ですもん!
「俺が本物ですアピールやめろよ」
右側に居た俺が、苦情を言ってきた。何だお前、偽物の分際で。
「一号、静かにして?」
「囚人かな?」
ツッコミが一字一句まったく同じなの、死ぬほど憎たらしい。
「んで、そのいつもやってる事をやってみれば、つなぎ心地とか、抱かれ心地で判別できないかなぁと」
「う~ん。確かにそれなら一瞬で分かると思うけど」
一瞬はすごすぎるだろ。
「一瞬はすごすぎるだろ」
俺の心とまったく同じことを言う、おそらく三号と命名されるであろう、左の俺。
「でも、それじゃ偽物とも手をつがなきゃいけないし、偽物にも抱かれなきゃいけないから。良い案だけど却下ね」
なるほど。偽物に抱かせてやる身体も、握らせてやる手も無いと。
「何だ、そんな事か」
と、声を上げたのは一号。
「どうしたの、一号?」
「その案を採用して、俺から順にやればいい」
——?
「どういうこと?」
「俺が本物なんだから、俺がちょちょっと抱いちまえば完——」
「「一号っ⁈」」
説明を求められていた一号の言葉が、そこで終わった。
アイシャの短剣が、深々と腹部に突き刺さったからだ。
「ア、アイシャ……? 何を——」
「何って。偽物を見つけたから、排除したんだけど」
「偽……物……? お、俺が?」
人間であれば、腹部から血を流して倒れるはずだ。
だが一号はそうならず、足の方から淡い光の粒子になって消え始めた。
つまるところ、彼は俺の偽物だったのだ。
「本物のユウなら、今の攻撃なんて能力で防げるはずだもんね?」
言われてみればそうだ。
いくら戦闘時でなくて油断していたとしても、アイシャの動きを全く見ることが出来ないわけじゃない。そう簡単に致命傷にはならないはずだ。
「それに」
まだ何か判断要素があるようだ。
「本物のユウに、私をちょちょっと抱くなんて度胸は無いよ」
——!
——反論の余地がねえ!
「さ~て、減った減った」
——おお怖
「おお怖」
なんで本物の俺がビクビクしなきゃいけないんだ……。
さて、残るは俺二号と偽物の三号なのだが。
たった今、三人で人生ゲームが執り行われている。
「う~ん、二人とも浪人しまくってるね……」
人生ゲームで遊ぶと、必ずと言っていいほど、高等教育手前で大幅な足止めをくらう。
俺も三号も、すでに四ターンほど進めないでいる。
「困ったなぁ……」
待ってくれ。
そんな不安定な要素で判断されるところだったのか⁈
「ねえ、二号三号」
「ん?」
「どうした?」
あぐらを正して、ぺたん座りと呼ばれる姿勢になったアイシャ。
何が始まるんだ?
「胸触る?」
「「えっ⁈ やめなさい!」」
とつぜん何を言い出す——
「脚でも、いいよ?」
「「こ、こらっ」」
「この部屋なら、誰も見てないんだから、ね……?」
手をついて前かがみになるアイシャ。ウィンクすんな。
「「い、いけません!」」
「……」
「「……?」」
「ちぇ、ダメか~」
ああ、なるほど。自戒力の試験だったわけか。
偽物め、そこまで完璧に真似しやがって。
「げ、もうこんな時間! お風呂も入らなきゃなのに~」
「一時休戦して、先に済ませた方がいいかもな」
「良いこと言うな三号」
「ほざけ偽物」
「お前、休戦する気無いだろ」
俺と俺でバチバチにらみ合う。そこへ、アイシャが言った。
「はい、喧嘩してないで。お風呂入る順番決めよ?」
いつもなら一緒に入ろうなどと言ってくるが、そうだな。偽物と一緒に入りたくはないだろう。悔しいことに自戒力まで完璧にコピーしていやがる三号は、俺同様なんとか一人で入らせるように動くのだろうがな。
「誰が入るんだ?」
ああ、このパターンだ。クラスで何かの係を決めるなんて状況でよく陥るアレ。
だが今回は風呂の順番だ。別に風呂嫌いってわけじゃないし、誰も行かないなら——
「んじゃ、俺が先に入るわ」
なかなか決まらず、時間が遅くなるくらいなら、先に名乗り出るのが得策だ。
クローゼットを開けて着替えを取り——
「おい俺の服勝手に着ようとするな」
「いや、俺のだから」
「いや俺のだけど」
——自分でも、誰が誰と口論してるのか分からなくなりそうだ。
「まあ、いいじゃん」
——楽観的だな君は
「楽観的だな君は」
「じゃあいい? 二号からお風呂で」
いつの間にやら、「二号」と呼ばれることに適応してしまった自分がいる。
この騒ぎが収まったら、ちゃんと「ユウ」に戻るんだろうな……?
「ああ。先に行ってくるよ」
「ふ~ん。分った。行ってらっしゃい」
「……? おう」
なんだか空気が変だな……なんて思ったが、そりゃそうか。現状で二人、さっきまでは三人も俺が居たんだ。だが今は、とりあえず風呂だ。明日も任務がある。
「んじゃ行ってくる」
アイシャと三号に背を向け、ドアノブに手をかけ——っ‼
「……え?」
ドスッと。
そう形容するにふさわしい衝撃が、俺の腰や下腹部の辺りに走った。
何事かと痛む場所に視線を落とす。
「アイ……シャ……?」
短剣の切先が突き出ていた。
背後から刺されたのだと理解するのに、数秒を要した。
「さようなら、偽物さん」
——偽物?
その言葉は、どう考えても俺に向けられていた。
アイシャに刺された二号が膝から崩れ落ちた。一号の時もそうだったが、その表情は驚きに満ちていて、どうやら本当に自分が「ユウ」であると信じていたようだ。
「終わったな」
「……」
足元から淡く光る粒子になって、次第に消えていく二号。
「作戦に気付いてくれて、ありがとね」
「なに、お安い御用よ。にしても、何の躊躇いも無く刺しに行ったな……」
二号の倒れた方向を見ると、偽物はもう完全に消えていた。
「確信してたからね。本物のユウなら、偽物と私を部屋に残してお風呂に行くはずがないって」
そう。あの状況なら、アイシャが先に風呂に入ればいい。残った俺と二号で順番を決めて、三人が済んだら部屋に再集合という形をとれば良かった。だがアイシャはそうしなかった。
違和感に気付いた俺は、アイシャの作戦だとの結論に至った。すなわち、彼女を置いて行こうとした方が偽物であると確信したうえでの罠であったという訳だ。
「はぁ、変に疲れちゃった」
「無事に終わってよかったな」
「そうだね、三……ユウ」
「今、三号って言おうとしたよな?」
「……」
露骨に視線を逸らすアイシャ。
「じゃ、じゃあ、お風呂行ってくるね」
「おう」
「……一緒に入る?」
「行ってらっしゃい」
「ちぇ~」
ここで「うん入る」なんて言ったら、俺も偽物として処されそうな気がする……。
「ユウ」
「——ちょっ」
正面から抱き着かれた。なんだなんだ?
「……この抱かれ心地。間違いなく本物のユウだね」
「なんだよ、まだ疑って——」
「って言う口実」
「ああ……そうですか」
こんな垂れ流しまでご覧いただき、本当にありがとうございます!
次回、「没② なんかユウが小さくなる話。」を垂れ流します。
おそらく次回で本当に完結になるかと思います!




