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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【最終話】盟約と縁定。
258/269

(258)宣誓のその先へ

 魔王を討てど。「神」を討てど。ついに魔物が滅亡することは無かった。

戦線は多少落ち着いたが、魔物が居なくなったわけじゃない。騎士の仕事は、まだまだ終わりそうにない。


 天魔はと言うと、これから人間との共存を目的として活動するようだ。徐々に彼らの姿を晒し、技術提供によって発展を促す。種族の壁など無い世界を。渦の解けた世界を実現するために。無論その世界には、魔物も含まれる。頭領は新たに研究チームを作り、魔物と意思疎通をする方法の開発に全力を注ぐと言っていた。





 ——それから、五年が経った。




 今日は大切な「任務」があって、再建された森の教会に来ている。建物は綺麗に修復されたが、剥がされた森は簡単には再生しない。未だに、あの時の一撃が爪痕を残している。だが、それはもう過去の事。今の俺はやはり、今を見るので精いっぱいだった。


「わあ……緊張する……。え、何だ……これ? 心臓早くね? え、死ぬのか?」


控室の扉の前を、一人で右往左往している。普段着や騎士の装備とも違う……あまり着慣れず、その上、動きにくい。


「なぁアイシャ……って、居るわけないんだった。え、人間の気って、ここまで動転するものなんだな……」


なんて、激しい緊張から無限に独り言を吐き続ける。


——そんな時。


「入場ですよ」

「はいっ!」


変に裏返った声で返事をし、案内されるがまま進む。


「どうぞ、こちらからです。本当に、おめでとうございます」

「あああありがとうござざいままます」


——なんて?




 重厚な扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。やたら音量の大きい演奏が響く。赤い絨毯が奥まで続いていて、終点に見えるのは祭壇だ。ゆっくりとその明るい部屋に歩み出る。祭壇を目指して歩く通路の左右には長椅子が並んでいて、見知った顔が多数。


「おい、ユウ」


右側から小声で話しかけてきたのは、騎士校で出逢った友人のクリス。視線で返事をすると、彼は続けた。


「手足が同時に出てるぞ」

「……っ!」


右足と右手。左足と左手が同時に出ていた。緊張しすぎだろ。


「うう、先輩ぃ……ユウ先輩ぃ……アタシの先輩がぁ~」


悔しそうにハンカチをかじるノエル。

ミラや魔特班の仲間たち、両親までもがそこにいた。


「それでは、新婦の入場です」


再び演奏が盛り上がり、扉が開く。

見えてきたのは、綺麗なドレスに身を包んだアイシャの姿。

父親と共に歩き、彼女もまた祭壇の前へ。


「……」

「ふっ」


おいなんで笑った?




 その後、賛美歌を歌う時間があった。事前に何度か練習していたが、この緊張だ。無論、全部飛ぶよね。治まることのない緊張に苦しめられている間に、教会の人が朗読を始めた。だが俺の意識は、拍動と目の前のアイシャにのみ持っていかれている。


——綺麗だ


——とても


「……病める時も」


ああ、長かった。この光景を見るのにかかった時間は本当に長かったと感じる。色々な事があった。喜ばしいこともあれば、もちろん、あまりに大きすぎる絶望もあった。それが原因となって、俺たちは一時止まっていた。時は進むのに、それ以外はすべて停止しているような感覚だった。


「……健やかなる時も」


だがもう、俺たちは進んだんだ。そして、ここまで来た。やっと、たどり着くことが出来た。俺一人の力ではない。多くの仲間に支えられてきた。特に彼女——アイシャには、未だに感謝してもしきれないほどの恩を受けただろう。


「……愛を持って互いに支え合う事を」


だから、これから彼女に恩返しをする。していく。俺に何が出来るのだろう。そう考え続けて十数年。やっと、答えを見いだせた。祖先ユーリに言ったのと同じ。俺が隣にいる事で、彼女は笑ってくれる。ならば俺は、生涯に渡ってそれを続けよう。


「誓いますか?」


——数多の誓いを超えた先に待っていた答え。


——俺がアイシャを、幸せにする。


「——誓います」


それが俺の、新たなる宣誓だ。



宣誓のその先へ ——完——


ここまで読んでくださった皆様へ。

本当に、ありがとうございました!!!

無事に完結させることが出来ました。


本編はこれにて完結いたしました。

これからしばらくは、筆者の備忘録も兼ねて


「思いついたけど没にした」

「どう考えても入れる場所が無いシーン」

「いや世界観終わっとんがな」


——を投げっぱなししたいと思います。


もうしばらくお付き合いください。

それでは、また!!!

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