(255)吐古納新
閃光がおさまり、やっとの思いで前を見た。
見えるようになって分かった事が一つ。
意識が朦朧としている。
立っているのがやっと、という域を超えて瀕死に近い。
「どう……なった……?」
「お願い、倒れてて……」
——これで抵抗されたら……
《お、おのれ……よくも、よくも余にこんなっ‼》
「あいつ、まだっ!」
《もう遊びは終わりじゃ! 焼き殺してくれる!》
「「っ!」」
「神」の掌に蒼い炎が浮かぶ。
徐々に大きくなって行き、顔程の大きさになるとそれを振りかざし——
《死ねい!》
——まずい
——もう足に力が入らない
「アイシャ!」
意味があるかは分からないが、アイシャを覆うように、「神」に背を向ける。
「先輩!」
その瞬間の事。必死だった俺の耳に届いたのは、ノエルの声だった。
同時に、炎の攻撃がバリアで防がれていることに気付いた。
「ありがとう、ノエル」
《くっ、邪魔が増えたか》
「珍しく苦戦してるみたいだな」
「お疲れさま、二人とも」
リーフさんにお姉ちゃん。体が急に軽くなった。治療をしてくれたのだろう。
「すみません、助かりました」
「良いのよ。それより、見てごらんなさい」
「「……?」」
言われた通り周りを見渡すと、やけに人数が多いことに気付いた。
なるほど。
「よう、元気か?」
——騎士校で出逢った友人、クリスが言った。
「あんたら……敵の目の前で白昼堂々なんて。さすがにヤバいんじゃない?」
——同じく騎士校で出逢った友人、ミラが続いた。
「ほら、構えろよ」
「行くよ!」
先行する友人の後を追う。
だが——
《寄るな、蝿ども!》
——っ⁈
「神」によって巻き起こる暴風により、四人はいとも簡単に足止めされた。
《動くでないぞ‼》
「「うわっ⁈」」
遵守の力を始めて目の当たりにした二人は、鶴の一声で簡単に封じられてしまった。
全快したためか、俺とアイシャには効果が無い。
このまま——
《寄るな! 寄るな!》
——熱風が襲い掛かる。
遵守を無効化しようと、これにはたまらず一歩下がった。
《カス共から片付けてやろう!》
「クリス!」
「ミラ!」
——ああ、やめろ
——やめてくれ!
サラを亡くして悲しんで。騎士になってここまで来た。
ああ運命は、その過程で手に入れたものまで奪おうというのか。
消える。
失う。
ここでまた大切な——
願わくば……いや違う‼
「「させるか!」」
《何⁉》
二人を傷付けようとする「神」に対して、俺とアイシャは攻撃を行った。なんの迷いも無く。
《……なるほど。もう、躊躇いは無くなったか》
本音を吐き、躊躇いを捨てた俺は、己の力がさらに増していくのを感じた。
やれる。勝てる。今なら!
「そこだ!」
遵守が埋め込まれた胸元。
そこを狙えば——
《……ゴメンね、ユウ》
「サ、サラ……?」
《ふん、甘い!》
「くそ⁈」
——まだ……まだ俺はっ!
攻撃を反射する間もなく、風と剣撃をこの身に受けてしまった。
「ユウ!」
何とか着地に成功。心配そうなアイシャが駆け寄ってきた。
彼女に続いてクリスとミラもさがった。
「おい、無事か?」
「ああ、なんとかな」
「二人は無事?」
「無事だけど、あんなの勝てる気しないや……。やっぱすごいね、二人は」
——すごい、か。
「……俺は、この期に及んでまだ——」
——?
俺の右肩に、誰かの手が置かれた。
「……ケニー?」
「任務を抜け出して手伝いに来てやったんだ。感謝しろよ? お前のせいで、また謹慎処分間違いなしだからな」
《まだ増えるか。本当に厄介だな、主らは!》
俺とアイシャ、そしてケニーが「神」に向かって走り出した。
しかし、これではさっきと同じ構図であって——
《余に跪くが良い!》
「——こいつは‼」
遵守により、ケニーが動きを止められてしまった。
「ケニー!」
「振り向くな! さっさとぶっ倒してきやがれ!」
「っ!」
《残念じゃったな》
「なに⁈」
「神」は裏空間を使い、一気にケニーのもとへ。
《去ね!》
「ぐおおっ⁈」
ケニーの胸に、「神」の剣が深々と刺さった。
しかし——
「ふん、それがそうした!」
《な、何じゃと!》
刺したくらいで今のケニーを倒せるなら訳ない。
基本的に他者を下に見ている「神」には有効な不意打ちになっただろう。
「「そこ!」」
——攻撃を躊躇うな
——このチャンスを作ったのは俺じゃない
——囮になってくれたから
——仲間のお膳立てがあったからだ
——決して無駄には出来ない!
《くうっ⁈》
驚く敵の背中に、俺とアイシャが一か所ずつ傷をつけた。
《お、おのれ!》
「アイシャ」
「うん。もう、迷いは無いよ。過去は全部、振りきった!」
「同じく。ならもう、俺たちで‼」
左手で、アイシャの右手を握る。
すると、また暖かい光に包まれた。
俺たちはもう、縛られない。
心の呪縛から解き放たれた——故に!
《や、やめ——ぐああ⁈》
光は「神」に浸透し、虹のような輝きが次から次へとあふれ出した。
もはや光の爆発と言えるほどの奔流。
周りの仲間、そして力を使った俺たちでさえも、数メートル吹き飛ばされた。




