(249)神に抗う者たち
神の手には、武器が持たれている。ほんの少しの反りがあり、身の片側に刃がある剣だ。黄金に輝く丸の様で四角のようでもある形状のガードがあり、持ち手には濃い紫色の太紐が罰印を繰り返し描くように巻かれている。
——来る!
その武器を俺に叩き込まんと、猛突進してきた。
——今!
《ほう、受け流すか》
冷静に剣で受け止め、力を流した。本当は反射すべきだったが……。
《力に身体が付いて来んな。完全に馴染むには時間が要るか……にしても主。なぜ力を余の方に反射しなかった? もしや——》
「——黙れっ!」
剣を横に振って攻撃を試みるも、軽いバックステップで回避された。
《ふん、踏み込みが浅いぞ。フェラライと戦った貴様は、そんなものではないはずじゃ。ふふふっ。どうやら、この身体を傷付けることに、躊躇いがあるようじゃな?》
「っ!」
《その甘さ、その感情が、主らニンゲンの弱点だ!》
——しまっ‼
俺の懐に急接近した「神」が、胴に左掌をかざしてきて……
「ぐわっ⁈」
先ほどのような暴風をほぼゼロ距離で受けた。
「ユウ‼」
数メートル……いや、もっとか? とにかく長距離吹き飛ばされた俺は、風の威力を思い知った。鎧がいとも簡単に凹み、あばらまでダメージが直に来たからだ。
「なんてこった……こりゃ、相当だ……」
痛みに加え、たった一撃で血の味が口内に広がった。
《余の攻撃を一回でも耐えた事は誉めてやろう。大した反射神経じゃな》
「そいつも、お見通しか……!」
直撃を避けるため、出来るだけ相手の攻撃を大きくずらし、なんとか斜めまで持って行けたのだが、それでもこのダメージだ。直撃なら死んでいたかもしれない。
「よそ見してると!」
倒れた俺を面白そうに見下ろす「神」に、アイシャが攻撃を試みた。
《動くでない》
「……っ⁈」
アイシャの動きが止まった。
予想はしていたが、こいつは遵守の力をも使うことができるようだ。
《そう慌てることは無い。すぐに主とも遊んでやるぞよ》
そんなことを言いながら、アイシャの顎に手をやる「神」。
《……っ‼》
「捕まえたぞ……っ‼ さあ、その身体を返しやがれ‼」
《き、貴様! ニンゲンの身で余に触れるなど‼》
「神」の注意が逸れたからか、アイシャが解放された。
「遵守が無ければ!」
慈悲が遵守を埋め込んだのは、確か胸のあたりだった。それを奪ってしまえば、大きく弱体化するはずだ。「神」の力がサラの身体になじむ前に、なんとかしなければならない。
《触れるな! 触れるでない!》
俺が背後から押さえている間に、アイシャが交差した掛衿に手をかけて胸元を出す。遵守自体が露出しているわけではないが、強烈な光が放たれているのが分かる。
「これを壊しちゃえば!」
《……なんてな。そう簡単に行くと思ったかえ?》
「……っ‼」
「アイシャ、後ろだ!」
「くうっ⁉」
いつの間にか俺の拘束を解き、アイシャの背後にまわっていた「神」。おそらく裏空間を経由したのだろう。味方に天魔が居ないことが悔やまれる。
例の風でアイシャに対して攻撃が行われた。
幸い、風下には俺がいたため、反射を使って安全に受け止めることができた。
「ありがと」
「おう」
《嗚呼、つまらん。もっとこう、余を楽しませることは出来ぬのか?》
「参ったな、こりゃあ……」
「……全然、元気そうだね」
「神」は、その手に持った剣を陽にかざして輝きを観察している。
《そうじゃ。面白い事を思いついたぞ》
「「……?」」
《ニンゲンよ。主らを試してやろう》
「試すだって?」
《そうじゃ。一つ、余と遊戯をしようではないか》




