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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【二十話】受容と拒絶。
237/269

(237)秘匿

 あまり人目につかぬよう、

北西居住区の少し手前辺りで降り、そこから歩いて向かう。


道中には公園がある。


俺が稽古をつけてもらっていた公園だ。

モチベーション維持のため、あえて嫌いなタイプの騎士が集まる公園でやっていた。

ああはなるまいと、己を鼓舞するのに丁度よかったからだ。


「稽古を見られていたなら、この公園に潜んでいた可能性があります」

《なるほどな。見てみようか》


公園で例の空間へ入る。


「あれは……?」


エリナさんが指さした方を見ると、椅子と、それを囲むように本棚が並んでいる。


《ここは本が多いな》

「本?」

《ああ。ニンゲンの文化を勉強していたようだ》

「あれ、この絵本って……」


ノエルが手に取ったのは、一冊の絵本。

その表紙には、見覚えがあった。


「サルの御伽話、だな」

「懐かしいですね。昔、母から読み聞かせてもらった記憶があります」

「有名なお話よね」

《その本だけ、やけにボロボロだな。お気に入りか?》


絵本がノエルの手から頭領へ渡された。

最初のページから流し見ている。


《これは……なるほど。このように語り継がれているのか》


……語り継ぐ?


「何をだ?」

《これは、我々三種族の歴史を描いている。かなり抽象的に描かれているが、間違いないだろう。ふむ、死に至る不治の病か。面白い表現だな》


人間と天魔と魔物。

それぞれを代表して一匹ずつのサルとして……。


なるほどな。


《魅力的なエサ、か。確かにアレは、どの種にとっても魅力的だった》

「アレって?」


不思議そうにアイシャが問う。


《おや、慈悲からは何も聞いていないか? ここで言う魅力的なエサというのは遵守の力の事だな》

「遵守の力……?」


初めて聞く言葉だ。


《そうか。てっきり既知だと思っていたのだが》


「慈悲は確か……」



《でもある時、何らかのモノを奪い合って関係が悪くなった……って、僕らの文献には書かれていたよ》



「って言ってた」

《そうか……嘘偽りは一切無いが、なぜ知らないふうを装っているんだ? あいつ、私が秘匿しておけと言った内容はよくばらすわりに……》

「あの予言もその内って事かしら?」


右腕たちの出現を事前に教えてくれた紙。


大きな被害を出さずに奴らを倒せたのは事実だが、

あんな重要な内容は間違いなく秘匿事項だっただろう。


《もちろんだ。結果として救われたから許したものの……》

「そもそもなんだが、あんたらは、未来の事が分かるのか?」

《かつてはな》

「かつて?」

《ああ。未来を知る能力を持つ者が居たのだ。特別待遇をするなどしていたんだが、ある時、自ら命を絶った。置き書きには、未来を見て絶望したと書かれていた。何を見たのかは定かではない》


何かしら、絶望的な未来が待っているというのだろうか……。

それとも、すでに起きたことが原因なのか。それも分からないという訳だ。


「なるほどな」

《それでだ。君らは慈悲から、遵守について何も聞いていないのだな?》

「それどころか、慈悲本人すらあんまり知らなそうだったけど」

《いや、テンマとしての教育はしっかり行った。絶対に知っているはずだ》


じゃあなぜ——もしかして。


「知られたくないから、隠そうとしたとか?」

《遵守以外の情報を与えておき、一番触れてほしくない情報から遠ざけた……。憶測にすぎないが、可能性はありそうだな》

「どうして三種族は、遵守の力を奪い合ったの? 魅力的って話だけど」


再びアイシャが頭領に訊く。俺としても気になる話だ。


《言うなれば、想いを実現できる力だからだ。例えば私が今、遵守をこの手に持っていたとしよう。その状態で君たちに向かって「伏せろ」と命じれば、君たちは伏せをする。本質的には願望の実現が可能という物なのだが、かつての我々は相手を従わせることに使ってしまった。遵守という名前も、そこから来ているのだろうな》


つまり、好き放題できる力ってわけだ。


「それを巡って天魔と魔物が争い、人間が魔物から騙し取った。その一連の出来事が、今日の戦いの発端……ってわけですね」


慈悲の言葉と御伽話から察するに、そんなところだろう。


《そう言う事だ。さて、調査を続けようか》


本棚から一冊ずつ取り出し、隠された何かが無いか丁寧に探していく。





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