(23)先の見えない調査任務
モルケライさんを含めて五人で外へ。
彼の馬車は違うところに停めてあるらしく、少し待つことに。
「なんだか先が見えねえな、今回は」
「ええ。困ったわね」
「今までに調査任務って無かったんですか?」
「無かったわね。調査の結果、討伐任務になってまわって来る事は多々あったけれど」
「調査自体をやらされるのは初めてだな」
いつも通りの日常に、ふと影が落ちた。
なんだか落ち着かない気分だ。
まるで、黒い霧のあの晩のようだ。
ヴァルム地方の集落に向かって馬車で一時間半くらい走った。
その間、心の中の負の気分を紛らわそうとアイシャにさっきのリベンジを申し込んだ。
再び惨敗して別の負の感情が芽生えそうになったが、そこは何とか堪える。
馬車を下りると、集落と呼ぶにはあまりにも栄えた街があった。
人々が盛んに行き来する往来に、兵舎や俺たちの屋敷なんかより遥かに綺麗な建物。
幸福そうに見えるが、住民の顔はどこか陰っているように見えた。
まあ当然か。原因不明の厄災に遭えばそうもなろう。
「ここだ」
モルケライさんに案内された建物からは、凄くいい匂いがしている。
「食事は済んでいるか?」
そういえば昼はまだだった。
「いえ、実は何も……」
「そうか。ならここで済ませると良い。お代は私が出しておくから、好きに食べたまえよ」
何回か社交辞令を交え、お言葉に甘えることに。腹が減っては戦は出来ぬ。
中に入ると、匂いがさらに強烈に食欲をそそる。
見た目から察するに、バイキング方式だ。
好きに食えと言われた俺たちは、日ごろ大して美味しいものを
食べていない鬱憤を晴らすかのように頂いた。
ヴァルム地方で振舞われる食べ物と言えば、やはり牛や羊。
戦闘か?
と錯覚するほどのスピードで羊肉を自分の皿に盛り付ける女の子が居た。
アイシャっていうんですけど。だけどまあ、確かに絶品だった。
程よく食事を済ませ、調査に向かう。
美味しくてたらふく食べそうになったが、そこは自制。
動けなくなっちゃたまんないからな。
いつだって食べるのは「程よく」が一番いい。
店を出て、いったんモルケライさんと別れた。
集落の入口で立ち止まり、お姉ちゃんが口を開いた。
「うーん、今日はどうしましょう」
普段、不特定多数の魔物を広い場所で
捜索して撃破する場合、作戦は決まって一つだ。
「今回ばっかりは遊撃ってわけにはいかないわよね」
遊撃。
予め目標を定めず、状況に合わせた作戦行動。すなわち臨機応変。
全員散開し、発見した魔物を倒す。そういうやり方がこの班では主流だ。
しかし今回は勝手が違う。
「ああ。何が起きてるのかも、何が居るのかも分かんねえしな」
「そうよね。じゃあ各位、一緒に探索ね」
「「「了解」」」
……と、周辺の捜査を開始したはいいものの。
「あくびが出るくらい何もないわね」
進捗はゼロ。
その間目に映ったのは、広大な土地の景色と草を食べる牛たちのみ。
「本当に何か起きてるんですかね、これ」
「私もう……寝そう……」
「でも調査班が行方不明になってるわけだし、何かあるはずなのよね」
「行方不明な……。こんなことを言うのはアレだが、どっかで死んでるんじゃねえか?」
「う~ん、そう考えるのが妥当よね」
死んでる、か。確かにそう考えるのが正しいかもしれない。
だが調査班の騎士は優秀な人物ばかり。
例え接触危惧種に遭遇したとしても、一人たりとも逃げ帰れない事なんかあるだろうか?




