(229)お友達
数年後。とある計画の実行を決心した僕は
英雄さんの家系をあたり、剣術に携わった者に接触を図った。
この家系は、頭領たちも見張っている。
それなら近くに居ても、テンマから怪しまれることは無いだろうと踏んだからだ。
ただ、もし実験で犠牲者を出し、家系が途絶えてしまったら困る。
一応、実験に使うのは対象に子供が出来てからにしておいた。
《そろそろ結果を出したいな……》
実験はあまり上手くいかず、力は付くけど、僕に協力してはくれなかった。
このままではまずいと考え、計画に協力させるのではなく、
「お友達」になるという方向へシフトすることに。
《という訳でさ、僕とお友達になってくれないかい?》
「友達?」
《そうさ》
「そもそも、君は何者なんだ? その姿……本当に人間か?」
ああ、まあそうなるよね。
《落ち着いて聞いてほしい。僕は、ニンゲンとは違う。だからと言ってマモノでもないよ》
やっぱり、そう簡単には信用してもらえないみたいだ。
「友達になろうというのであれば、まずは目的を訊こうか」
《目的か……そうだな……》
真の目的を話すわけにはいかない。
僕の計画は、到底他人に受け入れられるものじゃないからね。
《僕の目的は、マオウを討伐することだよ》
「魔王?」
《うん》
「魔物が未だに存在するとでも言いたいのか?」
五百年簡姿を見せていないんだ。
ニンゲンの時間感覚で言えば、信じられないのも無理はないか。
《存在すると言っていいのかは分からないけど、封印されてるんだ》
「封印?」
《そうそう。英雄さんの事は知っているかい?》
「祖先ユーリのことか?」
《ご名答》
「ユーリの活躍によって魔物が滅びたのだと、大昔に父親から聞いたが」
《ちょっと違うんだなあ。滅ぼしたんじゃなくて、彼は自分の体に魔物を封じたんだよ》
「……?」
《ただ一つ、問題があってね。そろそろ封印が限界を迎えつつあるんだ》
三回目の経過観察の際、ユーリを覆う包帯が少し浸食されているのを発見した。
頭領の判断でもうしばらく様子を見ることにした。
その間に、テンマがマモノを抑えておく準備を進めるみたいだ。
いきなりマモノの全勢力と衝突すれば、ニンゲンは簡単に滅びてしまうだろうからね。
「限界を超えたら、どうなるのだ?」
《あくまで推論だけど、とてつもないバケモノが誕生すると言われているよ》
このバケモノを僕の計画に利用できたら良かったんだけど、頭領の命令がある。
従わなければ別のテンマが派遣され、どちらにせよ封印は解かれることになるだろう。
残念だけど、この機会は諦めるほかない。
それに、これはあくまで推論だからね。
《ニンゲンなんて、簡単に滅亡するだろうね。なんなら僕たちも危うい》
「ならば、一体どうするのだ?」
《封印を解いて、あえて魔物を放出する。どんなバケモノが産まれるか分からないリスクより、魔物が居た方がマシ、というのが今のところの見解だよ》
「なるほどな……」
協力してほしいなら、こちらの手の内を晒せ。
自分で考案した理論だけど、結構うまくいったみたいだ。
数年かけて、おじいさんと友達になることに成功した。




