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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【三話】貪食と喜悦。
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(22)原因不明の厄災

「王城前に到着だ」


馬車を王城の所定の場所に止め、降車した。

入城手形をもって城の入口へ。


「魔特班班長、ルナであります」


門番の騎士に声をかけた。

毎度毎度、お姉ちゃんの切り替えの早さには脱帽だ。


「入城手形を」


今朝受け取った封筒の中身を渡した。

騎士はその紙を一通り流し見る。


「確認できました」


手形に判を押し、お姉ちゃんに返却。


「これを窓口に出してください」

「了解」


王城。来るのは三回目だろうか。

騎士校の入学式、卒業兼魔特班配属式、そして今回。


独特の雰囲気があり、自然と背筋が伸びる。

ストロングホールドのはずれにある教会のそれとはまた一味違った圧を感じる。


扉を押すと、低い唸り声を上げながら開いた。


言われた窓口は正面にある。


「これを」


窓口の女性騎士に、先ほどの手形を渡す。


「確認します」


何やら紙をぺらぺらとめくっている。

予約の確認みたいなものだろう。


「確認完了しました。入って右の応接間でお待ちください」


案内された部屋は、想像を遥かに超えて凄かった。


何というか……そう、凄かった。


騎士であれば必ず二回はここの式典場に来る。

その豪華絢爛さに二度驚いた経験がある。


だが今回は応接間。


いくら王城とは言え、応接間までは……とか思っていた俺は今

助走をつけてぶん殴られたような気持ちだ。


壁に飾られている絵画も、装飾用の鎧も。


家具一つさえ感動を呼ぶ。

だけどこの部屋、落ち着かないな……。


「落ち着かない部屋」


こらアイシャ、どうして君はいつも声に出すの。


「こちらにお掛けになってお待ちください」


案内してくれた人に軽く「どうも」と言い、言われた通り椅子に座る。


これが椅子?


座り心地の境地を見た気がする。

あれ、俺は今まで何に座ってたんだろう。切り株?


 とまあ感想はここまでにして。指定時間は十一時。あと二十分くらいある。

他の班員を見ると、お姉ちゃんは落ち着かない様子でキョロキョロしている。

一方でリーフさんは、お姉ちゃんとは対照的だ。


アイシャは……指で攻撃して和が五になったら負けのアレを一人でやっている。


「……」


それ楽しいか? と思いながら勝敗を見届ける。


先行の右が勝った。


そりゃそうだ。

俺が見ていたことに気付いたアイシャは勝負を挑んできた。


——負けんぞ。



……一勝四敗


惨敗を悔しんでいると、入口の戸が開いた。

四人とも反射的に立ち上がって頭を下げる。

その先にいる恰幅のいい人が現在の王だ。


「良いぞ、皆座りたまえ」


頭を上げると、王の横にもう一人いるのが見えた。

王ほどではないにしろ、豪華な衣服を身に着けている。


机を挟んで対面にその二人が座った。


「理由も告げずに呼びつけてすまない」


王の口から申し訳程度の謝罪。これにお姉ちゃんが返答。


「いえ」

「早速だが、今日来てもらったのはこの者から極秘依頼があるからなのだ」


王と一緒に入ってきた男性を指して言った。

極秘任務か。伝令の人も内容を知らされていないのかもしれないな。


「極秘、ですか?」

「うむ。詳細は君から説明したまえ」

「はい」


王が促すと、男性が語り始めた。


「私はヴァルム地方の土地を持つモルケライという者だ。当地域の村人と共に食肉生産をしている」


ああ、聞いたことのある名前だ。

そのヴァルム地方でかなり味の良い牛や羊なんかを育てているっていう富豪だな。

アイシャの好きな羊肉の店で出されているのもヴァルム産だ。


「だが最近……ここ一週間くらいか。突如として家畜の数が減って来ているんだ。何が起きているかはさっぱり分からない。このままでは肉の供給に影響が出かねない。そこで、君たちに原因を探ってほしい」

「家畜の数が……。なるほど。しかし」


お姉ちゃんの言いたいことは俺にも分かる。

そう言った事案の調査は普通、憲兵が行う。

俺たちに周ってくるような任務ではないはずだ。


しかも極秘でなんて……。


「ああ、本来君たちに頼むようなことじゃないことは承知してる。私も一度憲兵に依頼し、調査班を出してもらったのだ」

「それでも原因が分からなかった、と?」

「それだけじゃない」


モルケライさんの表情が強張ったよう見える。何が起きたんだろう。


「その調査班に所属していた騎士が皆、行方が知れないのだ」


そうか、それで俺たちまでまわってきたのか。


「それは……」

「分からない。誰かが殺したのか、強大な魔物がいたのか」

「家畜数が減っている事件との関連も不明、ですよね」

「ああ」

「家畜たちの遺体などは?」

「無い。まるで最初から居なかったかのように、きれいさっぱりだ」

「そうですか」


他に情報は、と訊いたが、既に話したこと以外は何もかも不明だという。

普通に考えれば山賊か何かが家畜を奪っているのかもしれない。

しかし、調査班の騎士までもが行方不明となると話は変わってくる。


「分かりました。我々はこれよりヴァルム地方へ向かい、調査を行います」

「恩に着る。一度集落に立ち寄って物資を受け取ってくれ。何が起きるか分からないからな。そこまでは私の馬車が先導する」

「了解しました」


四人が立ち上がると、王が口を開いた。


「本件は人類の食料問題に直結する。心してかかるのだ。では、諸君の健闘を祈る」


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