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【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【十七話】束縛と呪詛。
201/269

(201)幸せなフィクション

図書館。時計塔。池。


思い出に残る場所を回り、さすがに疲労を感じ始めた頃。


「ねえ、二人とも」

「うん?」

「どうした?」

「もう一ヶ所行きたいんだけど、いいかな?」


ぼちぼち暗くなり始めようかという時間だ。

サラにしては、珍しい展開だった。


「今から行くの?」

「ごめんね。長居はしないから」

「ちなみに、何処に?」

「……教会」



 彼女の提案に乗ることにした。

三人で馬車に乗り、教会前で降車。


相変わらずの荘厳な雰囲気と、オルガンの音がまた懐かしい。


重い木戸を越えて中へ。

いつも通り、祈っている人や、装飾を見て心を落ち着かせている人たちが居る。


「たしか、女神様の像があったよね」

「あっちの奥だっけ?」


アイシャが指さした方向、祭壇の右奥の方に小部屋がある。

教会が建つより前からあったとかいう像だな。


その部屋に入ると、サラは我先にと像の前へ。

なかなか大きな像で、土台だけでもサラの身長を超えている。


「ユウ、アイシャ」

「「……ん?」」


彼女の呼びかけは、今までのどれとも雰囲気が違った。

そのためか、一瞬心臓がヒヤッとする感覚に襲われた。


「もう、諦めちゃったの?」

「……え?」


振り返ったサラの表情は、俺たちを叱るかの様なものだった。


「いいの? このまま終わっても」

「サラ? な、何を言って——」

「夢で終わって! 二人は本当に、それでいいの?」


——夢


そう言われて思い出した。

俺たちは、魔王との決戦の真っ最中だったはずだ。


「……」

「いいんじゃない、かな……?」


気の抜けた様子で、アイシャが言った。


……俺も、彼女の言葉に同意だ。


「俺たちはさ、ずっと君に会いたかった。そのために努力してきたし、辛いことにも耐えてきた」

「ほら、叶ったじゃん? 私たちは今、確かにサラと話してる。今日もいっぱい遊んだし。楽しかったよ、本当に」

「二人とも……」


夢でもいい。


嘘でもいい。


俺が今感じているこの気持ちは

……もう一度彼女と会えた喜びは、本物なのだから。


いいじゃないか、これで。


また明日、一緒に学校に行こう。

くだらない話で笑い合って、また明日と挨拶をして。


その繰り返しだ。


戦いなんかとは無縁で、同じような日々を三人で繰り返す。


あの頃の日常を取り戻す。


それが望みなのだから。


「だから、もう……」

「このまま三人で——」

「……バカ」


——っ⁈


パチン、と。


俺たち二人は、さほど強くない力——しかし、重い気持ちの乗った手で頬を打たれた。


「「……サラ?」」

「バカバカ! 二人のバカ!」


彼女の顔は、あの時のように寂しげであった。


気が付くと、姿は十九歳に戻り、鎧を身に着けていた。

膝をついた状態で、視線の高さはサラと合っている。


「十年間で、いろいろあったでしょ? 新しい仲間だって、出来たでしょ?」

「っ!」


お姉ちゃん。

リーフさん。

エリナさん。

ノエル。

クリス。

ミラ。

騎士校で出逢った友人たち。


ああ、そうか。


俺はずっと、亡くしたことばかり見ていた。

遺された悲しみばかり背負っていた。


でも俺は失った以上に、新たに手に入れていた。


皆、かけがえのない大切な仲間だ。

その事が、全く見えていなかったんだ。


「アイシャだって、ほら。願いを実現するために、頑張ったでしょ? それはまだ成し遂げてないじゃない」

「……うん。うん、うん。サラ、私……」

「だから二人とも、こんなところで終わっちゃダメ」


そう言いながら、サラは俺の右手とアイシャの左手をとった。

一度強く握ってから、とった二つの手同士を握らせる。


その瞬間、体の内側から暖かいものがあふれ出してきた。


アイシャも同じようだ。


「これは……?」

「ユウのでもない。アイシャのでもない。二人の……二人で一つの能力だよ」

「二人で……」

「一つ……?」

「そうそう。ふふっ、ユウとアイシャらしいね」


立ち上がると、足の方まで暖かさに包まれた。


「ほら、行ってらっしゃい。私も、見ててあげるから」

「……行こう、アイシャ」

「うん」




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