(191)犠牲の覚悟
エリナさんの攻撃により、フリューゲルを中心に砂埃がたった。
バリア越しでも、かなりの轟音と衝撃だった。
一気に消耗した彼女だが、お姉ちゃんの治療を受け、問題なさそうだ。
俺とアイシャは一度距離を取り、様子をうかがっている。
「さて……」
少しはダメージを食らってくれただろうか?
「くっ!」
砂煙の向こう側から、アイシャの声と金属音が聞こえた。
《消え失せろ!》
「アイシャ!」
奴は生きていて、煙の中からアイシャに攻撃を仕掛けた。
そうと察した俺は、急いで加勢。
見ると、敵の身体は焼けていて、焦げたり、煙が立ったりしている。
《遅い!》
「勝負はスピードだけじゃないよ」
そう言い、体勢を低くするアイシャ。
——そこだ!
フリューゲルの硬さは、ガフォークとか言う奴に比べれば
大したことは無く、俺の力でも容易に首の切断が可能だった。
「まだ!」
強力な魔物は首を切ったくらいでは死なない。
それを学習済みの俺とアイシャは、更に追撃。
腕は地に落ち、翼は半分以上欠損。
「ご主人様、奥様! トドメはお任せください!」
きっと、こいつにもコアがある。
それを壊せば勝ちなのは理解しているが、どこにあるのかは不明だ。
加えて、この強さ。
コアを発見するまで持久戦を続ければ、間違いなく殺されるだろう。
ならば、体を全て吹き飛ばしてしまおう、と。
アイシャと共にお姉ちゃんたちの方へ退避。
ノエルが出してくれたバリアの内側へ。
「これで……」
残っている熱を全て絞り出し、フリューゲルにぶつける。
「終わりです!」
熱は、エリナさんの指先で光弾に姿を変える。
——が
《ええい、こんなものっ‼》
首よりも翼を優先して再生させ、飛んで逃げようをする。
まずい、奴に大ダメージを与えられるのはエリナさんの熱攻撃だけ。
そんな彼女も、もう溜めた熱は残っていないだろう。
これを避けられたら——
《っ‼ テ、テンマ⁈》
今にも飛び立たんとするフリューゲルを、
あの空間から出てきた元帥が羽交い締めにした。
彼は自分の脚を剣で地面に固定しており、
飛ぼうとする力にあらがっている。
《これでは、貴様も無事では済まんぞ⁈》
《構うものか。貴様を葬れるのであれば本望だ! ニンゲン、構わずやれ!》
「し、しかし!」
このまま発射すれば、元帥は死ぬ。
それ故に、エリナさんは躊躇した。
《いいからやれ! もう機会はないぞ‼》
「くっ!」
一瞬、苦しそうな表情をしたエリナさんは、
しかし、決心した様子で光弾を放った。
《お、おのれ‼》
《そうだ、それで——》
——先ほどと同等か、それ以上の衝撃。
地面は抉れ、辺りは再度、砂煙に包まれた。




