(178)貴重な能力者
僕が第一部隊に入ってから数年がたった頃。
この頃は先輩二人、僕とリーズ、後輩一人の五人でチームだったんだ。
当時はまだ能力者は少なくて、持っているのはリーズだけだった。
いや、一応、僕も持っていたのか……。
まあそれは良いとして、とにかく、能力を使えたのは彼女だけだった。
「今日の作戦を説明するぞ」
隊長が言った。
「目的だが、ストロングホールド間近まで迫る魔物の進行を、抑えることだ」
この頃は、僕のいた時代において最も、魔物の勢いがすごかった時期なんだ。
少し押し返したからと油断していると、すぐに砦付近まで迫ってきた。
「第二、第三部隊は砦の壁上から、大きな魔物を大砲で撃破する。我々第一部隊は、大砲で倒しきれなかったチビや、強力な奴を叩く」
作戦と呼ぶには、あまりにも乱雑な行動計画だ。
それに、一つ、問題があった。
「隊長」
「どうした、ユニア」
後輩の騎士、ユニアが挙手をした。
彼はとてもまじめな子で、隊長たちや僕らも感心していた。
えっと、魔王城の時に一緒になった彼だね。
「要するに、味方が大砲を撃っている中を突き進んでいく、という訳ですか?」
「そうなるな」
「それは少し……何と言いますか、危険ではないでしょうか?」
僕もそう思っていた。砲弾や爆風に当るかも、という恐怖は拭えない。
「そうだな。恐怖心があるというのは大問題だ」
「では……」
「落ち着け。そこのカバーも考えてある。リーズ、頼めるか?」
「え、は、はい……」
リーズが持っていたのは、近くの人間の戦意を高めるという能力だった。
能力自体が貴重な時代で、支援型の能力を
持っていたリーズは、作戦の要になることが多かった。
特に、今回のような恐怖心が問題になる場合、
彼女の力で戦意を高めて突破する、というような
荒治療と言える方法を採用することが多々あった。
「他に質問はあるか?」
リーズの顔を見ると、少し元気がなさそうだった。僕はその原因が分かっていた。
彼女は、自分の能力が好きじゃなかったんだ。できれば使いたくないとさえ思っていた。
その理由は単純で、戦意を高める事は、対象者を危険に晒すこととイコールだからね。
心優しい性格の彼女には、酷な能力だったと思う。
花火の爆音が響いた。作戦開始の合図だ。
それと共にリーズが能力を発動する。
第一部隊全員を、黄色の魔法陣が包み込んだ。
「第一部隊、行くぞ!」
『おう!』
そこに躊躇いは無く、五人とも大砲の雨の中を突き進んでいく。
恐怖心どころか、それを心配していたことすら忘れて。
「ユーリ、そっちに一匹行ったぞ!」
「任せてください!」
猛スピードで迫りくるオオカミ。
鋭い牙を輝かせ、僕を殺そうとする。
「はあああっ!」
自分で言うのもなんだけど、僕は基本、大人しい方だと思う。
そんな僕でさえ、リーズの能力下では今のように雄叫びを上げたりする。
人の性格を変えるほど、強力だという事だね。
「進め!」
『うおおお!』
そのおかげで、僕たち第一部隊は快進撃を続けることができた。
それはこの任務に限った話じゃない。毎回同じだ。
この勢いというのは、もはや騎士団からもあてにされるほどのものだった。
——だけど一つ、重大な問題があった




