(167)ありがたい負傷
真っ白な部屋で、例のごとく報告会が行われている。
「頭領。ニンゲンと接触する準備が整った」
「そうか。よくやった外交。元帥はどうか」
「こちらは面白くない状況だ。魔王討伐部隊は壊滅。生存者は無しだ」
「全滅したというのか?」
「左様」
「この件に関しては、完全に参謀である私の判断ミスだ」
後悔の感情を交えながらも、冷静に事実を報告していく。
「だが、良い知らせもある」
「ほう?」
先ほどの知らせが最悪であったが故、
頭領は、あまり期待をしていなさそうな声で返事をした。
「ガフォークが死んだ」
「……なんだと?」
「ニンゲンが殺した」
「そうか」
「ニンゲンの中でも、マトクハンと呼ばれる六名は非常に強力で、ほかのキシとは別物と考えた方がいいと、潜入者から連絡があった」
「マトクハンか。フェラライやツォルンを下したのも彼らなのだろうな」
悪いニュースを忘れたかのような様子で、
良いニュースに興味を示した頭領。
「では、マオウの動きを警戒しつつ、ニンゲンとの接触に取りかかることとする」
「了解した」
会議に参加していた老婆・老爺たちは、各々のタイミングで
席を立ち、嫌なほど真っ白な部屋を後にした。
「さて。私は、奴の監視もしておかねばな」
——魔特班屋敷、リビング
「ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」
任務から帰ったメンバー、特にお姉ちゃんに対して謝罪をした。
「迷いは晴れたかしら?」
「はい。おかげさまで、なんとか」
「そう」
俺の目を見たお姉ちゃんが、一瞬、口角を上げた。
さっきのクリスもそうだった。
自分ではよく分からないが、どうやら目が変わったようだ。
「ところで、ご主人様」
「はい?」
「頬がアザになっていますが、何かあったのですか?」
「あら、ホントだわ。治してあげましょうか?」
右手で頬を触ってみると、かすかに痛む。
だがこれは……。
「治療はなしでいいです。これは……ありがたい負傷なので」
「ありがたい負傷? まあ、ユウがいいって言いうならいいけれど」
友人の拳の感覚が、まだ少し残っている気がする。
まさか、殴られることに感謝する日が来ようとはな……。




