(149)命の恩人の願いを
リビングに、三人の騎士。ここで風呂の順番待ちをしている。
「「ありがとうございました‼」」
「ちょっ、や、やめてくださいよ、二人とも~」
頭を下げる俺とアイシャに戸惑うノエル。
いや、感謝だ。
本当に。
「いえ、ノエルさんがいなければ、我々は死んでいました」
「アイシャの言う通りです」
あの時。
ノエルが居て、彼女の能力が覚醒しなければ、三人まとめて火だるまだった。
「も、もう……。頭を上げてくださいよ~」
困らせると、それはそれで申し訳ないので、言われた通りに。
「アタシだって、あそこで能力が目覚めるなんて、思ってなかったですし。だから……」
「「?」」
「ユウ先輩と一晩でいいですよ?」
ケーキの時と同じ悪い笑顔で言う。
……まーた景品にされてる。
「……」
「アイシャ?」
「先輩?」
「三人で、なら……」
「えっ⁈」
……えっ⁈
「……いいんですか⁈」
自分で言っておいて、そんなに驚くか。
いや、そりゃあ驚くか。
「きょ、今日だけね……。助けられたのは、本当だから」
「やったぁ! まさかオーケー貰えるなんて!」
「えっ、あの、俺の意思は……」
「……断る気?」
「ユウ先輩は……アタシと寝るの、嫌……ですか?」
その、うるうるしながら見上げてくるの、卑怯だぞ。
……なんてことがあって、今、左右が温かい。
もしも願いが叶うなら。
神様が存在するなら。
どうか僕を助けてくれないでしょうか。
眠れません。
「せんぱ~い、もう寝ちゃいました?」
「……いいや、起きてるよ」
「よかった。ドキドキしちゃって、眠れないんです」
「落ち着けよ。別に、何もないんだから」
「え~、何もないんですか?」
「……何かしてみろ? 二人とも抹殺だぞ」
「抹殺なんてしないよ。お仕置きだけだよ」
「アイシャも起きてたんかい」
それぞれの眠れない理由を抱えながら、小声で雑談が進んでいく。
「先輩たちは、どうして一緒に寝るようになったんですか?」
「ああ、それは」
「ユウが夜這いしてきたから」
「嘘おっしゃい」
ノエルが素直な子だってことを、忘れちゃいけない。
「アイシャが、俺が寝てる間に忍び込んできた。そこからだな」
「へ~。ユウ先輩からは、何もしないんですか?」
「それは……」
「ユウはね、二人の時はぎゅーって抱きしめてくれるよ」
「え! ずるいですよ! アタシにもしてください!」
確たる自信をもって否定できないの、しんどいな。
これが因果応報ってやつですか?
「ノエルから抱き着いちゃえば?」
こら、なんてこと言うんだ。
「はい! それじゃあ失礼して——」
「腕ね‼」
「腕だって」
「……はーい」
腕ならいいってわけじゃない。
ああ、眠れないどころか、動くことも出来なくなった。
「ねえ、ユウ先輩」
「ん?」
「アタシ、成長しましたよね?」
「ん? まあ、そうだな。立派な騎士に——」
「そうじゃなくって」
……ん?
「身体ですよ、か・ら・だ」
……なんか、アイシャから変なところばっかり吸収してないか?
「……」
初めて会った時、少し痩せているなぁ、という印象はあった。
そのころに比べれば、確かに健康的な身体になったというのは、まぎれもない事実だ。
「たしかにな」
「ユウ。今、どこの話をしたの?」
「全体的に」
「胸ですか? 脚ですか?」
「全体的に」
「どこが好きですか?」
「全た……」
——危なかった。また罠にかかるところだった。
「私の方があるもんね、ユウ」
その話題、まだ引っ張りますか。
そうだな、様々な意味、邪念を取り払い、
一つの事実として客観的に答えるなら、「はい」だ。
「……まあ」
「え~、見た目じゃ分からないですよ? ここはひとつ、触り比べ——」
「しません」
「ちぇ~」
まずい。
これ以上擦られると命に係わる。
「……おやすみ。二人も寝なさい。明日は任務だぞ」
「うん。おやすみ、ユウ」
「おやすみなさい、先輩」
なんて言いつつ、俺自身が寝られるか不安だ。
明日は任務がある。寝不足では困るんだがな……。
ああ。
両側から押し当ててきやがって。
俺を何だと思ってるんだ、この二人は。
生まれ来る煩悩を叩き殺しながら、ゆっくりと瞼を閉じた。




