(145)膠着状態
コアを破壊したリーフさんは、一度下がった。
「やったわね」
「ああ」
「ユウ先輩、アイシャ先輩! お怪我無いですか⁈」
「ああ、俺は大丈夫」
「私も、大丈夫だよ」
「ノエルも……元気そうだな」
「はい! ……でもアタシ、何もできませんでした」
「気にすることは無いさ」
「そうよ。ノエルは、かわいい笑顔で私たちを癒してくれたよ」
「えへへ、良かったです」
いつものように笑っている……ふうに見えた。
《はっはっは。まるで勝ったような雰囲気だな?》
「なに⁈」
……そんなセリフと共に、魔物が立ち上がった。
「そ、そんな! コアは破壊したはずよね?」
「ああ。手ごたえはあったし、音も聞いたはずだ」
《殺してやるぞ!》
「クソがっ!」
リーフさんが再び瞬間移動で距離を詰め——
《二度は食わぬ!》
魔物が左腕で払うような動きをする。
「なに⁈ ぐあっ!」
ちょうどその位置から、リーフさんが弾き飛ばされた。
「リーフ!」
「リーフさん!」
震えた。あいつは、リーフさんの瞬間移動を見切ったのか⁈
確かに、理論上は可能だ。
なにせ、彼の能力はあくまで「移動」。
空間転位をしているわけではない。
道のりは存在する。
幸い、リーフさんが飛ばされたのは
お姉ちゃんのいる方向。すぐに治療ができる。
《ほう、治癒能力か。これは厄介だな》
——どの口が言ってやがるんだ。
斬っては再生。反撃されては治癒。
そんな均衡状態がしばらく続いた。
「はぁ……はぁ……」
さすがに息切れが起こり始める。
《うむ。これなら、運よくツォルン様を破っても、不思議ではないな》
「へっ、そりゃあどうも」
《だが、これまでだ。見よ。皆、疲れが出ている。もう勝ち目はないぞ?》
疲れているから勝てない。そんなことは無い。
今まで散々、疲労困憊のなか戦って勝ってきた。
「……?」
見よと言われたので、仲間の方を見ていると、
リーフさんとエリナさんがアイコンタクトで合図し合っていた。
「おい。誰がここまでだって?」
《なんだ、まだ戦う元気があるのか》
「なぁに、まだまだこれからだ!」
《ほう》
リーフさんが走って魔物の左側へ。
そして——
《バカめ。それはもう見切った!》
——見切られている瞬間移動。
だが今度は、弾き飛ばされることは無かった。
《っ!》
見切られていることを見切っていたリーフさんは、魔物の左腕を掴んだ。
「今だ!」
「はああっ!」
エリナさんが突っ込んだ。
《ふん、お前の力などで!》
剣は光っていない。
魔物の言う通り、力勝負ではエリナさんに軍配は上がらない。
予想通り、彼女が押され気味の鍔迫り合いになった。
しかし、エリナさんは笑っていた。
「ふふっ、かかりましたね!」
《……?》
「その剣、壊させていただきます!」
そうか。剣身を支えている左手。
それさえあれば熱を込められる。
エリナさんの剣が光を帯びると、魔物の無気味な剣を容易く破壊した。
《おのれ、まだそんなエネルギーが残っていたとはな!》
「私に熱を供給したのは……貴方ですよっ‼」
《ぐっ⁈》
光剣で胸を斬られ、怯む。
反撃しようにも、剣は壊されている。
余裕のなさそうな魔物。
よし、今のうちに背後にまわっておこう。
《今の策は、なかなか良かった。だがっ!》
リーフさんが押さえている左腕。
それを槌のような形に変異させ——
「な、何だと⁈」
「くうっ⁈」
——リーフさんごと、エリナさんを右方向へと吹っ飛ばした。
そっちへ歩みだす。
——今、二人は無防備だ。




