表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】宣誓のその先へ  作者: ねこかもめ
【十話】憤怒と運命。
102/269

(102)何度も何度も失って

……。


「……ん?」


痛みが無かった。


……これは?


目を開けると、俺と魔物の間に人影があった。

黒いフード。白い仮面。魔物の剣がその胸を貫通していた。


「あ……あんた……一体何を……?」


仮面が落ち、フード男の素顔が月明りに照らされる。


「じい……ちゃん……」

「ユウ……何を……している……。早く……トドメを!」


フード男——もとい、祖父の剣を受け取り、

脚を引きながら魔物の背後に回る。


「——終わりだ」


首の断面に剣を振り下ろす。

もう聞き慣れた、コアの割れる音。


《オノレ……‼ オノレェ……‼》


魔物の身体が淡い光と共に灰になり、消えた。



 魔物が消えるのと同時。祖父の身体が地面に崩れ落ちた。


「じいちゃん!」

「よく、やったな……ユウ」

「いいんだ、そんな事! 魔物なんていい! どうしてこんな!」

「人類が……生き残るためなんだ。このままでは、人間は敗北する……」

「敗北するって……? 人類はこんなに優勢なのに?」

「ユウ、お前は……お前たちは、希望なんだ」

「お、俺はそんなんじゃ……」


祖父の話を聞いていると、ほかの班員たちが合流した。


魔物は死んだ。


能力が使えない状態を脱し、お姉ちゃんの能力が使えるようになった。


「ユウ。あなたも」


お姉ちゃんが俺の肩に手を置き、緑色の光に包まれる。体の痛みや気怠さが癒えた。


「ありがとうございます。……あの、この……俺のじいちゃんも治せませんか?」


皆、俺が祖父と呼んだ人物の格好を見れば、状況は理解できよう。

特にアイシャは、顔を知っているからなおさらだ。


「ええ」

「お願いします」


お姉ちゃんが祖父の胸に手を当て、能力を使う。

しかし、状態は一向に良くならない。


「……私の肉体はほとんど魔物と同じ。君の力は……人間にのみ効果があるようだ」


祖父は周囲を見て、アイシャに向かって言った。


「あの日はすまなかった……。彼を亡くすことになるとは……思ってもみなかった」

「謝らないでください。あれは私に力が無かったから……です」

「二人の成長を……さぞ喜んでいるだろう……」


やがてまた俺の方に向き直り、つづけた。


「ユウ……。墓のことは……覚えているか?」

「うん」

「そうか……。では、これを……受け取れ……。節目の日は……近い……」


そう言うと、懐から「鍵」を取り出し、俺の手へ。


「わかったよ。墓に行けばいいんでしょ? それは分かったから、じいちゃん!」

「ユウ。最後にもう一つ、伝えたいことが……ある」

「最後なんて……言わないでよ!」

「いいから……よく聞きなさい……。お前がアイシャちゃんと出逢い……そのアイシャちゃんが霊視能力を持ったことは……もはや「運命」としか言いようがない……。その奇跡を……大切に……しなさ…………」


握った祖父の手から力が抜け、地面に落ちた。


……やがて、淡い光に包まれる。


「じいちゃん? ……じいちゃん!」


脚の方から次第に霧散し始める。


「そんな……‼ なんで……なんで、こんな……っ‼」


——悲しみの雫は、祖父の身体を通り抜けて地面を濡らした。


「じいちゃん!」


——いつになったら。


「……俺からも、言いたいことがあるんだ」

「……」


——どれだけ力を付けたら。


「あり、がとう……」


——俺は、大切な人をこの手で守れるようになるんだ。


「ふふっ」


——そう、己を責めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ