(100)限界間際の削り合い
消耗しつつも、なんとか魔物への攻撃を続ける。
今のところ右腕、両脚、兜の破壊に成功している。
相手の肘にダメージを与えた甲斐があり、攻撃力が非常に弱っている。
「し……しぶといわね……‼」
「ちょっと……きつい……かも……」
お姉ちゃんとアイシャの消耗が特に激しい。
二人とも動きが鈍ってきている。
まずいな。
「エリナさん、二人がバテ気味です。俺たちで何とか!」
「そうですね。なるべく我々が引きつけましょう」
魔物は、歯をむき出しにして俺たちを睨んでいる。
それを無視して、エリナさんと左右から挟み撃ち。
魔物が盾を持っている方に回り込んだ。
しかし盾の面積が大きく、やはり懐に潜り込まなければ破壊は困難を極める。
だがここで、あえて盾に向かって剣を振り上げ——
「これで……!」
——攻撃を防ごうと、大盾を構える。
——剣は、エリナさんの猛攻のおかげで俺に向けている場合ではない。
——絶好のチャンスだ‼
「どうだ‼」
——右足で地面を蹴る。
——魔物の背後をとった。
——頭の上で構えた剣を左から回し。
——魔物の首を捉えた。
《……‼》
「はあ……はあ……どうだ、ざまぁ見ろ」
魔物の頭が宙を舞い、数秒後、地面に落ちる。
《コロ……ス‼》
それでも魔物は生きていた。
やはり、コアを破壊しなければならないようだ。
「……⁈」
魔物が一瞬体をひねったかと思うと、そのまま回転攻撃に転じた。
「ぐあぁ!」
「くぅ!」
防御はした。
しかし、散々こいつの攻撃に耐えてきた剣が限界を迎え、砕けた。
俺の鎧に魔物の剣が直撃し、胸部に亀裂が入った。
体への直撃こそしなかったものの、
衝撃がすさまじく肋骨へのダメージが大きい。
そして、勢いそのまま後方へ吹っ飛ぶ。
エリナさんも似たような状況に見える。
目に映った星空がゆがみ始める。
「ユウ! エリナちゃん!」
「ユウ! ユウ! しっかりしてよ、ユウ!」
「アイ……シャ……‼」
彼女の声を聞き、必死に意識を繋ぎとめた。
こっちまで走ってきた彼女が、心配そうな視線を向ける。
「呼んでくれてありがとう、助かったよ」
「よかった……‼」
「エリナさんは……」
彼女が飛ばされた方を見ると、お姉ちゃんが介抱していた。
胸を押さえている。ダメージが大きいらしい。
「魔物も、結構消耗してるみたい」
地面に膝をつき、肩を上下させている。
「……首を斬ったんだから、死んでくれると助かったんだけどな」
「確かに」
「けどまあ、無意味ではなさそうだな」
「あっ!」
首の断面を見ると、コアが露出していた。
「コア、出てるね」
「ああ。けど剣、やられちゃったな」
「ご主人様……これをっ!」
セリフと同時に、エリナさんの剣が地面を滑ってこちらへ。
「エリナさん」
「ダメージが大きく、今の私では、お役に立てそうにありません……ので。お使いください」
「……すみません、借ります」
その剣を拾い上げ、構える。
「アイシャ、やれるか?」
「……分かんない。けど、今出せる力は、全部出しきるよ」
「よし。じゃあ……」
——深呼吸をひとつ。
「行くぞ!」
「うん!」
二人同時に駆け出した。
それに対して、魔物も重い腰を上げる。
挟み撃ちを狙うと、先ほどのように回転攻撃の餌食になりかねない。
その反省を活かし、今度は二人で正面から連続攻撃を浴びせる。
だが——
「っ!」
「アイシャ!」
足がもつれたようだ。
やはり、もう普段通りの動きは出来なさそうだ。
「ごめん……。大丈夫!」
アイシャに手を差し伸べて立ち上がるのを補助。
大きな隙だが、魔物は追撃をしてこない。
もう一押しってところだろう。




