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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第9章 新生するアイドル
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ソロモンの配下悪魔

 職員さんからは、余裕の色が消え失せている。そもそも、何で私がそんな事を知っているのか不思議そうな顔をしているん。

 すると、職員の肩に何か小さなものが現れる。


「ちっ、俺様に気づくなんてな」


「えっ? ゴブリン?」


 見た目、そのまんまゴブリンでした。いや、ゴブリンに悪魔の羽根が生えている様な感じかな。


「だ、誰がゴブリンだぁ!!」


「全身タイツの悪魔よりマシか」


 あっ、あからさまに怒りに震えているよこの悪魔。


「貴様ぁ。この上級悪魔であり、アンドラス様の配下悪魔である、この俺を侮辱しやがって!」


 何だか、キーキーうるさいですね。職員さん耳元でうるさく無いのかな? あっ、うるさいみたい。職員さん、耳塞いでいるよ。


「落ち着け。お前の力があれば、何とでもなるんだろう」


「おっ? お、おぉ……。と、当然だ!」


 明らかに、ゴブリン悪魔がどぎまぎしている。絶対、何とかならいんじゃないの?


「ふ~ん、そっか」


 でも、やっぱり下級悪魔よりは上だから、ちょっとくらい警戒しておこうかな。

 そして、私は堕天使の力で銀色の銃を作り出し、手に持つと。ゆっくりと、ゴブリン悪魔に標準を定める。


「なっ?! 貴様、銃刀法違反だぞ! よし、警察を!」


「大丈夫、ただ悪魔を滅するだけの銃だから。人への殺傷力は、一切無いよ」


 銃を見せただけで、明らかにテンパってますねこの職員。でも、しょうが無いかもね。日本程、銃に敏感な国は無いからね。


「それよりも、あなた。何か、契約したら何か能力でも手に入るの?」


 私は、銃を突きつけたまま悪魔に向かって話しかける。契約しているなら、何か使えるはず。それを確認しないと危ないからね。


「当たり前だ! そうでなければ人間と契約する意味など、無いだろう」


 それもそうだよね。面倒くさい事になったなぁ。何とか、追い払えればいいんだけれど。

 すると、職員さんがいきなりトランプを出してきてシャッフルしてくる。成る程。私のダイスみたいに、引いたカードに書かれた絵柄が具現化したり、言葉が実行されたりするわけだ。

 私が、警戒しながらそのトランプを見ていると、職員がシャッフルし終わったトランプを私の前に広げる。


「さっ、1枚選べ」


 な、何これ。私が引くの? 成る程、そうやって私に引いたカードの効果を与えると言う訳か。でも、しょうがないここは乗ってあげるか。

 そして、私はゆっくりとカードを引いた。すると、それははダイヤのエースだった。


「ダイヤのエースか。よし、君の制服の胸ポケットの中を見てみろ」


「えっ?」


 ま、まさか。もうすでに、敵の罠に。くっ、やっぱり油断するんじゃなかつまた。

 私は、ドキドキしながらゆっくりと胸ポケットに手を掛ける。すると、中に入っている。恐る恐るそれを出して見ると。


 何と、私が引いたダイヤのエースが、私の胸ポケットから出てきた。


「わっ!! すごい!」


「どうだ。お前が選ぶカードは最初から分かっていたのだ!」


「って、ただの手品じゃん!!」


 上級悪魔が格好つけて言ったけど、ショボいよね? 緊張して損しちゃいました。私のドキドキを返せ!

 そのまま私は銃の引き金を引き、上級悪魔に向けて退魔弾を撃ち出す。すると、その退魔弾が一瞬にして別の物に姿を変える。そう、手品では毎度お馴染みの白いハトさんに。


「えっ?! 嘘!」


「ははは! どうだ、手品をなめるなよ」


 上級悪魔がふんぞり返って威張りちらしているけど、そのせいで落ちそうになって、職員の肩にしがみついていたのは情けなかったかな。


「さて、大人しく携帯を渡せ。その動画を削除させてもらう」


 そう言って、職員はジリジリと私に近づいてくる。参ったな。飛び道具は効かないなんて。


「それに、私がたったこれだけの人数で来ると思いますか?」


 ま、まさか。ソロモンの悪魔の契約者も連れて来ているの?

 そうだとしたら、ちょっとマズいかな。子供達が危険な目に合う可能性が出て来る。


「ん? それって、裏口でうろちょろしていたこいつらの事か?」


 そう言って、脇田さんが何人かの人を紐で縛った状態で、ズルズルと引きずりながら後ろの廊下から出て来た。

 そう言えば脇田さんの姿を見ないなと思ったら、勘づいて私より先に

動いていたなんて。恐るべしですね、この人。しかも、1人で何人も倒しちゃってるよ。


「なっ! き、貴様! これは立派な暴力だぞ!」


「おいおい、正当防衛だろうがこれは。こいつら、こんな物をちらつかせていたんだぞ」


 そして、脇田さんが手に持っていた物を床に放り投げる。すると、硬い鉄の様な物が床を叩く。

 よく見るとそれは、小さなナイフであった。だけど、それは刃渡り15センチ以上はあり、明らかに銃刀法違反であった。


「これは、どっちが犯罪を犯しているんだろうな? ん?」


「なっ、う、ぐ」


 わぁ、職員の顔が更に青ざめていく。汚職が脱税であり、それがバレて捕まった時の顔って、こんな状態なんだろうね。

 とにかく、これ以上は職員が何かしてくることはないと思い、私は銃を下ろした。


「ありがとう、脇田さん。おかげで助かったよ」


「ふん。別にお前の為に、やったんじゃ無い」


 うん? それは分かってるけどね。何でわざわざ言うのかな?


「分かってるって。あれ? もしかしてほんとは私を助ける為に?」


「なっ! バカ、違ぇよ! 施設の為に決まってる!」


 あからさまに顔を赤くして慌てられてもねぇ。とりあえず、脇田さんのおかげで助かったよ。そして、私は再度職員に顔を向ける。


「さて、これからどうするかは分かってるよね? この動画を、動画投稿サイトに載せられたく無ければ?」


「は、はい。この事を報告し、施設の取り壊しは中止させる様に言います」


「クソが。人間は体裁を気にしやがるから、やりにくい。だが、覚えてろよ。これで済むと……ばっ?!」


 せっかく職員が丁寧に対応しているのに、上級悪魔さんがそんな捨て台詞を吐いたらダメだよ。

 今のは完全に上級悪魔が油断していたので、私は隙を見て上級悪魔の額に、退魔弾を撃ち込んだ。


「し、しまった! ちくしょぉぉおおお!」


 そう叫びながら上級悪魔は、黒い煙となって地面に吸い込まれる様にして消えていった。

 これで、悪魔祓い完了ってね。何だか、私エクソシストみたいだね。


「ひっ、ひい! そ、そんな。悪魔まで祓うなんて! うわわ!」


 そう言って、職員は転がる様にしながら慌ててこの場を去って行く。もちろん、他の職員も、縛られた職員を担いでその後を追って行く。

 あまりにも、お決まりの敵の撤退シーンだったので、思わず私は苦笑いをする。だって、ソロモンの悪魔を倒した訳じゃ無いしね。そして、市長がその契約者であれば、恐らく短時間でまたやって来るだろうね。配下の悪魔か。もしくは、自分自身がね。


「は、橋田さん。その、いったい何が起こったのかな……?」


 御手洗さんが、摩訶不思議な物を見たような顔で私に、今起きた事を聞いてくる。そりゃ、普通の人から見たら今の展開についていけずに、フリーズするだろうね。多分、子供達も……ってあれ? 皆、目をキラキラと輝かせて私を見ている。


「すげぇ!! ヒーローだ! ヒーロー!」

「お姉ちゃん、カッコイイ!」

「なっ? なっ? 今の怪人か? 悪い奴を懲らしめたんだよね?」


 子供達は口々にそう言いながら、私の元に集まってくる。しまった。子供達からしたら、目の前で特撮のヒーロー番組の出来事が起こった様なもの、夢見る子供達からしたら不思議に思う以前に、夢みていた事が夢じゃなかったんだって思ったんだろうね。


「あわわ、ちょっと皆。落ち着いて!」


 もみくちゃにされたら、立っていられないからちょっと落ち着いてほしいかな。後、私そんなに格好いいことしてないよ? 脇田さんの方が格好良かったんじゃないかな?

 すると、私の後ろからまた聞き慣れた声が聞こえてくる。


「いやぁ、良い具合に施設の子に受け入れられてるね~」


「いや、私なんて全然格好良くなか……って、毎回いきなり現れないでくれる?! ミカエル!!」


「ぎゃふん!!」


 後ろ向いたら、グルグル眼鏡のミカエルが満面の笑みで立っているんだもん。つい、殴っちゃっいました。


「あ~れ~! いつもより多めに回っておりま~す!!」


「うるさい!!」


 私が殴った後、クルクルと回りながらそんな事を言ってるから、遊んでるよね? これ。

 とりあえずもう一発殴っておきましょう。

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